センターピボット

出典: Jinkawiki

2009年1月25日 (日) 16:16 の版; 最新版を表示
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センターピボットは、アメリカ合衆国のグレートプレーンズにおける灌漑方法である。

乾燥地域でも大規模に作物を栽培できるよう、地下水をくみ上げ、肥料を混入した後、自走式の散水管に圧送し、平均は半径400m、大きいものは半径1kmにもおよぶ円形農場に水をまく。散水器の周回数は気候や土壌、作物により異なるが、おおよそ一日1~12回程度で、移動速度の速い周辺部の散水量を多くして、散水の不均一を防いでいる。

この方法は、アメリカ合衆国だけでなく、サウジアラビアなどの、産油国でも使用されている。 センターピボット農法によって、サハラ砂漠でも作物を育てることが出来る。

乾燥地帯でも作物を育てることが出来るセンターピボット農法は、一見してとても有効な方法に見える。 しかし、現在この方法には大きな問題が発生してきつつある。

水資源の枯渇

まず第一、に水資源の枯渇が考えられる。

グレートプレーンズで使われている地下水は、オガララ帯水層と呼ばれる地下水層帯からくみ上げられている。しかし、現在はその地下水が全体の1/3もなくなっているという報告がある。これは、降雨がしみ込んで地下水を涵養する速度よりももっと速い、自然に涵養される速度の何倍もの速度で水を吸い上げているからである。「1秒間にオガララ帯水層の水が25mプール1つ分、380立方m減少しています」と語る学者もいる。この勢いで水を使い続けると、70メートルの帯水層は数十年で汲み尽くしてしまう。すでに、カンザス州などでは、水不足から離農する農家が出始めているが、こうした場所はすぐに円形のまま砂漠化してしまう。

塩害

乾燥地では水分が浸透・蒸発しやすい。そのため、安易な水分散布を行うと、地下深く存在していた塩分が水に溶けて塩水になる。センターピボット農法は、大量の地下水を散布するので直接作物に塩害は起こらないが、散布した水が土壌のミネラル塩層を透過しているので、排水には塩分が増える。排水が河川や湖、地下水層に流れ込み、排水が混じった水には土壌から溶けた塩分がすべて含まれており塩分濃度が上がってしまう。一般的に農作物は塩分の多い環境では生きていくことができない。塩害が発生すると、その土地での農作物の育成が妨げられ農業的な価値を失う。

水質汚染

センターピボット農法によって散布される水には農業の肥料、農薬が混入されている。その水が表層から帯水層へ浸透する水の中に、農業の肥料、農薬が混入し、健康への被害が心配される。

オガララ帯水層の水は飲料水としても用いられているので、排水がオガララ帯水層に浸透してしまえば国民の飲み水を危険にさらしてしまう。


米国は世界一の農業国であり、世界の穀物の16%生産し、世界の穀物貿易に占める米国の割合は、穀物全体で31%にものぼる。日本は食糧輸入大国であり、財務省貿易統計によれば、米国は日本の食糧輸入額の約25%を占める最大の輸入相手国である。しかし、灌漑農業の危機によって、米国での穀物生産が落ち込むことにでもなれば、食糧の多くを米国からの輸入に頼っている日本が大きな影響を受けることになるだけでなく、世界的な食糧事情に悪影響を及ぼすことになるだろう。



参考:週間エコノミスト 9月20日号(毎日新聞社)

http://www.kankyo-news.co.jp/ps/qn/guest/news/showbody.cgi?CCODE=59&NCODE=66


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