キリスト教12
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
目次 |
キリスト教の前身となったユダヤ教とは
イスラエルの民により信仰されていた宗教である。神ヤハウェを唯一神とする一神教。特徴は奴隷や寄留者などのよそ者に対して配慮がある事だ。それは信仰しているイスラエルの民が、同じ境遇を経験していた低社会層の人々から成るとされるからだ。主な福祉(と言うよりも配慮)としては、7年に一度の安息年の収穫、畑や果物の1部を刈り取られずに残されたもの、落穂に限り、「貧しい者、寄留者、孤児、寡婦」は他人の土地の食料を収穫することを許されることなどがある。ユダヤ教は律法という教えを厳格に守ることが求められていたが、その解釈には幅があった。この解釈の違いにより宗教が分裂していった。その一つがキリスト教である。
キリスト教の簡単な説明
キリスト教の特徴としては、人は生まれながらにして罪深いと考える原罪思想がある。つまり人間は神が与えてくれた律法を守ることは出来ない、律法を実行することは自分が罪深いことを自覚するだけであるとした。この罪の自覚、自己の否定がキリスト教では大切なのだ。その後、人々は神に喜ばれる存在になるために他者を救済するといった行動を取るようになる。 先ほどユダヤ教は、貧しい者などに福祉的配慮していたとしたが、貧しさゆえに律法を守れない人を差別していた。また、病人や障害者に対しては律法を守れなかった罪だとされ、穢れた存在だと差別されていた。しかし、イエスは全ての貧しい者は平等に救済すべきだと考えた。もっと言えば、富裕者を否定し貧困者を肯定する考えを持っていた。律法では罪や穢れとされていた病人や障害者こそ神の愛による許しが必要であるとした。新約聖書では、 「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。私が来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである」(新約聖書マルコによる福音書二章十七節65年~70年) となっている。
キリスト教の福祉とは
キリスト教の福祉として有名なのは異人宿泊所(クセノドケイオン)という福祉施設だ。異人宿泊所は、貧しい人が身体を休めることができ、食事を与えられる施設である。また、病院の役割もあった。これは他の宗教には無い発想である。これまでほかの宗教はユダヤ教しか取上げていなかったが、その他の宗教においてキリスト教との違いは貧しい人や病人に援助をするという発想があるかないかという点がある。この考えには、同じ共同体のためにというものではなく自己の救済のために関係のない他者を救うという性質がある。また、マトラトリと呼ばれる救済名簿が作成され救済対象になる貧しい者をより明確化させた。マトラトリが作られていたころは、労働可能な貧困者より病人や障害を持つ者がより好まれていた。このような救済を行うにはもちろん莫大なお金がかかる。その資金源は、信者からの援助金などもあるがもう一つ大きな援助があった。それは、国家である。今まで国はキリスト教を、磔になった罪人を神と崇める犯罪集団と見なし弾圧していた。しかし、国の社会情勢が不安定になりキリスト教を認めることになったのだ。3世紀頃のローマでは貧者と富者の差が広がり階層化した都市国家は秩序が保てなくなった。そこで、超越的な神を媒介にすることで身分の違いなどを乗り越え秩序を保とうとしたのだ。このようにして国に認められたキリスト教は、教会の土地税を大幅に免除し、聖職者は人的税や強制奉仕を免除された。この結果、特権を得たキリスト教は組織として大きくなり国の国教となっていった。
参考文献
岩崎晋也(2018)『福祉原理社会はなぜ他者を援助する仕組みを作ってきたのか』有斐閣 矢内原忠雄(2012)『キリスト教入門 中央公論新社 前島誠(2011)『総図解よくわかる聖書とキリスト教』新人物往来社