世界貿易機関(WTO)
出典: Jinkawiki
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世界貿易機関(WTO:World Trade Organization)は、貿易上の国際紛争を解決し、自由貿易を推進することを目的とした国際機関である。従来のGATTの役割を継承・発展させる形で1995年に設立した。
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GATT
GATTとは関税及び貿易に関する一般協定(General Agreement on Tariffs and Trade)である。GATTはWTO設立以前、1947年調印、1948年に発足した多国間協定であり、これは第二次世界大戦後に戦前の各国ブロック経済への反省から生まれている。つまり主要国が輸出市場を囲い込んだあまり、外交関係を悪化させ、戦争への道を開いたという認識から、今後は関税を下げ、自由に貿易が行われる世界を目指すことを趣旨としている。
GATTは数回にわたる多国間の交渉を通じて各国関税の大幅な引き下げを実現するとともに、輸入数量制限などの軽減についても大きな成果をおさめた。
GATTからWTOへ
GATTは協定であったため、協定加盟国間で貿易をめぐる紛争が生じても、判定を下し、制裁(ペナルティ)を課す機能がなかなかはたらかなかった。そこで設立されたのがWTOである。WTOはGATTの合意内容を引き継ぐ形で1995年に正式な国際機関として成立した機関である。WTOでは、各国間で貿易政策上の争いが生じた場合における処理手続きや機能(裁判所的制裁機能も付与)についての強化を図るなど、GATTの弱かった機能が強められた。また、金融や通信などのサービス貿易、技術特許に代表される知的所有権など、商品の貿易以外の分野でのルールづくりが進められた。
ただし、WTOの設立後、産業やサービス分野での自由化などの交渉は難航している。それでも経済のグローバル化は急速に進行しているため、貿易の自由化への取り組みの重要性はますます高まっている。
基本原則
・自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)
・無差別(最恵国待遇、内国民待遇)
・多角的通商体制
多国間主義
WTOは多国間主義で自由貿易に向けての国際ルールを確立しようと設立されている。WTOでは、各国が一堂に会し、貿易のルールを交渉する場を設けており、これはラウンド(多角的貿易交渉)といわれる。
WTOでは、多国間の立場に立って、貿易紛争国同士の問題を解決するのが原則となっている。もし2国間同士で問題に取り組んだ場合、とかく政治的に強い国の主張が通ってしまい、弱い国が不利な立場に置かれたり、2国間だけの事情にもとづいた偏狭なルールが確立されてしまう恐れがある。しかし、多国間の原則に従うことで他の第3国にも適用する、国際的かつ公平な貿易ルールの確立が期待できるようになっている。
参考
西野武彦 「目からウロコの経済のしくみ」 PHP
神樹兵輔 著 「面白いほどよくわかる最新経済のしくみ」 日本文芸社
南山大学経済学部 編著 「大人になるための経済学入門」 NHK出版
池田美智子 「ガットからWTOへ‐貿易摩擦の現代史」 ちくま新書