フィンランドの教師

出典: Jinkawiki

2009年1月26日 (月) 13:23 の版; 最新版を表示
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目次

教師

小学生を6年間教える学級担任と、中等教育段階を教える教科担任に分かれている。そのほか、特別支援教師、補助教員などがいる。教師と特別支援教師は修士号を取得する必要がある。

日本のような自治体の教員採用試験がない。 大学で教職課程を修了していれば、教師の資格はありとされ、地域は関係なく自由に就職できる。 しかし教職課程を受講するためには厳しい審査を通過しなければならない。 知識だけでなく、教師にふさわしいかどうか、人間性を判断する適性検査が行われ、そこに受かった者だけが教職課程を受講できる。 実際に教職課程をとる権利を得るのは狭き門だ。

教職課程を受けるには、修士論文以外の専門科目を修了していることが前提である。 何かしらの教育学を勉強しているとプラスである。 書類審査を経て適性検査となる。 個人面接から始まる。現役の学校の教師と、大学で教育学を教える講師が二人ひと組となって、一人ひとりを面接する。 話の内容は、経歴や勉強に関することから最近話題の教育問題までいろいろだ。 そのあと、グループディスカッションとなる。 テーマについて5人のグループで議論する。(たとえば、「他国から移民してきたこどもたちの学校教育に、どの程度その親たちを参加させるべきか」) 内容よりも、どのように議論に参加していたか、が審査対象である。 人の意見に耳を傾けることができるか、柔軟に考えられるか、社交性、協調性、さまざまな教師としての資質が問われる。 書類審査に受かった半分が落とされる。 事実一度では合格はできず、何年か挑戦し、ようやく入れる人が多いようだ。

教職課程は中・高校の科目教師の場合一年かかり、理論のほか、授業観察、教育実習も含まれる。 少人数のグループで行うことが多い。 教え方や教材研究、使い方について教師や研究者から授業を受ける。 教職課程の一年間は他の授業をとることが困難になるほど、課題に授業参観、授業計画と毎日忙しくなる。

小学校の場合、はじめから小学校教員養成学部に入学しなければならない。 入学条件や試験内容はもっと厳しくなる。 大学の小学校教員養成学部の合格率は一割以下である。 高校を卒業してすぐに学部に入学するのは難しく、学校やこどもにかかわる仕事をして経験を積んだり、教育関連の勉強を自主的にしたりして、二度三度と入学試験を受ける学生が多い。 実際、合格して勉強している学生は年齢がさまざまである。 入って一年目から教育実習が組み込まれていて、毎年卒業するまでに教育実習が定期的に行われる。

フィンランドでは高校生のなりたい職業上位に選ばれるほど、人気がある。地位の高さのイメージは、日本で言えば医師くらいであるそうだ。給料は一般の事務職より少し上と決して多くはないが、多くの尊敬が寄せられる。

フィンランドには「教師は国民のろうそく、暗闇に明かりを照らし人々を導いていく」という言葉がある。


尊敬される理由

良い国を作る土台には教育があり、教育をよりよくするのは教師だと信じられているから。また、教師一人にひとりにどう教えるかの権限を与えられているため、大きな自由がある。その反面、教育のプロとしての力量が厳しく問われる責任の思い存在である。



一クラス24人

教師が受け持つクラスの人数は、最大で24人ほどである。習熟度別クラスは1985年に廃止されたため、同じクラスで学力の違う生徒を教えていく。

問題児が出た場合には、校長、特別支援教師、ソーシャルワーカー、カウンセラー、担任の教師5人で対応することになっている。また障害を持つこども、特別なニーズを必要とする子どもに関しても、特別学校を廃止しながら、一部の総合制学校内特別学級に対象者を移しつつある。



第二の親

学校ではテストによつ相対評価を行わないため、一人ひとりの成長に合わせた授業を展開していかなくてはならない。教科書を選ぶのも、カリキュラムをどう教えるかも考えるのが教師の仕事である。

しかも、たいていは小学校1年生から6年生まで、同じクラスを担任する。学校間での移動もなく、第二の親のような役割をする。長いスパンで同じ生徒たちと関わるため、一人ひとりの学力形成や人格形成をゆったりと見守ることができる。



子どもが自ら学ぶ

教師は、学校教育で基本となる考えである「子どもが自ら学ぶ」を支援する立場をとる。授業時間は5500時間(7~14歳児の総標準授業時間数)(日本は6000時間を越えている。授業時間数と学力は比例しない、といえる)と世界で最低時間数である。

テストの点数や受験で合格するために勉強するのではなく、将来自分がどうなりたいかを見据えて、実生活で役立つ応用力や思考力、判断力などを養う教育である。

ベースには「知識というのは、自分が学びたいと思うから手に入るもの」という社会構成主義の考え方がある。学習には生徒の積極性が重要で、それを保障するのは教える行為ではなく、学ぶという行為に委ねられているという考え方。

フィンランドの教育は「全ての知識を一律に覚えることはない」と考えられている。わからないことがあれば、その時に自分で調べて理解できるようになればよい。調べて考えられる能力を身に付けるほうが重要視されている。



フィンランドの教師

勤務時間は午前8時から午後4時まで。授業が終わったらすぐに帰るようだ。12時で帰る教師もいる。

授業以外は全て研修時間となり、どこで研究を行ってもよいとされている。

教員になるには、大学に5年間在籍し、修士号を取る必要がある。教員養成系の学部に入学できるのは、希望者のわずか1割程度である。筆記試験の他、適性検査があり、柔軟性や人の話を聞く能力など教師としての資質が厳しく問われる。 入学した大学では、理論と実践の両面を養成し、50回を超える実習期間を経て、教師になれる数はさらに絞られる。


参考文献

あたらしい教科書 北欧 伊藤高 2007

フィンランド 豊かさのメソッド 集英社新書 堀内都喜子 2008


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