歴史修正主義
出典: Jinkawiki
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定義
「修正主義」というと日本では「歴史修正主義」という言葉がさかんに使われているが、ほとんどがネガティブな意味であり、批判の対象に付けられるべき名前となっている。本来は歴史学の立場で用いられた言葉で、必ずしも悪い意味ではなかった。しかし、「ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺)などでっち上げだ」「ナチ・ガス室はなかった」などと主張するホロコースト否定論者たちが、みずからを歴史修正主義者と名乗って活動しているため、現在の意味が主流になった。1990年代後半に現れた「日本軍〈慰安婦〉問題は国内外の半日勢力の陰謀」「南京大虐殺はなかった」と叫ぶ勢力が「日本版歴史修正主義」と呼ばれるようになったのも、そのためである。
問題
確かな証拠があり、確かに被害者が存在する歴史的事実を、自分たちの都合のいいように変えようという考えは非常に自己中心的であり、簡単に容認されていいものではない。しかし日本でも2015年現在、「安倍首相は歴史への干渉が多く歴史修正主義的である」と、国内外から批判されている。2014年の初めには、文部科学省が教科書出版社に対し、議論の分かれる歴史問題については政府の見解または最高裁判所の判例に倣うよう促すガイドラインを発表。また、同年末には在ニューヨーク日本領事館を通じて、日本政府が不正確だと考える慰安婦に関する記述を修正するように要求した。その他にも安倍首相は、慰安婦問題に関してごまかしていると取れるような発言や不誠実な言動があると指摘されている。これらのことは、国際社会における日本の信用を落としているように思われるが、それ以前に実際被害にあった人々とその国に対して非常に失礼である。日本の代表として責任ある立場にいる人間が国家の信用を損なうだけでなく、他国に対して不誠実な言動を多く見せていることは実に残念だ。
そもそも歴史は、多くの研究者によって長年研究され、確かな証拠と事実に基づいて記述されているものだ。それを自分の都合だけで変えるなどということは、そうそう出来ることではない。しかし、首相のように権力を持った人間がそのような考えを持っていると、歴史に何かしらの歪みを作ることができてしまう可能性がある。もちろん現在の歴史がすべて完全とは言い切れないため、さまざまな解釈があって当然だ。しかし、国際関係に関わる問題においてこのようなことが増えることは望ましいとは考えられない。
参考
「歴史/修正主義」 高橋哲哉/著 岩波書店
「歴史における修正主義」 歴史学研究会/著 青木書店
東洋経済オンライン http://toyokeizai.net/articles/-/58704