ゲティスバーグ演説

出典: Jinkawiki

2009年1月29日 (木) 23:20 の版; 最新版を表示
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ゲティスバーグ演説(ゲティスバーグえんぜつ、The Gettysburg Address)とは、1863年11月19日、ペンシルバニア州ゲティスバーグにある国立戦没者墓地の奉献式において、アメリカ合衆国大統領エイブラハム・リンカーンが行った演説である。アメリカ史の中では、独立宣言、合衆国憲法と並んで特別な位置を占める演説となっている。

「...人民の、人民による、人民のための政治... (...government of the people, by the people, for the people...)」という一節が有名。


内容

(英文) Four score and seven years ago our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal. Now we are engaged in a great civil war, testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure. We are met on a great battle-field of that war. We have come to dedicate a portion of that field, as a final resting place for those who here gave their lives that that nation might live. It is altogether fitting and proper that we should do this. But, in a larger sense, we can not dedicate -- we can not consecrate -- we can not hallow -- this ground. The brave men, living and dead, who struggled here, have consecrated it, far above our poor power to add or detract. The world will little note, nor long remember what we say here, but it can never forget what they did here. It is for us the living, rather, to be dedicated here to the unfinished work which they who fought here have thus far so nobly advanced. It is rather for us to be here dedicated to the great task remaining before us -- that from these honored dead we take increased devotion to that cause for which they gave the last full measure of devotion -- that we here highly resolve that these dead shall not have died in vain -- that this nation, under God, shall have a new birth of freedom -- and that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.

(日本語訳) 4世代(*1)と7年前に私たちの祖先たちはこの大陸に、自由の理念から生まれ、全ての人が平等に創られているという命題に捧げられた一つの新しい国を生み出しました。今、私たちは大きな内戦の最中にあります。そしてこの内戦は、その国が、あるいはそのような理念から生まれ、そのような命題に捧げられたいかなる国もが、長い間持ちこたえられるものかどうかという試練なのです。私達は、その戦争の大戦場で一堂に会しています。わたしたちがやってきたのは、その国が生き延びるようここで自分の生命を犠牲にした人々に、最後の安息の地としてその戦場の一部を捧げるためです。私達がそうするのは、全く適切でありふさわしいことです。しかしより広い意味でいえば、私達はこの大地を捧げられない-神聖化しえない-清められないのです。ここで奮闘した勇敢な者たちは、生ける者も死せる者たちがすでにここを神聖化してしまい、なにかを足したり取り除いたりするわれわれの貧弱な能力など、それにまったくおよばないものだからです。世界は私達がここで言うことなどほとんど気に留めたないでしょうし、それを長く記憶にとどめることもないでしょう。でも、彼らがここで為したことを決して忘れることができないのです。われわれ生きる者の使命とはむしろ、ここで戦った人々がこれまで気高く前進させた、この未完の仕事に身を捧げることなのです。ここにいるわれわれの使命とはむしろ、かれらが最後の完全な献身を捧げた理念に対し、この名誉ある死者たちから一層の熱意を持って、われわれの前に残された偉大な任務に専念することなのです。その任務とは、あの死者たちの死を無駄にはしないとわれわれがここに固く決意し、この国が神のもとで新しい自由を生み出すことを決意し、そして人々を、人々自身の手によって、人々自身の利害のために統治することを、この地上から消え去さらせはしない、と決意することなのです(*2)。

脚注 (*1) score=20年。適切な用語がないため、ここでは世代を20年と同義として訳した。Four score and seven years ago をまとめて「87年」と訳すのが普通らしいが、原文の感じがでるのではないかと思ったのでこうした。

(*2) government of the people, by the people, for the people. 「人民の、人民による、人民のための政府」と訳すのがふつうなんだが、なんとなく耳あたりはよいのでみんな流してきいてしまう一方で、これがどういう意味かをきちんと考え、説明できる人は少ない。特にいちばん最初の「of the people」の部分。ふつうはみんな、「人民の」というので、「人民が所有する」という意味だと思っている場合がほとんど。そうではなく、これは統治される対象が人民であることを指しているのである。

ゲティスバーグ演説でリンカーンは、「国民 (Citizen)」という言葉を避け、「人民 (People)」という言葉を使用している。これは二つに割れた国家を再び一つに統合することに腐心していたリンカーンが、南部諸州の人々に特に気を使っていたことがその背景にある。リンカーンが訴えかけていたのは、北部アメリカ合衆国の国民でも、南部アメリカ連合国の国民でもなく、分け隔てないすべての人民に他ならなかったのである。「合衆国 (Union)」と言う言葉を避け、「国家 (Nation)」と言っているのも、同じ理由からである。


日本への影響

演説自体が直接影響を及ぼしたというわけではないが、1946年、GHQ最高指令官として第二次世界大戦後の日本占領の指揮を執ったダグラス・マッカーサーは、GHQによる憲法草案前文に、このゲティスバーグ演説の有名な一節を織り込んだ。

Government is a sacred trust of the people, the authority for which is derived from the people, the powers of which are exercised by the representatives of the people, and the benefits of which are enjoyed by the people.

—GHQによる憲法草案前文

この一文がそのまま和訳され、日本国憲法の前文の一部となった。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

—日本国憲法前文(一部)



参考URL http://www.genpaku.org/lincoln/lincoln01.html http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B0%E6%BC%94%E8%AA%AC


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