原子力発電17

出典: Jinkawiki

2018年1月26日 (金) 13:30 の版; 最新版を表示
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原子爆弾と原子力発電

ウランやプルトニウムは、中性子照射によって核分裂反応を起こしてエネルギーを出す。これを利用したものが、原爆や原発である。人類が最初に実用化したのは、原爆だった。第二次世界大戦中の1942年、アメリカは原爆製造計画「マンハッタンプロジェクト」を発足させ、3年間でウラン原爆とプルトニウム原爆を開発した。最初の核実験は1945年7月16日にニューメキシコ州のアラモゴードで行われ、プルトニウム原爆が使われた。そして、同年8月6日広島にウラン原爆が、3日後の8月9日のは長崎にプルトニウム原爆が投下された。 エンリコ・フェルミは、1941年12月、シカゴ大学のテニスコートの上に人類最初の原子炉を組み立てて、原子核分裂連鎖反応を安定的に管理することに成功した。核分裂で放出されるエネルギーを熱に変えて水蒸気を発生させ、タービン発電機を回転させるシステムをくみ上げたものが原子力発電所(原発)である。史上初の実用規模の原発は1954年にソビエト連邦(当時)のオプニンスクに建設された5000kWの発電所だった。日本には1965年にイギリスのコールダーホール型原発が茨城県東海村に建設されたのが最初で、後にはアメリカで開発された沸騰水型および加圧水型の発電炉が導入された。1986年4月26日には、チェルノブイリ原発が大規模な事故を起こしたため、安全性が大きな問題になった。現在、日本で50基以上の原発が稼働し、電力生産の一翼を担うに至っている。


沸騰水型原子力発電炉って?

沸騰水型原子力発電所は、軽水炉(Light Water Reactor,LWR)の一種である。原子炉には3つの基本要素①核燃料②減速材③冷却材、がある。減速材は核分裂によって発生する高速の中性子を減速させるための材料で、冷却材は核分裂反応で解放されたエネルギーで高温になった燃料棒を冷やすための素材である。イギリスで開発され、日本に最初に導入されたコールダーホール型原発で二酸化炭素(炭酸ガス)を用いたが、軽水炉では、核燃料に低濃縮ウラン燃料を、減速材と冷却材にはともに軽水(高純度の普通の水)を使用する。核分裂反応を起こすのは235Uだが、天然ウラン中にはわずか0.7%しか存在しないから核分裂密度が小さく、天然ウラン燃料は炭酸ガスで冷やせば足りる。しかし、235Uの濃度を3~4%に濃縮すると核分裂密度が上がるので、ガスでは間に合わず、熱を効率よく奪うために水で冷却する必要がある。 沸騰水型原発(Boilling Water Reactor,BWR)は、核分裂反応で加熱された低濃縮ウラン燃料棒の熱を水に与えて水蒸気つくり、その水蒸気を直接水上タービンに導いて、タービン発電機を回転させる原理である。原子炉内で発生した水蒸気を直截タービン発電機に導くので、システムとしては単純だが、核燃料から冷却水中に漏れ出す放射性物質がタービンを汚染するため、作業員の放射線被ばくが加圧水型原発よりも多い傾向がある。


加圧水型原子力発電所って?

加圧水型原子力発電所(Pressurized Water Reactor,PWR)の場合も、核燃料に低濃縮ウランを、減速材と冷却材に水(軽水)を利用する点は、沸騰水型原子力発電炉と同じだが、その名のごとく、原子炉容器の内部は150気圧にも加圧されているので、冷却水は300度以上に加熱されても沸騰しない。PWRでは、この加熱された水を 熱交換器(蒸気発生器)に導いて、別系統の水(2次冷却水)に熱を与えて水蒸気を作り、この水蒸気によってタービンを回転させる。途中の水蒸気発生器で熱交換をする手間がある分だけ、システムは複雑化するが、水蒸気発生器のパイプに穴が開かない限り、1次冷却水に含まれる放射性物質が、タービン系の2次冷却水を汚染させることはない。しかし、現実には蒸気発生器の細管に穴が開き、2次系統の放射能汚染が起きる異常事態も発生した。 1979年3月29日に、アメリカのスリーマイル原発が事故を起こしたが、発端は2次冷却水を循環させるためのポンプの故障だった。原子炉内で加熱された1次冷却水を蒸気発生器に送り込んだが、し弁から放射能交じりの1次冷却水が環境中に放出された。実は、2次冷却水の循環ポンプが故障したら、3台の補助給水ポンプが働いて水を供給する仕組みだったが、誤って補助給水ポンプの出口弁が手動で閉止されていたため、役に立たなかった。原発の運転では、安全設備とともに人間のエラーが重大な問題となる。


参考文献:図解雑学「放射線と放射能」立命館大学名誉教授 安斎育朗


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