フランスの学校制度2
出典: Jinkawiki
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1.学校の風景 フランスの学校は9月にはじまる。低学年の児童は保護者同伴が多く、父親の姿も珍しくない。始業10分前に校門が開くと、ほどなく鉄製の門が閉ざされる。以後16時半まで許可なく校内に立ち入ることはできない。知育は学校で、徳育は家庭と教会で、という厳格な区分は今でも現在である。入学式や始業式のような特別な行事はなく、それぞれのクラスで担任の話を聞いて早速授業に入る。 フランスの学校は約7週間の授業の後に約2週間の休みを設ける「7-2リズム」といわれ、フランス独特の学習リズムの考え方から生まれた。 小学校と中学校の学習指導要領は2002年に改定告示され、同年新学期より実施された。小学校では、ここ数年の教育界の優先課題となっている読み書きの指導の徹底がカリキュラムに反映され、言語教育の強化が改訂の目玉とされた。さらに外国語または地域語の時間が新設され、全学年必修となった。ただし、外国語の授業を担当できる教員は不足しており、契約職員に依存している現状もある。 小学3年生と中学校1年生、そして高校1年生にとっては、新学期は学力調査から始まる。1989年以来国民教育省は、児童生徒一人ひとりのつまずきを正確に把握し、各学校の指導改善に役立てるために、毎年新学期が始まる9月に全国一斉学力調査を実施している。国民教育省は、毎月11月にサンプル集計によって全国的傾向を明らかにし、教科ごと、学習領域ごと、問題ごとの正解率や予想される誤答などのデータを教員に提供する。これを指導法の改善や学習集団編成の方針をたてることに役立てる。
2.学校の特色 フランスの学校落第制度がある。世界一厳しいといわれる進級制度を持ち、小学校1年生から容赦なく落第させられるという事実は、知識教授を徹底的に行う学校のイメージを一層強固なものにしてきた。しかし、近年は落第制度の抑制を図っている。 この落第制度の抑制に伴い、知識偏重からの脱却の動きが高まった。その成果の1つとしてコレージュとリセで導入された横断的な学習がある。これは自らの興味関心や、幅広い視野から物事を理解することを通して生徒の主体的学習を促したものである。 またフランスの公教育の大きな特徴の一つは、宗教的中立性を厳格に守り通していることにある。宗教教育は公立学校では行わないという革命以来の伝統が今日まで続いている。
3.学校改革の動向 1980年代以降、アメリカやイギリスでは平等を軸とする福祉国家体制の中の教育から、競争を基盤とする市場原理に基づく教育システムへと大きく変貌を遂げた。しかし、フランスでは市場原理に基づく教育改革は行われていない。フランスの教育政策の根底には平等のモチーフが流れている。しかし時代の流れとともに、平等理念は、多様化尊重をベースにしつつ質的視点をも包含した新しい教育理念に再生し、基礎学力の向上を目指した。