地雷
出典: Jinkawiki
一般に、地中に埋められており、踏むと爆発して人や車両などに被害を与える兵器の総称。1970年代からはヘリコプターや火砲等で空中から散布する方法も出現した。金属またはプラスチック容器に爆薬を詰め、信管を装着したもので、小型の人間殺傷用と、大型の車両破壊用とがある。適当な間隔で幅広い地域に多数、地中に埋めておき、人または車両が踏むと信管が作動して爆発する仕組みになっている。地雷の種類は360種類以上といわれており、その生産国は55ヵ国以上といわれる。埋設量は1900万個超。これを世界の人口と照らし合わせて考えると、約50人に1個の割合で地雷が埋設されていることになる。
地雷は「悪魔の兵器」あるいは「貧者の兵器」といった異名を持つ。 「悪魔の兵器」と呼ばれる由縁は、地雷が目に見えず、発見しにくく、どこに埋められたかもわからず、制御もきかず、半永久的に無差別に人を狙い続けるところにあり、特に①残存性②無差別性③残虐性という3点は、地雷を特殊な兵器として位置づける理由となっている。①:地雷は通常の兵器とは異なり、「埋設」という行為と「爆発」という事象の間に、年単位の時間差・タイムラグがある。そのため、戦争中は軍事施設や兵士を対象に合法的に埋設がなされたとしても、戦争終結後に放置されることによって、その残存性ゆえ民間人に甚大な被害を引き起こすという最悪のパターンを招いてしまう。地雷の残存性は50年以上前に終結した第二次世界大戦の(負の)遺産を見れば明らかである。リビアではこの大戦時に埋設された地雷のために、耕作地の27%が使用不可能の状況にあるという。またポーランドでも1500万個の地雷を除去したにもかかわらず、70年後頃までに4000人が死亡、9000人が負傷したという。国連調べ(長、1997)。②:地雷は攻撃対象を絞って威力を発揮する他の兵器とは異なり、一定の力が加えた相手を対象とみなして作動し、その威力を発揮する。つまり、地雷を作動させるのは被害者自身であり、その「被害者」について、地雷は兵士・民間人・動物を問わない。③地雷は殺すことよりも怪我をさせることを目的に開発された兵器である。対人地雷の火薬の量は、成人男子の手足を吹き飛ばす程度に抑えられている。戦略上、敵対勢力の兵士を殺すより傷つける方が有効だとされるからだ。負傷者が出た場合、その援助、病院までの移送、治療、リハビリ、その後の生活保障と、長期に渡り、人的・経済的負担を課し、敵対勢力を消耗させることが可能となる。また、仲間の事故や負傷者を目撃した兵士の精神的打撃も計算に入れられている。 「貧者の兵器」については、地雷の手軽さ、安価な点からの命名である(地雷1個あたりの単価は3~10ドル)。
地雷に関して、広く流布した話に「小型地雷に子供の興味を引くぬいぐるみやおもちゃのようなものを取り付けてばら撒き、触れた子供の手足や生命を奪う」とするものがあるが、事実としては確認されていない。アフガニスタンでソ連軍からヘリコプターからばら撒いたプラスチック製空中散布方地雷「PFM-1」(俗称「蝶々形地雷」「緑のオウム」)の形状が、子どものおもちゃのように見えることから広まった噂では、との見方もあるが、「PFM-1」がそのような形をしているのは単に機能上の理由からである(羽にたとえられるプラスチック製の本体が一定の力で歪むと、中の液状火薬が混じりあい、爆発する仕組み)。
地雷は地域紛争で多く使われ、紛争終結後も放置された地雷で住民や難民が被害を受けるケースが多発して人道問題に発展、1997年にはNGOの「地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)」がノーベル平和賞を受賞した。また同年12月に、カナダのオタワで「対人地雷全面禁止条約」の調印式が行われ、日本など121ヵ国が署名した(米、ロシア、中国は未署名)。同条約は、対人地雷の開発・保有・使用等を全面禁止し、発行後180日以内に国連事務総長に保有対人地雷の数量・所在地等を報告すること、4年ですべてを廃棄し、埋設地雷も10年以内に撤去することを義務付けている。
藤井 秀樹 2004 カンボジアと子どもたちの戦後 地雷・貧困・エイズ・人身売買 丹精社
長 有紀枝 1997 地雷問題ハンドブック 自由国民社
岩波ブックレットNo.597 地雷と人間 一人ひとりにできること 地雷廃絶日本キャンペーン編
地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL) www.jcbl-ngo.org
ピースボート www.peaceboat.org/index_j.html
テラ・ルネッサンス www.terra-r.jp