韓国の受験
出典: Jinkawiki
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韓国では毎年11月に「大学修学能力試験」という、日本のセンター試験に該当するものがある。この「大学修学能力試験」、略して「修能(スヌン)」は、受験生にとっては本試験以上に重要な試験である。この「修能」の出来次第で希望の大学に行けるかどうか、または希望の人生を歩んでいけるかどうかが決まってしまう試験である。この「修学能力試験」は、毎年11月の第1水曜日に行なわれていたが、近年は11月中旬の木曜日に実施されるようになった。この試験終了後に、大学ごとのいわゆる二次試験がある大学もあるが、それは面接や小論文などがほとんどなので、事実上学生達が本腰を入れ、一生を賭けて受ける試験はこの「修能」ということになる。
この「修能」の日に合わせて韓国社会全体が受験カラー一色に染まっていく。まず、試験の数週間前から韓国のいたるところで「合格祈願グッズ」が登場する。韓国では日本以上にゲンを担ぐといった風習がある。日本でも受験日にはトンカツを食べたり、「キットカット」を「きっと勝つ」にかけた合格祈願チョコレートがある。韓国では餅、あめ、フォーク、クシなどといった合格祈願グッズもある。一方、受験生を子に持つ親のほうもじっとしてはいられない。以前は受験日になるとお母さんたちが校門に飴を塗りつけるのが恒例だった。しかし現在では、それぞれが信仰する宗教のお寺、教会などに行き、熱心に子供が大学に合格するようにとお祈りをする。無宗教のお母さんは占い師のところに行き、受験当日は何色の服を着ていったらいいのか、受験日の朝は何を食べたらいいのか、などといったことを熱心に聞き入る。 試験の当日は、韓国中の全高校が休校になり、試験会場になった学校で各高校の先輩のためにコーヒー、パンなどの朝食を準備し、高校名が書かれたプラカードを掲げて必死に応援をする。後輩だけでなく、予備校のスタッフも総出で学生たちを応援する。試験当日の朝は受験生が交通渋滞につかまらないようにと、出勤時間を1時間遅らせたり、市内バスの運行車両台数が増やされたりもする。毎年必ず遅刻ぎりぎりの学生がいるが、警察やオートバイに乗っている人たちは、遅刻した受験生を発見したら即座に試験会場まで送り届けてくれる。そしてヒアリング試験が実施される時間は、試験会場周辺のバスや列車は徐行運転、クラクションも禁止される。2004年に携帯電話での集団カンニング事件が起こったため、2005年からは携帯電話の持込みが禁止された。
韓国は日本よりも高い大学進学率を誇っている。ここ韓国の受験戦争は半端なく、非常に激しいもののようである。韓国では国立、私立関係なくこの「修能」を受験する必要があり、その結果次第で将来が決まってしまうと言われている。そんな一点集中型の試験システムによってこの受験戦争が生まれている。
参考文献
『アジアのなかの韓国社会』 滝沢秀樹 お茶の水書房
『アジアのメディア文化と社会変容』 斉藤日出治 ナカニシヤ出版