オンブズマン制度5
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
目次 |
概要
オンブズマンという制度は、議会がその付属機関として会計検査院のような独立の期間を設け、これに行政監察の機能を委ねようとするものである。オンブズマンは、元来は国民の苦情に基づいて、或いは職権で行政府等の活動を調査し、適切な行政改善や の懲戒等について、政府及び議会に助言、勧告を行う機関である。この期間は、国家権力=法に代えて、世論を主たる強制力の裏付けとしている点に、特色がある。
オンブズマン制度の変遷
オンブズマン制度とは、もともとスウェーデンで18世紀初めに創設された制度であったが、1809年に、これが憲法で、現在行われている形で規定され、今日まで引き継がれている。戦前には、この制度は、スウェーデン以外では、フィンランド(1919年憲法で規定)にあっただけであったが、戦後、この制度は、行政職能の拡大と共に、先進諸国の間で急速に広まった。この制度が普及する糸口となったのは、1954年に、イギリス型の議院内閣制を有するデンマークでこれが採用され、これが行政苦情の救済に有効に機能することが立証されたことにあった。オンブズマン制度の目的は、何なのかについては、これがもともと柔軟な制度なので、様々な解釈が可能であろうが、これを受け入れた西欧諸国では、民主主義及び法治国家の理念や理想に合致する政治・行政制度の形成を促すことにある、と考えられている。おして法治国家とは、個人の尊重であり、その目的は、個人がその個性を展開させ、その理想的自我を実現するための諸条件を形成することにあるから、オンブズマン制度は、この法治国家の目的に奉仕する社会規範を形成し執行することを促進する役割を有すると考えられている。
日本のオンブズマン制度
今日、国民がオンブズマン制度に期待する内容は様々である。これらの期待に応じて、我が国には様々な種類のオンブズマンが併存している。それらを機能により区別すると、次の五種類に区分できる。 1、市民オンブズマン 2、行政オンブズマン 3、行政施策推進の手段としてのオンブズマン 4、総務庁による行政苦情救済推進会議 5、参議院行政監視委員会 日本のオンブズマン制度は総務庁に行政監察の権限が一部あり、地方自治体に監査委員会が設置されている。しかしオンブズマンである監査委員会そのものが「カラ出張」や過剰な「官官接待」、公費による「観光旅行」を行い、それを一般市民の有志でつくる「市民オンブズマン」などボランティア団体に指摘されるという事態が起きている。これは、国会、行政、司法はじめ、地方自治体と地方議会、会社と株主、企業と監査する会計士、マスコミなど、互いの行動を見張り、牽制しなければならない関係にある者同士が馴れ合いもたれ合い、チェック機能を失った日本社会そのものを象徴している。
参考文献
平松毅「各国オンブズマンの制度と運用」(2012)成文堂