文化戦争

出典: Jinkawiki

2019年1月19日 (土) 23:36 の版; 最新版を表示
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アメリカ社会に常に潜在的に存在している文化的・宗教的価値観の対立が、ときに顕在化して政治の場にあふれ出たことは歴史上何度かあった。中でも特にアメリカ人の社会生活に重大な結果をもたらしたという意味で銘記されるのは、1919年の全国禁酒の法制化をめぐる争いだった。だが、この闘争も、対立の次元は飲酒文化の是非という一点に絞られていた。これに対して今日の「文化戦争」の特徴は、中絶、同性愛、死刑、銃規制など価値に関わるさまざまな争点を含み、しかもそれらの争点ごとに対立し合うグループが宗教的・道徳的価値観の擁護派と、個人の自由や権利を優先させる世俗派という二つの陣営に編成されて対峙し、闘っていることである。 <対抗文化の出現> 1960年代のアメリカ社会には現状に異議申し立てを行い、その変革を求める各種の運動が噴出し、この国の政治や文化は稀にみる激動を経験した。まず50年代後半から、人種差別制度の残る南部で黒人がその撤廃を求める運動(公民権運動)に立ち上がり、60年代には全米の関心を集めて政治を動かす一大社会運動に発展した。他方白人社会でも、60年代に入ると大都市の若者の間で、物質的に豊かな「管理社会」の文化や生活様式に反抗して新しい自由な生き方を求める運動が始まり、さらにより政治的な学生の間に既成の体制を批判しベトナム戦争に抗議する運動が広がった。60年代末には各種の急進的な運動の波がアメリカ社会を揺るがし、一時は「文化革命」が始まったような様相を呈した。さらに70年代に入ると女性解放運動、環境保護運動、企業告発型の消費者運動など、若者の運動から刺激を受けた新しい価値観に基づく市民運動が広がった。これらの運動に参加した人々が抱いた個人の自由と権利を最大限主張する思想やそれに基づく新しい生き方の実践は、主流の文化に対する「対抗文化」(カウンター・カルチャー)と称された。またその主義主張から「権利基盤のリベラリズム」、あるいわ経済に重きを置いていたニューディール・リベラリズムと区別して「文化的リベラリズム」とも呼ばれた。対抗文化は一部の中上層市民にインパクトを与えたことなどを通して、既成の体制に一定のインパクトを与えた。対抗文化の広がりは70年代中頃には止まり、その文化革命としての勢いは衰えた。問題は対抗文化の出現と発展が、文化的保守主義者や信仰心の厚いキリスト教徒の強い反発と巻き返しを呼び起こしたことである。 H.N:コリア


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