ちびくろサンボ 2

出典: Jinkawiki

2008年7月31日 (木) 22:53 の版; 最新版を表示
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ちびくろサンボ

 『ちびくろサンボ』は、イギリスのヘレン・バンナーマンが19世紀に執筆した絵本である。内容は、ジャングルで虎に襲われそうになった黒人の子供が、機転を利かせて危機を乗り越えるといったストーリーで、絵本はイギリスで出版され、当時としては驚異的なベストセラーとなった。しかし、版元が版権を確保しなかったために、様々な翻訳や改訂版・海賊版が出回ることとなり、絵柄もバンナーマン自身の挿絵から思い思いの絵柄に差し替えられ、サンボもオリジナルである「インド人」としてではなく黒人の特徴をひどく誇張した姿に描かれるようになった。この物語がアメリカに伝えられると、サンボはいつの間にか、アフリカ系の「黒人」の子供として捉えられるようになる。また「サンボ」という名前は、当時白人が黒人を侮辱する際に用いていた強烈な差別用語であり、加えてサンボの派手な服装は黒人の美的センスを見くびっている、ラストシーンで黒人の食欲が誇張されていることなどから黒人の批判の対象となり、1970年代の公民権運動の高まりの中店頭から姿を消すこととなった(絶版にはなっていない)。

 日本でも黒人風の絵を使った米国版の翻訳が数十種類が出たが、中でも1953年に発売された岩波書店版『ちびくろサンボ』(光吉夏弥訳)は、35年間で120万部売れたロングセラーとなった。しかし1988年に国内で「内容が黒人差別を助長する」といった批判が市民団体から発生し、岩波書店が自主的に回収・絶版したのを皮切りに、他の出版社もそれに続いて絶版に至った(一斉絶版問題)。しかし一方で、日本では十分な議論がされた訳ではなく、更に問題となってからわずか四日間で絶版に至った経緯について、絶版にするほど差別的な本であるのかと疑問視する愛読者も多い。

 また、2005年4月15日に瑞雲舎よりフランク・ドビアスによる挿絵、光吉夏弥訳の岩波書店版『ちびくろサンボ』が17年ぶりに復刊し発売された。これによる国内外の反応は、絶版となった当時と比べ批判は少なく、その理由についてLAタイムズのブルース・ウォレス東京支局長は「当時は、経済摩擦など日米が緊張関係にあった。今とは時代背景が異なる」と指摘している。また、岩波書店は、瑞雲舎が岩波版の本の版面をほぼそのまま使用したことについて、編集著作権を損なうと抗議した。「サンボ」という名称自体が蔑称であるとした当初の岩波書店の見解は変わらないとしている。


 


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