ドルトンプラン

出典: Jinkawiki

2009年1月16日 (金) 12:07 の版; 最新版を表示
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ドルトンプラン

 アメリカのヘレン・パーカースト(Helen Parkhurst、1885~1973)が創始した教育法。 教科ごとに実験室と呼ぶ資料の整えた部屋を設け、生徒の興味と能力に応じて学習を進める個別学習に特色がある。


発祥

 当時行われていた不安定な方法を廃して、生徒にもっと自由を与え、各教科の学習に適した環境を作り、教授者にはそれぞれ専門家をあてるように学校生活を簡単に改造すること、また生徒にはそれぞれ個人的な問題あることを等しく認めて、遅れたものも優れたものも、それぞれ個別的に進級する機会を与えるのを教育目的としていたパーカーストは恩師スウィフトの『精神発達論』の内容に深い感銘と示唆を受け、スウィフトから「教育的実験室」(Educational Laboratory)という概念を学び、その教育観に基づき自らの教育実践を客観化し、プランをまとめた。1914年にはモンテッソーリに学ぶためイタリアに留学し、「モンテッソーリ教育法」を学ぶ。この教育法は「子供の自由―すなわち、子どもの本性の個人的自発的発現の発達を許すような自由」という言葉に表現されており子供の自由な自己活動を精神的・身体的発達の基礎とするものであった。パーカーストはこの教育を学び、1919年にパークシャーの障害児学級でこのプランを実施し注目すべき成果をあげた。この成功がドルトンプラン発祥の直接の契機となった。その後、1920年マサチューセッツ州の小都市ドルトンの中等学校において教育計画を実施した。ドルトンプランはこのような経過をたどり実施された。


2つの原理

1.自由の原理

 「生徒が勉強に没頭しているときは、その教科が何であれ、妨害せず、自由に継続させなければならない。なぜなら、興味がわくと精神はいっそう鋭敏になり、いっそう敏活になって、途中で起こるどんな難問題でも克服することができるからである。 また、生徒を自由にして、それぞれに適した速度で知識を習得させなければ、ものごとを徹底して学ばせることはできない。ここで言う自由とは、自分の必要なだけの時間を取ることである。」

2.協同(共働)の原理

 「教育の目的は、個人をして、単に直接所属している集団生活の賢明な参加者とするだけでなく、さらに種々の集団とたえず交流させ、いかなる集団も他と離れては生活できないことを悟らせることである。」  これら2つの原理に関連して、パーカスト女史はさらに、「子どもが課題に立ち向かうときには、ある時間、彼/彼女の興味を惹く問題に、彼の全精力を集中できるようにさせなければならない。そうすれば、より多くの学習ができるだけでなく、さらによりすぐれた学習ができる。ドルトン・プランは、生徒に自分の時間を見積もらせ、それを自分の必要に応じて費やすことを可能にする。」とも述べている。


3つの柱

1、ハウス

 「ハウス(house)」とは、日本で言うホームルームである。ドルトンプランではハウスが日本以上に基本とされ、ハウス・アドバイザー(学級担任)がハウスでの支柱として、もうひとりの親として、つねに子ども達の身辺にいるのである。3年生まではアートやサイエンス、音楽など限られた教科だけだが、4年生になるとすべての教科で専門の先生が教壇に立つ。すべての学年を通じてハウス・アドバイザーは子どもと学校、子どもと他の先生、子どもと親との関係、親と学校との関係をうまくまとめる役目を果たす。

2、アサインメント

 「アサインメント(assignment)」とは「勉強割り当て」という意味で、「宿題」のようなものである。ドルトンプランでは、宿題を通して学習意欲を引き出したいと考えた。これは「自由の原理」の中の時間の使い方を身につけさせるためのものである。  ドルトンプランの成敗はアサインメントのいかんによって定まると言っても過言ではない。よいアサインメントの第一条件は口頭ではなく、明瞭に書いて与えること、そして生徒が到達しなければならないことをはっきりと示しておくことである。そして、生徒自身の立場から編まれたもので、全体を把握することが難しいようなものは絶対に要求してはならない。アサインメントが生徒の精神能力に相当していれば、研究内容を豊富にしたり、その領域を広げたり、能率を高めることができる。また、そのアサインメントが自分のできることだと感じたとき初めて興味がわき、創造的な力が生ずる。 宿題を少ししか与えないことによって多くの子ども達が「もっと宿題が欲しい」と感じ、学習意欲が高まる。また、学年が上がるにつれて宿題の出し方は、短期的なもの(1日15分)から、長期(6週間から8週間分)にまとめて出す方式に変わります。子ども達は約束の日までに宿題を提出しなければならないが、長期分は一日で片付けることは出来ず、自分で時間を上手に使い、計画的に取り組まなくてはならない。両親の役割は「いかに自分の時間を上手に使うか」ということであって、決して宿題を教えることではない。こうして子ども達は、宿題という先生との約束事を、自分の責任で果たすことが求められ、責任感と独立心が育まれていくのである。

3、ラボ(Laboratory)

 ラボとは、実験室(laboratory)を略したもの。理科とか数学とかいろいろな科目のラボには専門の先生がおり、そこで先生たちと子ども達とが一対一で、与えられた宿題をどの様にして調べていくのかを話し合う。特に「自分はこうしたい」という子どもの意見や主体的な姿勢を最大限に尊重し、先生はそれに助言を与える。こうして先生と子ども達との関係が深まれば、教育的に良い効果をもたらすのは勿論のこと、子ども達は積極的に発言し、それに責任を持つようになる。

参考

世界教育学選集「ドルトンプランの教育」 パーカースト 訳:赤井米吉 出版:明治図書出版

http://www.dalton-school.ed.jp/about/plan/(ドルトンスクールHP)


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