表現の自由
出典: Jinkawiki
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表現の自由の確立
明治憲法29条は「法律の範囲内に」おいてという条件をつけて言論・著作・出版・集会・結社を認めるとして表現の自由を定めている。しかし、実際には「法律の範囲内」という言葉が示すように、治安維持法、治安警察法、新聞紙法、出版法などによってさまざまな厳しい制限を加えた。日本国憲法はこうした過去を反省し、集会・結社・および言論・出版その他一切の表現の自由を厚く保障し(21条1項)、どのような制限も許されないとして公権力から干渉や抑制を排除しています。 自分の考え方を他人に伝え、他者の思想、信条を受け入れることは、社会生活を営む人間にとっては不可欠なことであると考えられる。また人々は自分の思想・信条を外部に表明することによって、自分の見解をよりよい方向へと発展させる可能性を手に入れることができる。表現の自由は民主政治を運営していくうえでも重要な権利である。主権者である国民が、政府や地方公共団体など公権力の担当者を批判することもできるため、それを監視する動きがあるからである。もっとも表現の自由は、内心の自由とは異なり、社会とかかわるとを前提としているため、他の人の人権と衝突する可能性がある。その場合、「公共の福祉」の考え方に基づき表現の自由は表現は制約を受けることになるが、制約は必要最小限でなければならない。また、合理的な理由のある制約でないとならない。
検閲の意味
表現の自由が公共の福祉に著しく反する場合には、必要最小限の制約を受けることになる。しかし、検閲という方法による制限はいかなる場合もゆるされていない。憲法はこのことを条文に明記して絶対的に禁止している(21条2項)。検閲とは「行政権が表現の内容を審査し、不当であると認めるときは、その表現行為を禁止すること」だと考えられている。しかし現在も検閲にあたらないかが問題になってる事情がある。例えば、税関による貨物の検査(関税検閲)、教科書検定などである。この二つが憲法に違反しないかという議論がある。関税検閲について。関税定率法21条1項4号は「公安または風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」の輸入を禁止している。関税はこの規定によって、書籍などの輸入に際して、そのつど内容の審査を行っている。審査の結果公安又は風俗を害すべきものと認められた場合は輸入が禁止される。最高裁は、税関検査は事前に発そのものではないため検閲に当たらないと判断している(1984)。教科書は文部科学省の検定に合格しなければ、教科書として出版できないということになっている。(学校教育法21条)文部科学省によれば、教科書は一般図書と違って学校教育の現場で用いるという特殊な性格を持っていること、また検定に不合格となても一般出版物として出版することができるということを理由として教科書検定は検閲には当たらないとしている。判例では検閲をどうとらえるか、検定が検閲に当たるかは未だに議論がなされている。
参考文献
後藤光男編 「図解雑学 憲法」ナツメ社 92-99頁
後藤光男 北原仁編 「プライム法学◆憲法」敬分堂 93-100頁