言語7

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目次

言語

言語とは

[言](langue(フランス))ソシュールの用語で、ラングの訳語。(広辞苑)

人間の社会集団における相互伝達の手段としての本来音声による記号。文字によっても表現される。言語は音と意味が恣意的に結びつけられた言語記号を単位とする体系で、その規則は社会的習慣として存在する。各言語は独特の語彙、音韻体系、文法をもつ。現在、世界の言語は3000以上に分けられると推定されるが、伝統関係にあるものは語族としてまとめられる。(百科事典マイペディア)

人間に固有な意思伝達手段で、社会集団内で形成習得され、意思の相互伝達と抽象的思考を可能にし、社会・文化活動を支えるもの。また、社会の全体像を反映すると同時に文化全般を特徴づけるもので、共同体の成員は言語習得を通じて社会的学習と人格形成を行う。ソシュール以来、共同体の用いる言語体系をラング、個人の言語活動をパロールという。外的形式としての言語は、音声言語とこれを前提する文字言語とに分れ、思考の発展は後者に負うところが大である。音声言語は発話と了解から成り、言語単位(音素、形態素、単語)をもとに音韻体系、文法体系(形態体系、統辞法)を構成する。音韻と意味、文字も音韻・形態素・単語の連合は社会習慣による。言語の数は2500~3500とされ、分岐的(祖語-族語、方言)発達と統一的(共通語志向)発達の2傾向を示す。これら自然言語に対し、国際語(エスペラントなど)や、ことに理論的普遍言語(諸科学に共通)を人工語という。近代以降の世界と人間の記号化の進行とともに自然科学の諸分野では記号言語への接近が目立つが、記号に還元されない言語の本質についての省察は言語哲学の興隆をもたらしている。(ブリタニカ国際百科事典)


言語の種類

地球上には6500種類の言語が存在すると考えられています。

世界の言語 母語話者人口別ランキング

1 中国語(北京語・普通話) 8億8500万人 中国

2 英語 5億1000万人 英国・米国・カナダ・オセアニア

3 ヒンディー語 4億9000万人 インド

4 スペイン語 4億2000万人 スペイン・中南米諸国

5 アラビア語 2億3000万人 アラブ諸国・中東・北アフリカ

6 ベンガル語 2億2000万人 バングラディッシュ

7 ポルトガル語 1億7000万人 ポルトガル・ブラジル

8 ロシア語 1億7000万人 ロシア

9 日本語 1億2500万人 日本

10 ドイツ語 9800万人 ドイツ・オーストリア・スイス

11 中国語(広東語) 8000万人 中国(香港、マカオ、広東省)

12 ジャワ語 7550万人 インドネシア

13 韓国語(朝鮮語) 7500万人 韓国・北朝鮮

14 フランス語 7200万人 フランス・アフリカ諸国

15 中国語(びん語、福建語) 7000万人 中国(福健省、海南省)

16 ベトナム語 6700万人 ベトナム

17 テルグ語 6835万人 インド

18 マラーティー語 6474万人 インド

19 タミル語 6300万人 インド

20 トルコ語 5900万人 トルコ

21 ウルドゥー語 5800万人 パキスタン

 ※出典:2001年中日新聞に2008年以降各種人口統計を加味

言語の分類

言語の分類単位は、大きな分類から順に、語族>語派>語群または諸語となります。18世紀に世界人口の半数で話されている「インド・ヨーロッパ語族」 が発見されました。語族は、共通の祖先(祖語)を持つ、いわば遠い親類関係のような言葉の集団です。ただし、語群や諸語の中には、言語体系としての関連が不明確であるにもかかわらず、地域的なつながりだけで、まとめられているものもあります。

日本語や朝鮮語、バスク語などは、いまだに主要な語族との関連が明確になっていないため、孤立語として扱われています。


◦インド・ヨーロッパ語族 ◦ウラル語族 ◦アルタイ語族 ◦アフロ・アジア語族 ◦ナイル・サハラ語族 ◦コイサン語族 ◦ニジェール・コンゴ語族 ◦ドラヴィタ語族 ◦シナ・チベット語族 ◦オーストロ・タイ語族 ◦オーストロ・アジア語族 ◦マヤ語族

