寺子屋

出典: Jinkawiki

2009年1月30日 (金) 16:49 の版; 最新版を表示
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 江戸時代の庶民の教育機関として普及したのが寺子屋である。 お坊さんがお寺で子供達に読み書きを教え、その生徒のことを寺子と呼んだことから寺子屋の名が始まったと言われている。ただし、注意してほしいのは、江戸時代に寺子屋と呼んだのは上方の事であり、江戸では手習師匠と呼び、標札には幼童筆学所、手跡指南、筆道指南などが書かれていた。 庶民の教育機関の全てが「寺子屋」と称されていた訳ではない。寺子屋は明治5年の学制によって消滅していったが、私立の代用小学校として存続したり、公立学校に転換していったものもある。

目次

手習師匠

手習い師匠には幕臣、諸藩士、浪人、書家、医者、僧侶、町人など様々な身分の者がなった。一応、書に通じた相応の有職者ではあったが、おおよそは昇進の道を断たれた下級の武士が多かった。内職の者もいれば本職の者もいた。婦人のケースも見られたという。江戸の手習師匠の数は江戸中期の頃には800名もいたと言われる。 なお、師匠の謝礼としては特に定められていなかったが、入門の際は束脩といって、金銭や菓子折、扇子などを納めるのが通例であったという。その他にも、金銭や赤飯、酒や煮しめなどあったとされる。そして寺子屋に入る子供たちの母親が他の生徒達には親睦の為に煎餅や最中を配った例もあったとされている。五節句などの時にも謝礼を納め、額は最も高くて金一分、安いもので銭200文くらいで地域によってまちまちだったという。

寺子屋の子どもたち

寺子屋は早い者で5歳、普通は男女とも6~7歳で入るが、初午や五節句の日を選んで入門したと言われている。「此日小児手習読書の師匠へ入門せしむる者多し」という言葉があるように、初午の日に行われることが多く、当時は「寺入り」「寺上がり」と呼ばれていた。寺入りでは、子どもたちは裃(かみしも)を着て正装する。裃は当時の人々の正装であった。しかし、手習いが一般庶民にも浸透するようになると、礼服を使用しなくなり、同時に江戸の庶民教育が広くいきたわるようになった。これは宝暦期あたりから見られ、この時期が教育の一大転換期であったとされている。それ以前は、裕福な家柄でなければ寺入りさせられなかったのである。それは、子どもが寺入りする際の謝礼が用意できるかどうかにかかっていたと考えることができる。 入門期間は3~5年ほどであり、主に読み、書き、算盤などを教わる。商人の男子は10歳過ぎには辞めて、奉公に出る事が多かった。 始業時間は朝五ツ(午前8時頃)で、昼八ツ(午後2時頃)には終わる。家庭の事情によって就業時間に差がでる子供も多くいたという。午後になると出席率が3割方下がり、これは家業を手伝ったり、女子が琴や三味線などの稽古事に行くためである。午前中は手習いの個人指導、午後は算数や礼法などのカリキュラムで行われ、昼食においては自宅に戻ってすませていた。雨の日においては弁当などもあったという。

寺子屋の学習内容

寺子屋で教えるのは手習(習字)が最も一般的であり、書道をしながら文字を覚えさせるのが中心になっていた。まずは「いろはにほへと」の七文字から習う。そして、師匠によって多少は異なるであろうが、「江戸方角」で字を教えながら江戸の地名を覚えさせる。ほかにも様々な文や句を用いながら、「男は男の文体、女は女の文体で手紙を習い、一通り終わる。他にも父兄からの希望に応じて、算術、漢学の素読、女子ならば裁縫も教えていた。算術に関しては、八算から平方術まで教えられ、裁縫などに関しては手習師匠の妻が教えていたようである。習字の手本としては、いろは、数字、十干十二支、名頭、苗字尽、都路、「商売往来」などがあり、素読には「四書」「五経」「実語教」などが幅広く用いられた。

寺子屋の休日

休日においては、毎月1、15、25日の三日の休、12月17日から1月16日までの長休、2月初午(初午休)、3月2、3、4日(上巳の節句休)、5月4、5、6日(端午の節句休)、7月6、7日(七夕の節句休)、7月13~16日(盆休)、9月8、9日(重用の節句休)が一般的であった。


参考文献

図説江戸3 町屋と町人の暮らし  2000年6月14日初版発行  監修 平井 聖 発行所 株式会社 学習研究所

江戸の寺子屋と子供たち 1995年6月16日 第1刷発行 著者 渡辺信一郎 発行者 小林美喜冶 発行所 三樹書房 

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