安楽死9
出典: Jinkawiki
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概要
安楽死とは、死期が迫っている病人の激しい肉体的苦痛を緩和、除去して、病人に安らかな死を迎えさせる行為のことをいう。 この考え方自体は紀元前よりあったが、16世紀のヨーロッパで「不治の病を患った場合、死期を早める医療行為は許されるのか」という議論がなされるようになり、安楽死という言葉が生まれた。 日本では、昭和37年に病気の父親に毒薬の入った牛乳を飲ませて死亡させたとして子が逮捕された「名古屋安楽死事件」、平成3年に家族の求めにより担当の医師が末期がんの患者に薬剤を投与して死に至らしめたとして逮捕された「東海大学安楽死事件」が起きた。 いずれの事件でも、安楽死を行った人が殺人罪で逮捕され、有罪となっている。 現在では、安楽死は法律では定められていないが、これらの事件の裁判で出された判決などをもとに安楽死の判断基準が出来ている。
「高瀬舟」と安楽死
森鴎外の「高瀬舟」は、同心の庄兵衛が罪人の喜助から聞いた話としてかかれています。喜助が仕事から帰ると、結核をわずらっていた弟が剃刀で喉笛を切って自殺をはかっていました。喜助は、弟から助からないのだから刃を抜いてくれと依頼され、早く苦痛から解放してやりたいと考えて刃を抜き、弟を死亡させたと話します。 この話は、安楽死を題材としたものです。森鴎外が問題提起した安楽死は、余命いくばくもない末期患者の苦しみがはなはだしく、その苦しみを医療で緩和できない場合に、自然の死期を人為的に早める措置をとることです。
安楽死が認められている国
スイス - 1942年 アメリカ(オレゴン州) - 1994年「尊厳死法 (Death with Dignity Act)」成立 オランダ - 2001年「安楽死法」可決 ベルギー - 2002年「安楽死法」可決 ルクセンブルク - 2008年「安楽死法」可決 アメリカ(ワシントン州、モンタナ州) - 2009年 アメリカ(バーモント州) - 2013年 アメリカ(ニューメキシコ州) - 2014年 アメリカ(カリフォルニア州) - 2015年 カナダ - 2016年
今後の日本の安楽死
死の権利が叫ばれている昨今、日本では日本尊厳死協会など「安楽死」や「尊厳死」に関する議論は巷では高まっているが、政府は法整備に重い腰を上げようとしない。 しかし、日本は世界でも類を見ない高齢者が25%を超えた超高齢社会である。しかも、医療費抑制のため、在宅療養を推進している現状で、老々介護の悲しい結末を耳にしない日はない。国民にだけこのような悲惨な結末を迎える可能性を強いて、精神的、肉体的、金銭的負担を押しつけ、最後の尊厳を保つ権利の法整備は放置している。近代国家として欠陥国家ともいえる無責任体質である。 法的議論の土台を早急に作るべきであろう。
参考文献、引用
船山泰範(2002)図解雑学 刑法
日本の安楽死の現状 www.eonet.ne.jp/~osake/smpzatubanashi/anrakushi.html