公用語

母語ではなく、公用語として見た場合、英語が世界で最も通じる言語であると考えて間違いありません。母語以外に英語を公用語または準公用語と定めている国も少なくありません。また、アジアにおいては大学程度の高等教育が全て英語(教授言語が英語)で実施される国が多いという事実も見逃せません。非英語圏でも、初等・中等教育の段階で外国語として英語を教育する国が大半(日本を含む)です。世界中の観光地はもちろん、ヨーロッパやアジアなどの国際ビジネス現場でも公用語としての英語の地位は圧倒的です。

母語に加えて英語を公用語(準公用語)と定めている国 インド(ヒンディー語)、パキスタン(ウルドゥー語)、フィリピン(タガログ語)、シンガポール、香港(中国語)、ケニア(スワヒリ語)、南アフリカ(アフリカーンス語)、ウガンダ(スワヒリ語)、アイルランド(アイルランド語) など ※カッコは母語

[ http://www.translator.jp/rank/language_rank.cgi 世界の言語ランキング]


言語の比較

言語学で比較というときには、「いまはなくなってしまった共通の源から分かれていった」ことが証明されていなければならない。つまり親戚関係が確認できた言語同士を比べたときだけ比較といっていいのである。しかし比べることによって、たとえば教科書や辞書ができるのだし、共通することがまったくなければ外国語なんて学べない。


言語政策

言語政策とは、社会における言語の問題を解決するために、国家などの公的機関が言語ならびに言語に関わる制度を変えていくことです(類似の概念に言語計画があり、言語政策と言語計画は異なるとする学説もありますが、本書ではこの2つは同じてあるとして論じていきます)。 言語政策には言語を通して社会を変えようとする目的もあります。言語と社会は深く結び付いているので、言語を変えることは、究極的には社会を変えることにつながります。ある社会を変えたい、例えば、近代社会へと発展させたい、他国の支配から脱却したい、国内の民間族の抗争をなくしたい、というような目的のためには、政治・経済上の政策だけではなく、言語上の政策からのアプローチも必要になってきます。つまり、社会を変えるために、数多くの政策が実施されるが、言語を変える方法(言語政策)もその中の1つである、という点は押さえておく必要があるでしょう。 また言語政策は、言語とは人間の手で変えられるという認識と結び付いています。言語は変えられない、少なくとも人為的に変えるべきべはない、変化は自然に任せるべきであると唱える人もいます。そのように主張する人々は、現状の社会の持続が最も望ましいと考える人たちです。しかし必要な時には、社会を変えていかねばなりません。そのために言語も変えていかねばなりません。そこに言語政策の存在意義があるのです。 言語政策の例)自国の言語を植民地の公用語として強制した政策。「分割統治」という、各民族の言語の分断を図る政策。


地位計画

地位計画(status planning)とは、言語と言語の関係の中で、それぞれの言語の地位を定めること、つまり言語の外的な面に関係します。地位計画の具体例として、国語や公用語の選択があげられます。国内で複数の言語が使われている場合、ある言語を国語、公用語、地域公用語などとして選択する必要があります。選択された言葉は、当然、その地位が相対的に上昇しますが、選択されなかった言語は下落します。選択された言語の数も関係します。公用語として1つの言語のみが選択されたならば、唯一の公用語として、その言語は高い威信言語となりますが、4つの言語が同時に公用語として選択されたならば、競合する言語が多いので、さほど地位の上昇にはつながりません。また、教育の場で、外国語の科目として選ばれた言語は地位が上昇します。その言語が授業に用いる(教育言語)としても選ばれるようになれば、一層、その地位は上昇します。 地位計画とは、このように地位という序列を想定して、それぞれ言語の序列を上昇させたり下降させたりするのです。


コーパス計画

コーパス計画(corpus planning)とは、語彙の造成など言語の実体を変えていくこと、つまり言語の内的な面に関係します。corpus(本体)という語が示しているように、その本体・実体を変えていくことです。例えば、表記法をもたない言語にはそれを与えることです。すでに表記法があるときは、その合理化を図ることです。語彙に関しては、科学技術用語が乏しくて、現代の科学技術を取り扱えないときは、その分野の語彙の拡充を図ることです。特定の語彙を排除することもコーパス計画に含まれます。他国に支配された歴史を持つ民族が、独立後、宗主国の言語要素を取り除き純化を図ることがあります。また標準化もコーパス計画の重要な部分です。語法や表記に揺れがあれば、標準形を定めてそれを規範にします。


