9.11事件17

出典: Jinkawiki

2019年1月18日 (金) 11:14 の版; 最新版を表示
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イラク戦争の母

何もかもむちゃくちゃにしたイラク戦争のことを、改選前、サッダーム・フセインは「すべての戦いの母なる戦争」と呼んだ。そんなすべての災厄の元凶には、さらにそれを引き起こした2001年の米国同時多発テロ事件、通称9・11事件である。 民主主義の輸出のためには軍事的手段も辞さない、という発想から、予防攻撃や軍事的制裁を志向していったが、それが国民的支持を得、アメリカの安全保障観の転換をもたらしたのは、9・11米軍同時多発テロ事件に他ならない。アメリカと世界にショックをもたらしたこの事件は、なぜ、どのように起きたのか。

9.11ショック

2001年9月11日、ニューヨークでは朝のニュース番組が放映されているところだった。最初のカメラがとらえたのは、アメリカの世界経済における位置づけを象徴するかのごとくそびえたつ世界貿易センタービルのひとつに、飛行機が突っ込むシーンであった。最初は事故だと思われたが、その十数分後に、もう一機が残されたセンタービルに突っ込んだ時、テロ攻撃だと気づいた。その半時間ほど後には、もう一機がワシントンで国防総省ビルに突っ込んだ。ハイジャックされた飛行機は全部で4機、ホワイトハウスも攻撃されたが、それは失敗した。この同時攻撃によってセンタービルは南北両方の棟が完全に崩れ落ち、死者は約3000人に上回るなど、アメリカが被った最大のテロ被害となった。

事件を起こしたのは

事件を起こしたのは、FBI(連邦捜査局)ではすぐさま犯人が特定された。正式発表には2週間を要したが、実行犯は全員で19人、うち15人がサウディアラビア、2人がアラブ首長国連邦、1人がレバノン、1人がエジプト人だった。唯一のエジプト人のムハンマド・アタは、最初のセンタービルに突っ込んだリーダー格の犯人で、カイロ大を優秀な成績で卒業した後、ドイツのハンブルク工科大学で都市計画を学んだエリートだった。彼らはアメリカ国内で航空機操縦のトレーニングを積み、準備万端で2001年9月11日に備えていた。 そして事件発生から数時間後には、米軍家安全保障局は事件の背景にウサーマ・ビン・ラーディンがいると確信した。実行犯たちはアルカーイダのメンバーであり、アフガニスタンに拠点をもつアルカーイダと、その首謀者であるビン・ラーディンによって発案されたものと判断したのである。 米政府は、アフガニスタンに対してビン・ラーディンの引き渡しを要求したが、アフガニスタンのターリバーン政権はこれを拒否した。

90年代におけるビン・ラーディンの反米運動

ビン・ラーディンとその組織アルカーイダの名が、すぐに挙がった理由として、その数年前からビン・ラーディンが、特にアメリカの施設を狙った攻撃を強めていたからである。なぜ、反米活動を開始したのか。その原因は、1991年の湾岸戦争である。クウェートの近隣諸国で同様に君主制をとるアラブの国々は、クウェート支持、反イラクに回ったのである。

短い戦争と泥沼の戦後

ブッシュ大統領が選択した戦争は、従来の戦争とは様相を異にしていた。事件から9日後の9月20日、ブッシュ大統領は全米国民にむけて会議で演説を行った。その内容は、アメリカは世界中のすべての「テロリスト」を追いかけて戦争をしてまわる、という宣言であった。そして「テロリストをかくまっている」とみなされた国や組織は、自動的にアメリカの敵とみなされることになった。これはアメリカがかつて体験したことのない戦争であり、「グローバルな対テロ戦争」と名付けられた。 この事件後、ビン・ラーディンとアルカーイダに報道攻撃の照準を合わせたアメリカは、わずか40日足らずでターリバーン政権の打倒に成功。簡単にできた軍事力による政権交代が、ブッシュ政権に、イラクでも簡単にできると思わせたのであろう。だが、アフガニスタンでもイラクでも、実際の戦闘期間は短かったが、その後の戦後処理に長い年月をかけざるを得ない結果となった。ブッシュ政権に続いたオバマ政権も、就任当時アフガニスタンからの米軍撤退を謳ったが、撤退どころかドローンによる攻撃を大幅にスケールアップするなど、その関与はさらに深まっていくことになった。


参考文献 酒井啓子(2018)『9・11後の現代史』株式会社講談社


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