イラク戦争16

出典: Jinkawiki

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目次

イラク戦争

2003年5月20日、米英を中心とする連合国軍が、イラクの大量破壊兵器に関する国連決議違反を主たる事由として、イラク全土に1カ月強にわたる地空からの軍事攻撃を行った戦争。4月9日には首都バグダード市内に進軍した米軍が反フセイン派の一部の市民に合流してサダーム・フセイン像を倒し、これを契機として24年間にわたる独裁を維持してきたフセイン政権は事実上崩壊した。その後散発的な抵抗は見られたものの4月末には主要な都市が陥落し、ブッシュ米大統領は5月1日には戦闘の終結宣言を行った。この戦争による米軍の死者が終結宣言までで141人だったのに対し、イラク兵死者数は戦争直後の推定値で1万人以上、戦後2カ月の段階では民間人の被害が最低でも5000人と指摘されるなど、イラク側に大きな被害を出した、また米軍がクラスター爆弾や劣化ウラン弾を使用するなど、使用兵器の道義的問題も浮上した。

戦争にいたる経緯

米政権がイラクを軍事攻撃の対象として具体的に考え始めたのは01年の9・11事件以降で、02年 1月のブッシュ大統領の一般教書演説ではイラン、北朝鮮とともにイラクを悪の枢軸として名指しし,在外イラク反体制派との接触フセイン政権後の受け皿作りなどを頻繁に行うようになった。 02年9月にはブッシュ大統領は国連で、イラクに対する国連査察再開と大量破壊兵器廃棄が実現できない場合は軍事行動も辞さないとの姿勢を表明した。 これに対してフセイン政権は一転、査察受入れ姿勢を表明したが、米政権はより厳しい条件での査察が必要だとして新たな安保理決議1441号を11月8日、国連にて採択せしめ、イラクが査察活動の過程でく重大な違反を犯した場合は深刻な事態をもたらすと、武力行使を示唆した内容を盛り込んだ。同決議に基づいて国連査察団は4年ぶりにイラク国内での査察を開始したが、予定の査察期間である60日間には大量破壊兵器保有を立証することはできず、さらに03年3月7日まで査察は延長して行われたが、その報告はあくまでも保有疑惑に結論を出せる内容ではなかた。こうした査察結果に対して、疑惑が解消されない限り軍事行動やむなしと主張する米英と、さらなる査察の継続と軍事行動への反対を主張する仏独ロとが国連安保理内で対立し,米欧の亀裂によって国連での合意形成は不可能となった。ブッシュ政権は02年末から着々とベルシア湾岸地域に軍備増強を進めるなか、国連の枠に依拠した解決をあきらめ、3月18日には、48時間以内にフセインとその親族が国外退去しない限り米英とその友好国だけでも軍事行動に踏み切る、との最後通告を行ったのである。

戦争の目的

米政権がイラク戦争に踏み切った公式の理由は、大量破壊兵器の廃棄と開発禁止という湾岸戦争停戦条項にフセイン政権が違反している、という点であるが、実際にはイラク戦争後2カ月を経ても大量破壊兵器は発見されていない。むしろ米政権のなかには、フセイン政権と国際テロ組織との関連疑惑や、フセイン政権の非人道性を問題視して政権転覆の必要を強く主張する声が高かったものと見られる。特に共和党議員の一部は、湾岸戦争以降在米亡命イラク人と密接な関係を維持し、亡命イラク人を核とした民主的な政体をイラクに樹立すること、そしてそれを緒として中東全体を民主化すべしという議論を展開していた。その意味で、同戦争の目的はイラクの政権転覆を最終目的としたものであったと考えることができる。戦後のイラクだが政権転覆後の戦後体制について米政権に確たる青写真は存在せず、新政権樹立については試行錯誤が続いている。当初戦後統治の責任者とされたガーナー復興支援室(ORHA)長は、これまで米政権との協力関係にあった亡命イラク人勢力を中心に早期に暫定統治機構を立ち上げる予定であったが、略奪の横行など国内での治安悪化が深刻化し治安維持のために兵員が増派されて米英の直接統治の色彩を強めた。5月6日にはORHAに替えて元米外交官のプレマーを長とする連合国暫定機構 (CPA)が統治母体とされ、米英の統治にイラク人は補佐的な役割として起用されるにすぎなくなっなった。イラク社会は, フセイン政権の独裁終結によってある種の解放感を得たとはいえ、米英の戦後統治の不備、秩序形成努力の不在によってイラク社会全体に対米不信と反発が広がり、統治をますます混乱させている。一方でシーア派を中心としたイスラーム勢力の台頭が目覚しく、米英のイラク民主化構想はジレンマを抱えている。

参考文献

梅棹忠夫 「世界民族問題辞典」平凡社 2003 日酒井啓子「フセイ ン ・ イ ラク政権の支配構造」岩波書店 2003


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