人道的介入3
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
概要
ある国において、住民に対して大規模に苦痛や死がもたらされているとき、住民たちを支援することである。しかし、その国の同意なしに軍事力を持って介入することも多い。 人道的介入の定義は人によりさまであるが、一般に流通している定義に共通した特徴点は、
①極度の人権侵害あるいは人道に対する罪とさえ呼びうるはなはだしい迫害が起きていること。
②当該国の政府自らがその迫害を行っているか、あるいは住民の間の迫害を止めさせる意思や能力を備えていないこと。
③介入するのは、通常の場合、他の国、あるいは国々であること。なお、「国々」の中には、北太平洋条約機構(NATO)のような軍事同盟も含まれる。
④「介入」は、通常、軍事力を用いた「武力介入」であること。
である。 このように人道的介入には武力を用いた強硬手段という面と、国際人権法の制度的保障という面があり、その合法性や妥当性に関して議論が進められている。
事例
1978年末から79年初頭にかけて、ベトナムがポルポト政権下のカンボジアに軍事進攻した。当時カンボジアはポルポト政権による弾圧で大量の死者が出ていた。そんな中カンボジアと敵対関係にあったベトナムが、78年2月25日、攻撃を開始し、わずか10日ほどでポル・ポト政権を首都プノンペンから追放した。 この問題を審議するために国連安保理が招集され、数日間にわたり討論が続いた。ベトナムの武力行使を非難する声が多かったが、それに対しベトナムは「二戦論」を展開した。ひとつはポルポト政権がベトナム侵略への対抗をした「国境戦争」、もう一つは「ポルポト派による圧制に対するカンプチア人民の革命戦争」である。二つの戦争が同時進行していたと議論立て、ベトナムの軍事侵攻がいわゆる人道的介入ではないと主張したのである。非人道的な状況はカンボジアの民衆によるものであって、ベトナムはそれを支持しているに過ぎない、つまりベトナムにとって今回の行為は「介入」ではなく「正当な攻撃」であるという主張だ。 そのこともあり、この事例に対する評価は奇妙なものとなった。カンボジアの非人道的な状況は何らかの介入を正当化するに足るものとされたが、当事者であるベトナムは「介入」ではなく「正当な攻撃」だと言っている。だが、それを審議した国連安保理では、非人道的な状況であると認めた国は少なくなかったが、それよりも他国の主権尊重・武力不行使・不介入原則を優先する国が大勢を占め、上に挙げた3つの厳守をうたった決議が行われた。しかしソ連の拒否権の行使により採択されずに終わった。
参考サイト
国際関係論の教科書 「人道支援・被災者支援とは何か」http://www2.odn.ne.jp/kamino/kt/ren_dao_zhi_yuan.html
参考文献
最上敏樹「人道的介入 正義の武力行使はあるか」(岩波書店 2001)
澤喜四郎「世界を読む 国際政治経済学入門 改訂版」(成山堂書店 2016)
ハンドルネーム ぱる