ヨーロッパの生活様式の変化
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
==ヨーロッパの生活様式の比較== 50年代に入るまで、生活態度にはかなりの相違が認められた。主な指標は都市人口および農村人口の大多数の生活水準が非常に低かったことがある。それは「景気の良い」年にさえ家計の支出の圧倒的な部分75%以上が本来の基本的な必需品―食料、衣服、住居および暖房―を充足するために充てられたのである。租税および社会保険料の控除した後、「自由な」利用のために、すなわち贅沢な消費財、余暇、貯蓄などのために手元に残ったのは所得の5分の1以下であった。それに対して職員・公務員の家計では自由に利用できる部分はすでに4分の1以上であり、しかもそれはより高額のそしてなによりも安定した所得においてもそうであった。それどころか労働者の場合には病気あるいは失業による永続的な収入不足がいずれにしてもすでに不安定な状態をさらに悪化させる恐れがあった。1929年以降の大量失業の過程で、ヨーロッパ全域で広範な人々が窮乏化の状態におちいった。そうした窮乏化はそれによって打撃を受けた人々の意識に強烈に刻みこまれ、当然第二次世界大戦後の社会的、経済的発展に対して必然的な結果をもたらした。定職に就いていた人々はともかくも恐慌の時期にさえ労働力の大多数なしていたがそうした人々はその間に生活水準の一定の改善を達成した。というのは、大部分の国で実質賃金がたとえ不連続であったとしても明らかに上昇していたからである。食料はより内容豊富で多様になった。電気照明およびラジオはますます家庭の標準的な調度となった。特にイギリスとフランスでは1938年には自動車はもはや金持ちだけが所有するものではなくなった。ドイツでは数百万人もの人々が「フォルクスヴァ―ゲン」を夢見て貯蓄した。西・北米ではそのころ大消費社会の最初の徴候が進展した。すなわち、ブランド製品、分割払い制度、安売り店、通信販売店、広告などが普及した。 第二次世界大戦後ほぼ30年間持続した経済成長によって、その後少なくとも北・西欧で大消費社会が最終的に出現した。それと結びついた全般的な豊かさの増大はヨーロッパ社会における多くの伝統的な、物質的に制約された生活様式の不公平を解体した。完全雇用と実質賃金の持続的な上昇とによって、特に下層の社会層に関して消費水準、したがってそれにつれて全般的な生活水準が上昇した。世帯収入に対する基本的な必需品のための支出の割合は1960年以降2分の1に低下した。それによって、著しく多くの資金が他の消費財やs-ビスあるいは貯蓄のために振り向けられるようになった。 現在、イタリアは成長率を引き下げ、フランスも横ばい、ドイツも期待よりは成長率が鈍化している。これらを総じてユーロ圏全体の経済水準は危機前のピークまで戻っておらず、その水準に戻るのに十分なスピードが得られていないといえる。需要が大きく減少し、潜在需要が落ち込んでいることからデフレに陥るリスクがあるとみられている。しかし、政策当局の意識も変化し、従来の政策を転換する動きやユーロ安、原油安等がユーロ圏の経済に有利に働くことから、2015年以降の経済成長については緩やかに回復傾向になると考える。ただ、以前の水準へすぐに回復できるほどの加速ではなく、あくまで緩やかなもの。
参考文献 *https://www.waseda.jp/inst/weekly/academics/2017/04/21/24210/ 〈国際政治学〉ヨーロッパ統合の意義と イギリスのEU離脱問題 *http://www.esri.go.jp/jp/seisaku_interview/interview2015_08.html 欧州経済の現状と課題|内閣府 経済社会総合研究所 *『20世紀ヨーロッパ社会経済史』浅井淳平(1991) 名古屋大学出版会 *『21世紀ヨーロッパ学:伝統的イメージを検証する』支倉寿子・押村高(2002) ミネルヴァ書房