ビネー式知能検査
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
ビネー式知能検査とは・・・
ビネー式知能検査は、1905年にフランスのアルフレッド・ビネー(Alfred Binet, 1857-1911)とビネーの友人の医師シモンによって開発された初めての知能検査である。 ビネー式知能検査は、テストを受けた児童が『解答できた問題の難易度』を判定することで、知能面の精神年齢(MA, Mental Age)を 測定できるとするものである。 最初は、30個の問題を易しい問題から難しい問題に順番に並べた簡単なものであった。1908年版と1911年版に 改訂版が開発された。 1908年版から児童の知能水準を相対的に把握するための精神年齢(Mental Age:MA)の概念を知能検査に取り入れるようになる。 1911年版のビネー式知能検査は54問から成り立ち、3~15歳までの精神年齢を判定する年齢尺度を備えるようになった。 その1911年版を改訂してアメリカ人用に標準化したのが、スタンフォード大学のL.M.ターマンであり、1916年にIQ(Intelligence Quotient, 知能指数)で検査結果を表示する『スタンフォード・ビネー式知能検査』の作成に成功した。 何度か改訂版が開発されたが、正解することが出来た問題の難易度によって知能の発達水準を表す精神年齢を測定するという 基本的な方法は変わらない。
もとは、フランスの文部省付属の専門機関『異常児問題研究委員会』の嘱託によって開発されたビネー式知能検査は、 普通教育の授業についていけない学業不振児童(精神遅滞・精神薄弱の児童)を判別する為の客観的な知能測定法であった。
精神年齢とは・・・
精神年齢とは、知能発達の水準を相対的に測定する為の概念で『当該年齢水準の問題の正当』によって決定される年齢である。 同じ教育文化圏に所属するある年齢集団(例えば10歳の集団)の子ども達に問題を解かせて、50~75%の子どもが正しく 回答できる問題を『当該年齢(10歳)の知能水準を測定できる問題』とする。そして、その問題に正解できた児童の精神年齢は、 その問題が示す当該年齢(10歳)となる。
知的障害は精神遅滞とも呼ばれるが、これは知能面の精神機能の発達が平均的な児童よりも遅れている(遅滞している)という意味である。 精神遅滞児童を選別して発達段階に合わせた特殊教育を行うことを目的にしていたビネー式知能検査では、相対的な精神年齢を測定することで その児童に最適の教育内容を与える役割を果たすことになる。
ビネーについて・・・
フランスのアルフレッド・ビネー(Alfred Binet, 1857-1911)はフランス文部省付属の委員会に所属する前に、 自分の二人の娘を観察対象にして分析した科学的な知能研究『知能の実験的研究』(1903)という画期的な知能研究の大著を発表していた。 この著作は、12年間にも及ぶ娘たちの長期的な行動観察を通して作成されたという意味では、稀有な関与的観察法の研究書であると言えるだろう。
ビネーは初め『知能』の考え方を、生得的素質によって規定される『判断力』と同義な能力と考えたが、実証的な知能研究を進めていく中で 知能を判断力のみで定義することは不可能であると気づいた。そこで、知能を構成する要素として『判断力・理解力・批判力・方向付け・ 工夫する力』を想定するようになった。 現在では、知能とは何であるかについて一義的にずばり定義することは困難であると考えられるようになっているが、敢えて知能を定義する ならば『学習能力・記憶能力としての結晶性知能』と『問題解決能力・環境適応能力としての流動性知能』の複合体を知能の一般的理解として 定義できるだろう。 結晶性知能とは、意識的な学習行動の結果としての知識・技術を蓄えるストックとしての知能であり、 流動性知能とは、変動する環境や所与の課題にその場その場で対応して問題解決するフローとしての知能である。