シンガポールの環境
出典: Jinkawiki
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シンガポール共和国基礎データ
シンガポール共和国の面積は約716平方キロメートルで東京23区と同程度の大きさである。人口は約547万人で人口密度は世界第二位である。シンガポールは、東南アジアの主権都市国家である。マレー半島南端、赤道の137Kmに位置する。島国であり、同国の本土であるシンガポール島をはじめとする63の小規模な島々から構成される。同国は、北はジョホール海峡によりマレーシア半島から、南はシンガポール海峡によりインドネシアのリアウ諸島州から各々切り離されている。陸地を広げるための干拓事業を進めており、そのための土砂を国内の丘陵、海底、および周辺国から確保している。 熱帯雨林気候で、多湿で降水量が多い。明確な四季の区別はないが、北東モンスーンと南西モンスーンという二つのモンスーンシーズンがある。気温・気圧は一年を通じてほぼ一定しており、気温は22℃から34℃程で推移する。シンガポールの陸地の約223%は、森林と自然保護区であるが、都市化の過程でかつての熱帯雨林原生林の多くが失われている。同国は高度に都市化され、原初の現存植生はほとんどない。 1824年に英国の植民地となり、1942~1945年の第二次世界大戦の間は日本に占領されていた。1963年にシンガポールは英国からの独立を宣言し、マレーシアを形成するため他のかつての英国領と結合する。それから二年後、シンガポールは全会一致の議会制定法によりマレーシアから追放される。それ以来、シンガポールは急速に発展してきた。
環境問題とは
環境問題とは、人類の活動に由来する周囲の環境の変化により発生した問題の総称である。人類は古くから文明を発展させてくる過程で、自然環境を資本として利用してきた。天然資源を原材料に工業製品を作ったり、燃料を使ったりすることで、原始的な狩猟採集生活と比較して高い生産力を実現し、利便性を高めてきた。しかし自然環境を利用することは、自然環境に負担をかけることになる。人間が少しでも自然に手を加えれば、自然、環境への負担が必ず発生するが、自然は自己修復性をもっており、ある程度の負担までは短時間で回復することが可能である。自己修復性とは植物が伐採された後再び芽生えて元のように成長したり、物を燃やした際に出る灰や煙が拡散、沈殿などを経て分解されたり生物圏から隔離されたりすることであり、生物学や物理化学によって説明されるという。そんな自然が持つ自己修復性を超えて負担をかけたり、自己修復性が損なわれたりすると、回復が遅れて結果的に人類をはじめとした生物に悪影響を及ぼす。 20世紀半ば、環境問題が世間に認知され始め、学問的に環境問題を調査研究する動きが本格化する。その後、酸性雨、オゾンホール、異常気象、地球温暖化など環境の変化が顕著になっていくにつれ、人々の環境問題に対する関心は徐々に高まってきた。
シンガポールの環境に対する市民意識
シンガポールは極めて環境意識の高い国とみなされている。この国では、都市化が進行しているが、自然と生物多様性は配慮されてきた。ガーデン・シティと呼ばれる植物が多い街づくりは、当時のリー・クアンユー首相が東京の神宮外苑をモデルに構想した。植生が豊かなことは、ほぼ赤道直下にあたる同国のヒートアイランド現象を大きく和らげている。 シンガポールは多民族国家で、美化や環境意識は出身文化や生活スタイルにより大きく異なる。政府は、市民にとって使い勝手の良い合理的なシステムの導入、徹底した啓蒙活動、主として罰金を用いた厳罰主義を手法として市民の環境意識を大いに高めてきた。中継貿易依存の高いシンガポールにおいて、環境産業の育成は経済政策の大きな柱に据えられた。緑が多い街、清潔な街、快適で迅速な交通システムの整備は、他の観光政策とともに長年にわたって政府の重要政策のなかに含まれていた。シンガポール市民の環境意識が最も顕著に現われている例は、海外旅行の経験であるという。特に安全と清潔さに対する市民の意識は普段の生活を背景に高いレベルにあるためだ。
シンガポールの環境政策
シンガポール政府は、各省庁が個別で機能するのではなく、特定の政策に省庁間が一体となって取り組むという特徴がある。特に環境政策は管轄する省庁だけでなく、経済成長戦略や都市計画を含めた政府一丸による取り組みがみられる。環境政策の重点は、緑豊かなガーデン・シティから持続可能なサスティナブル・シティへの移行期ということだ。1972年に環境省(現環境水資源省)が設置され、公害防止とともに、市民の啓蒙を担ってきた。実質的には同省傘下の環境省が仕事をしている。 1969年に始められた環境美化運動「クリーン・アンド・グリーン・シンガポール」には次の9つの目的が定められている。 1. 清潔の維持 …清潔を維持し、ペストを防除しよう。 2 公衆トイレの清潔の維持 …清潔に保つトイレ習慣を身に付け、感想を維持しよう。 3 10分間の掃除 …ボウフラが湧かないように溜まり水を捨てデング熱を防除しよう。 4 節水 …水を賢く使い、節水道具を導入し、節水ラベルの器具を使い、修繕を心がけよう。 5 植生 …メインテナンスに手間がかからない植物を植え、化学肥料を使わず有機を保ち 蚊が群がらないようにしよう。 6 庭と水が価値を上げる街 …我々の生活環境を率先して守ろう。 7 リデュース、リユース、リサイクル …必要以上に消費しない、再利用できるパックを選ぶ、リサイクルの紙、缶プラスチックを使おう。捨てる前に考えよう。小さな努力が長い道を作ることができる。 8 エネルギーの効率利用 …スイッチはこまめに。空調機は25度設定に。エネルギーを節約し気候変動の影響を減らそう 9 環境にやさしい交通 …公共交通機関や環境に優しい乗り物に乗ろう。運転せず、歩こう。
