福祉国家
出典: Jinkawiki
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政府が積極的な社会保障の整備と完全雇用政策の推進によって、国民の生活の安定と福祉の増進を図る国家体制。
1 福祉国家の起源
資本主義成立期における、貧困者の救済・取り締まりを目的とした救貧法にまでさかのぼる。一般的には19世紀後半以降に形成、20世紀に確立されたとされている。世界大恐慌の戦前期に土台・骨格が出来上がり、戦後とくに高度経済成長期に本格的に発展。
2 福祉国家の分類
■自由主義型 国家は民間営利保険など市場を通じての私的福祉システムを奨励。 公的福祉は貧困者を主な対象とし、その給付水準は低く、給付資格は資力調査を行うなど厳格。社会保障支出は総じて少なくなり、給付を受けるものと受けない者の間に溝が生じやすい。このタイプは、労働運動が弱くて福祉国家推進の主力となっていない国で生まれる。
代表国/アメリカ、カナダ、オーストラリア
■社会民主主義型 公的福祉は、社会権にもとづき普遍主義的に編成。つまり、貧困者向けの最低限のニーズにもとづく平等ではなく、すべての市民を対象として高水準での平等化がめざされている。福祉における民間企業の比重は低い。社会保障支出は多くなり、その財源確保のため税負担は重くなる。このタイプは、労働運動が強力で福祉国家の推進役となっている国で形成される。
代表国/スウェーデン、ノルウェー
■保守主義型 公的福祉は、教会などの中間団体が供給できないような福祉だけを提供すべきだという考え方。職業別・地位別に組織化された社会保険制度が分立している。福祉の目的が現在の身分・地位の格差を維持することにおかれている。民間保険の役割は小さく、社会保障支出も多い。
代表国/オーストリア、フランス、ドイツ、イタリア
この分類のなかに日本を位置づけるとしたら、
公的福祉の果す役割の小ささ(社会保障支出の少なさ、税・福祉による再分配効果の低さ) → 自由主義型
福祉における家族の役割の大きさ、職業別・地位別の社会保険の分立 → 保守主義型
3 日本と北欧諸国の社会福祉の状況
世界のさまざまな国々の生活レベルを比較するために、国連開発計画(UNDP)が人間開発指数(HDI:human development index)を開発した。これは生活レベルの違いをまとめたもので、国民所得、平均余命、教育水準を測定基準としている。この指数を用いてUNDPは点数をつけ、それによって国々をランク付けしています。この指数でも日本と北欧諸国は上位に位置し、日本は9位、北欧諸国はノルウェー1位、スウェーデン2位、その他の国々も14位までに位置する。 一人当たりのGDPは、日本は7位、ノルウェー2位デンマークが5位である。
気になったのが、GEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)である。GMEとは、女性が積極的に経済界や政治活動に参加し、意思決定に参加できるかどうかを測るもの。HDIが人間の能力の拡大に焦点を当てているのに対して、GEMは、そのような能力を活用し、人生のあらゆる機会を活用できるかどうかに焦点を当てている。具体的には、女性の所得、専門職・技術職に占める女性割合、上級行政職・管理職に占める女性割合、国会議員に占める女性割合を用いて算出している。 日本と北欧諸国をGMEで比べると、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位スウェーデン、4位デンマーク、5位フィンランドと並ぶ中、日本は44位である。確かに思えば、専門職、技術職、上級行政職、管理職、国会議員の女性はまだ少ない。
4 経済危機と福祉国家
・福祉国家に対する批判
福祉国家の下では、企業は重い税・社会保険料負担やさまざまな規則によって活力を失う、労働者は手厚い保護を受けて勤労意欲をなくすのではないか。 福祉国家に対する批判が大きくなったのは石油危機以後(1973) 景気悪化 ― 税収入減少、失業給付、不況対策のための公共投資など福祉支出大。 主に自由主義型の福祉国家の国において福祉国家批判が強く起こった。自由主義型の国では、社会保障支出、負担がなお低い水準にあるにもかかわらず、福祉の重点が貧困救済の公的扶助におかれ、その便益受けるのが少数の貧困層であるために、福祉国家批判が中間層を中心として多数派を形成しやすくなったからである。 これに対して社会民主主義の国では、社会民主主義の国では、社会保障支出や負担が相当大きいにもかかわらず、福祉政策が中間層を含めすべての市民を対象としているため、福祉国家への根本的な政策は生じにくくなっていた。
参考HP http://www.japan-india.jp/katsudou/benkyoukai20030601_3.htm