多言語社会における国語教育

異なる言語を話す人々が同じ国家の領土内に住むとき、相互コミュニケーションを図る上で共通語となる「国語」の存在が必要となる。国民国家の統合の象徴として、国語は重要な位置を占めてきた。国語の統一と標準化は、国民文化の確立を導く手段としてだけでなく、識字率向上や人材育成の上でも欠かせない要素である。世界の多くの国々は、異なる言語を話す複数の民族で構成される多言語社会から成っており、国民統合のために国語教育に力を入れてきている。このような多民族・多言語国家において特定の言語を国語に選定する場合、その国家の人口で最大規模、あるいは政治的・社会的に最も優位に立つ民族ないし集団の主張する言語が国語に採用されるのが一般的である。そこには行政の圧力がかかわってくる(田中1991)。その結果、国語と異なる文法の言語を話す民族が、国語教育の習熟度において主要民族に対して後れをとることとなり、公務員採用試験など社会進出の面で不利となる場合が出てきた。国民統合を目的とした国語選定によよって、民族間に軋轢が生まれ、かえって国民統合が困難になるという皮肉な現象が見られることもまた事実である。このように国語教育の問題は、常にさまざまな困難を伴ってきた。


言語主義

多言語主義

「多言語主義」( multilingualism )とは、英語、ドイツ語、フランス語、といった言語を、それぞれの母語話者を到達目標として、学校で正規に学ぶという考え方です

複言語主義

「複言語主義」(plurilingualism)とは、「多言語主義」とは異なる概念を示すために、欧州審議会で定められた用語です。2001年に、欧州審議会が出版した『言語の学習、教育、評価のためのヨーロッパ共通の枠組み』(以下CEF)の中で紹介されています。 CEFにおける「複言語主義」とは「多言語主義」よりももう少し現実的なレベルを到達目標として、各言語を学校だけでなく、生活全体の中で学ぶという考え方です。母語話者と同程度の言語能力習得を目指すという完璧主義からは脱却しています。家庭や学校、交遊関係に基づく言語体験は、人それぞれ違います。自分にしかない体験を大切にし、そこから生活の必要に応じて言語を使用することが、異なる言語話者同士の共生のために必要であるという考えです。しかし、「複言語主義」は、従来の基準では言語能力とは言えなかった低レベルの能力も肯定的に評価しようとするもので、決して高度な能力を育成することを否定するものではありません。


バイリンガル(bilingual)

二つの言語を使用する能力をもっている人のこと。この能力に関しては明確な基準はないが、一般にはどのような場面、用途においてもかなり自由にコミュニケーションができるレベル以上のものをいう。また、広義には三つ以上の言語、ときには1言語の共通語と方言、二つ以上の方言の使用能力などを含めることがある。バイリンガルには、家庭や社会の生活環境が2言語併用であることから自然に、同時に2言語を習得する場合と、教育により第二言語を習得する場合がある。後者の場合、習得された第二言語は第一言語(母語)の特徴の影響を受けることが多い。また、バイリンガルの型として、複合型と対等型の区別がいわれることがある。複合型のバイリンガルは一つの概念体系のもとに二つの言語を統合するのに対し、対等型は言語ごとの概念体系をもっているとされる。バイリンガルであることは、知能や認知の発達において有害であるとか、あるいは逆に知能や認知能力を高めるともいわれたことがあったが、本質的には単一言語使用者とかわらないと考えられている。


脚注

・広辞苑 第六版 「言語」

・百科事典 マイペディア 「言語」

・ブリタニカ国際大百科事典 「言語」

・日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイリンガル」

・[ http://www.translator.jp/rank/language_rank.cgi 世界の言語ランキング

・黒田龍之助『はじめての言語学』p186 講談社現代新書 2004年1月20日第一刷発行

・田中克彦『言語からみた民族と国家』 岩波書店 1991年

・細谷昌志 『異文化コミュニケーションを学ぶ人のために』p52-53 世界思想社 2006年3月1日第一刷発行

・河原俊昭/山本忠行 『多言語社会がやってきた-世界の言語政策Q&A-』p96-97 くろしお出版 2004年6月30日第一刷発行


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