アメリカ教育の変遷

出典: Jinkawiki

2018年7月25日 (水) 17:08 の版; 最新版を表示
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アメリカ教育の変遷

目次

教育観

伝統的教育観

19世紀末から20世紀の初頭に欧米諸国において、子どもを教育の主体として捉え子どもの内面をより重視する「新教育運動」が具体化された。アメリカにおいては「進歩主義教育」と呼ばれる。進歩主義教育における基本的な思惟方式は、「実用主義」「活動主義」という意味を含むプラグマティズムという考え方である。その考え方に基づく教育学の代表的人物がデューイである。思想は行動の道具であり、その真偽は実験によって定められるべきであるとし、「知識の獲得」と「環境を合目的に改造すること」の連続性を主張した。デューイの多方面にわたる研究業績により、プラグマティズムはアメリカ人の日常生活の中に受け入れられ、その地位を確立していった。進歩主義教育学者によるカリキュラム改革運動の中で、生活問題の解決を中心とするコアカリキュラム、それらの問題の解決過程を学習形態として組織した問題解決学習やより良い社会」の実現を目指すコミュニティスクール等も、デューイ及びその学派の進歩主義教育学から発生し、アメリカ教育の基盤を形成していった。

教育観の変遷

20世紀に入ってからも進歩主義教育が主流となっていたが、第二次世界大戦の頃から特に中学校の生徒の学力低下や科学技術教育に対する学校教育の遅れが指摘されるようになり、このことに拍車をかけ、国家的な関心事としたのが1957年のスプートニク・ショックである。技術的優位さらには国家的優位を揺るがしかねない危機感のなかで、その原因と対策の一つとして教育の在り方が問われるようになった。翌年には国家防衛上必要な人材を確保するための「国家防衛教育法」が成立され、数学、物理、化学、生物等の自然科学分野の教育が強化された。その結果、1960年代は学問中心のカリキュラムが展開されていった。「発見学習」という方法で学問の基本構造や研究方法を身に着け、広範な応用力を伸ばすことが期待された。学問の系統性を重視した動きが表れ、その影響は日本にも及んでいる。しかしながら、ドロップアウトしてしまう生徒が続出し、麻薬や暴力行為等の非行問題が多発した。こうした反省を生かし、1970年代では人間中心の教育が主張されるようになった。伝統的なアメリカ教育への回帰となった。

教育制度

19世紀頃の教育制度

アメリカでは「教育の機会均等」が伝統的に掲げられ、単線型学校制度を採択している。初等教育、中等教育の区分に注目すると、19世紀の半ば頃、アメリカでは8-4制が主流となっていた。19世紀末ごろには、8-4制が子どもの心理的発達段階に適していないという指摘が起こった。こうして20世紀初頭にかけて6-6制や6-3-3制の学校制度が成立していった。6-6制は中等教育を早期化し年限を長くし、その充実を図ろうとする動きがあった。その後、中等教育への進学者が増加し、ハイスクール化が起こった。そのような流れの中で、初頭教育と中等教育の間に中間的段階を設け、全国的に6-3-3制が主流となった。

ミドルスクールの登場

1960年代には、ジュニアハイスクールに代わるミドルスクールが登場し、5-3-4制、4-4-4制の学校制度が進出した。この制度の登場背景には、子どもの心身の発達や生理的発達の早熟化があげられる。子どもの成長発達が全体として加速化し、従来の発達段階による区分において学習や生徒指導上のずれが生じるようになった。またアメリカにおける第一次ベビーブームによって生徒が急増し、どのように収容していくかという人口統計上の課題や、公民権運動のなかで学区による人種差別撤廃への取り組みともかかわっている。

現在の教育制度

アメリカにおいて就学義務に関する規定は各州で定められ、その期間も週ごとに異なる。基本的に6~7歳を義務教育開始年齢とし、その年限は9~12年であるが9年または10年とする州が多い。最近では義務教育期間を延長する州が増えてきている。ミドルスクールの増加により、全国的に5-3-4制、4-4-4制の学校制度を採用している学区が増えている。

参考文献

赤星晋作著「アメリカの学校教育―教育思潮・制度・教師」2017年発行 学文社


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