シンガポールの街並み
シンガポールの街でごみは見当たらないという。なぜかというと、高い罰金制度があるからである。ちり紙や空き缶をポイ捨てすると最高1000シンガポールドル、日本円で約8万円、鳥の餌槍も1000シンガポールドルの罰金が科せられる。街中には50mごとにごみ箱が設けられていており、これだけ高い罰金を払うのはばかばかしいという所から、ポイ捨てする人がほぼいなくなり、街の風景は綺麗が保たれている。そして国内へのチューイングガムの持ち込み禁止、電車内での飲食禁止など、守らなければ観光客にも罰金が科せられる。この制度は、多民族国家であるシンガポール国内の多くの民族を統制するために定められている。罰金制度があるおかげで、街並みは綺麗が保たれているといえる。チューイングガムなど、国内に持ち込んだだけでも刑罰の対象になるほど、非常に厳しい罰金刑がこの国を統制しているといえる。
シンガポールの大気汚染
ヘイズと言われる、インドネシアなど東南アジアの熱帯雨林の火災や泥岩火災の煙による乾いた微粒子が大気中に浮遊する煙霧によって視界が妨げられる現象がシンガポールにまで影響を及ぼすことがある。煙の中には微小粒子物質であるPM2.5など有害物質を含んでいる。被害としては、街中に濃いもやがかかったようになり、視界が悪くなり独特の焦げたようなにおいが充満する。人体にも深刻な影響を及ぼす危険性がある。目、鼻、喉などの粘膜や、皮膚のかゆみ、器官から肺などの呼吸器系や循環器系への健康被害が報告されている。予防、対処法としてはこまめな水分補給、手洗い、うがいマスク着用などである。また、医療機関を受診して処方箋をもらうことも可能である。 国内での大気汚染対策としては、大気汚染のおおきな原因となっている業種や工場はシンガポール島の西端の工業団地や沖合の埋め立て地に建てることを指定して、発生する大気汚染による住居等へのえいきょうを回避する仕組みが作られている。また、自動車排ガスに関してはEUの自動車排ガス規制を利用した厳しい単体規制の実施に加え、独自の制度である車両購入証の発行制限による自動車総量の規制、走行量の抑制が大気汚染対策に間接的な効果を上げている。
シンガポールの水質汚濁
高低差の少ない狭い国土では水源に乏しいため、国内多数の貯水池と隣国のマレーシアからの輸入した原水で水の需要に応じてきた。水道水は国内の貯水池では到底賄い切れないため、隣国のマレーシアよりジョホール海峡を渡るパイプラインで原水を購入している。このため水質環境に対する関心は高いのだ。水質環境を監視するため、多数の水質監視ポイントを設け、定期的に水質検査を行い良質な水質維持を図っている。このような良好な水質を維持できる最大の理由は下水道整備が整っているからだ。生活排水だけでなく、産業排水も下水処理される。そして水質汚濁の原因の多くを占める産業排水については厳しい排水規制がなされる。
シンガポールにおける産業廃棄物・リサイクル政策
シンガポールは急速に都市化、工業化が進んだ国である。狭い土地や天然資源が少ないため、持続可能な経済発展を遂げるには、土地や資源の効率的な利用が不可欠である。拡大する経済活動により、排出される廃棄物量は1970年から2000年までの30年間で約6倍になった。将来もこのペースで廃棄物が増え続ければ、より多くの土地を確保しなくてはならなくなり処理費用も増える。政策としては廃棄物の増加が国の発展の持続可能性を脅かすと危惧される背景から、廃棄物を削減し、排気物処理に充てる土地や資源を早急に抑制することを重要な目標として掲げている。2002年のSGP2012に記載されている持続可能な廃棄物管理を行うための目標は次の3項目とされた。 1、2012年までにリサイクル率を44%から60%に引き上げる。 2、スマカウ最終処分場の残余年数を50年に引き伸ばし、埋め立てゼロを目指す。 3、新規焼却場の必要性を現在の5~7年に1基から、10年~15年に1基にする。
参考文献 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/singapore/data.html#01 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000522/spore_kankyoseisaku.pdf http://www.env.go.jp/earth/coop/oemjc/singa/j/singapore_j_1.pdf シンガポールにおける環境問題の現状と環境保全施策の概要 https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/05001474/05001474_001_BUP_0.pdf tori