教育バウチャー制度2
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
目次 |
概要
バウチャーというのは用途を限定した金券で、普通の補助金と異なり、学校ではなく親に支給することである。学校は集まったバウチャーの数に応じて行政から学校運営費を受け取るという仕組みになっている。公立学校は公費で運営されているが、私立学校は補助を受けるだけなので、授業料に格差があり、貧しい家庭の子どもは私立学校に行けないのだ。このような状況に対して、50年前にミルトン・フリードマンという人物が公立学校に公費を支給しないで親に授業料をバウチャーとして補助する制度を提案したのだ。教育バウチャーの実施例として挙げられるのは、米国のウィスコンシン州ミルウォーキー市、オハイオ州クリーブランド市、フロリダ州などがあるが、いずれも低所得層や極端に教育環境が悪い学校に通う子どもなどを対象にしたもので、一種の社会格差是正策として導入されている。
歴史
もともとバウチャーのアイディアは19 世紀中頃のフランスに遡る。学校教育機関の規制緩和に関してはアメリカの経済学者であるミルトン・フリードマンがその著書『選択の自由』の中で提唱したものである。アメリカでは「ミルウォーキー」や「クリーブランド」といった都市で学校バウチャーが導入され、スウェーデンでは1993年に国家規模で義務教育段階に学校選択の方法としてバウチャーが導入されたのだ。イギリスでは保育に利用されたことがある。
メリット
教育バウチャーのメリットとしては、バウチャー方式であればどの機関で教育を受けるかという選択の幅が広がり、万が一、サービスが悪ければ、サービス提供者の切り替えも簡単にできるのだ。したがって、利用者の教育の選択権が確保できるようになり、教育機関での競争によってサービスも良くなると考えられると言われている。
デメリット
デメリットとしてあげられるのは、自由な選択が誰にでも保障されるかというとそうとも言えないということだ。それにサービスの提供者がサービスの質を保つために利用者を選ぶということも考えられ、地域によっては選択権の不平等を生じることも考えられる。また、教育上の問題が生じた場合に、選択の自由が逆に選択した利用者の責任として処理されてしまう問題も考えられると言われている。
現状
現在では、学校選択性の拡大、中高一貫校の設立、飛び級制度の導入、私立学校制への経済的支援などの教育の動きがあり、小中高生に広がる不登校・引きこもりへの対応としてもフリースクール等における予防的措置の問題もある。今までの教育の機会均等の原則に加えて、教育の自由をどう確保するかが大きな問題となっている。特に学校に籍はあるものの登校しなくなったことで国や自治体の経済的支援を一切受けられなくなった不登校や引きこもりの児童・生徒への教育バウチャーの導入は必要と考えられている。
日本での取り組み
2012年に元大阪市長の橋本さんによって日本初の教育バウチャーが生まれた。それは塾代補助クーポンと呼ばれるもので、これは学習塾などの料金の一部を市が補助し、低所得者の多い西成区で先行実施され、次年度からは市全域で中学生の7割程度に月1万円分のクーポンを支給。予算は34億円のささやかな事業だが、政治的には大きな意味がある。これは日本初の教育バウチャーなのだ。子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、こどもたちの学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供するために、ある一定の所得要件を設け、市内在住中学生の約5割を対象として学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室等の学校外教育にかかる費用を月額1万円に上限助成する事業である。 現在では、「塾代助成事業」として、存在している。
参考文献
・教育バウチャー制度について http://www.os.rim.or.jp/~nicolas/kyouikuvoucher1.html
・橋下市長の「教育バウチャー」は教育を変えるかhttp://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/06/post-517.php
・大阪市 「塾代助成事業」 http://www.city.osaka.lg.jp/kodomo/page/0000212697.html
・ベネッセ教育情報サイト 安倍首相が導入を掲げる「教育バウチャー」って何? http://benesse.jp/kyouiku/200610/20061024-1.html
ハンドルネーム みっつ