イエナプラン2

出典: Jinkawiki

2009年1月31日 (土) 07:15 の版; 最新版を表示
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イエナ・プラン(いえなぷらん) Jena Plan

ドイツの教育学者であるペーターゼンP. Petersen(1884 - 1952)がドイツのイエナ大学付属学校で実施した学校改革案のこと。彼はこのプランを、1927年スイスのロカルノで開かれた新教育連盟の第四会議の席上で発表した。イエナ・プランの中心思想は、生活協同社会学校の理念に基づいており、19世紀の伝達的・知識主義的教育からの脱皮をねらったものである。学校は生活学校として、学校と生活の間の緊張を調停すべきであり、学校は協同社会学校である必要がある。 当時の児童の50%が義務教育の期間中に1、2回はつまずくといった事実が、ペーターゼンに学年別学級の教育の行き詰まりを感じさせた。 子どもたちは、1~3学年が低学年集団、4~6学年が中学年集団、7・8学年が高学年集団、9・10学年が青年集団に所属する。幅をもった年齢、そこからくる学力の差は、その集団の成員の活発な学習活動を促し保証する。一定の課題に共同して、また生き生きと取り組む、張り詰めた気持ちが子供たちの間にみなぎる。部分的であるにせよ、こうした無学年制の導入、そしてまた集団学習の重視を特徴とするイエナ・プランは、今日の日本の学習集団、教授組織の諸問題に貴重な示唆を与えている。


システム

イエナ・プランでは、小学校1年生から3年生で1クラス、4年生から6年生で1クラスを編成する。異年齢でのグループを作り、その中での教え合いを重視するので、どの子も1年生のときは教えられる立場、3年生になると教える立場を経験していく。”できる子”、”できない子”が固定しない。落ちこぼれを出さないことで定評がある教育法である。

また、イエナプランでは学校社会というのをできるだけ実際にある社会そのものの姿を反映したものでなければならない、という考え方に立っている。

ある子どもがクラスでまだ1年目であれば、そこにいる3年目の子どもが、すでに覚えているクラスの中でどういう風に生活指導部分をやっていけばいいのか、どうやって勉強してったらいいのか、机の配置をどうしたらいいのかというようなことを経験として知っているため、年下の子どもに教えることができる。 また、次の年になると一番上だった子どもたちは次のグループの一番下になって、また新しい立場になって学ぶ。こうして、学ぶ側、教える側と言う立場、役割の違いをできるだけ色々な形で経験させる、というのが基本的な考え方になる。 さらに、教師と生徒との関係も、一つの社会として考え、大人と子どもの社会としてみている。先生が前に立って生徒との関係に懸隔を保って授業をする、という場面をなるべく避けようとする。

子どもの性質をよく知っていて、遊び、仕事、協働、祝祭、というようなものでローテーションを組んで、教育内容を構成していく。

イエナプランは、「授業の仕方」や「マニュアル」ではなく、教育に対する「考え方」である。 そして、それが「社会でどう生きていくか」につながる。


イエナプラン教育20の原則

A.人について

1. 各人はユニークである。つまりたった一人の存在である。だから、すべての子供とすべての大人はそれぞれ、かけがえのない価値を持っている。

2. 各人はその人がその人らしく発達する権利を持っている。その人らしく発達するとは、次のようなものによって特徴付けられる。 独立性、自分で(批判的に)判断する意識を持つこと、創造性、社会的正義へ向かう態度 この権利は、人種・国籍・性別・性的傾向・社会環境・宗教・信条または障害の有無によって一切差別されるものではない。

3.各人はその人がその人らしく発達するために次のようなものと個別の関係を持っている。 すなわち、他の人々、自然や文化についての感得できる現実、および、感覚によっては経験できない現実と。

4.各人は常に人まとまりの人格を持った人間として認められ、可能な限りそのように待遇され、話しかけられるべきである。

5.各人は文化の担い手、また、文化の改革者として認められ、可能な限りそのように待遇され、話しかけられるべきである。

B.共同社会について

6.人は、各人のかけがえのない価値を尊重する共同社会を目指して働くべきである。

7.人は、各人のアイデンティティ(個性)の発達のための場と刺激が与えられる共同社会を目指して働くべきである。

8.人は、お互いの間の相違や変化を、公正と平和と建設性に基いて受け入れる共同社会に向けて働くべきである。

9.人は、地球と世界空間を尊重しかつ注意深く守る共同社会を目指して働くべきである。

10.人は、自然資源と文化資源とを、将来の世代のために責任をもって用いる共同社会を目指して働くべきである。

C.学校について

11.学校は、関係者の、比較的自立的で共同的な組織である。学校は社会によって影響を受けると同時に、自身が社会に対して影響を与えるものである。

12.学校では、成人らは、これまでに示された人と共同社会についての原則を、その行為の教育学的な出発点として、仕事を行う。

13.学校で教えられる教育内容は、子供たちの生の世界と(内的な)経験世界から、そして、この原則のはじめの項で描かれている『人』と『共同社会』の発達にとって重要な手段であるとみなされる、われわれの社会の中の文化資源とから、引き出される。

14.学校では、教育は、教育学的な道具を用いて教育学的な状況において実施される。

15.学校では、教育は、対話・遊戯・仕事(学習)・催しという基本活動のリズミックな循環的交換による教育形態が用いられる。

16.学校では、子供がお互いに学び合い助け合うという目的の元、年令や発達のレベルにおいて、異質性の高い、慎重に考えられた、子どもたちのグループが作られる。

17.学校では、自立的な遊びや学習が、指示されたり指導されたりする学習によって、交換的に、補足されながら行われる。指示的・指導的な教育は、特に、レベルの向上を目的としている。これらすべてにおいて、子ども自身のイニシアチブが重要な役割を果たす。

18.学校では、基本的な経験、発見、探求と共に、ワールドオリエンテーションが中心的な場を得る。

19.学校では、子供の行動や成績についての判定は、可能な限り、その子供の独自の発達史から、また、その子供との話し合いを通じて行われる。

20.学校では、変更や改善は、決して終わることのないプロセスとみなされる。このプロセスは、行動と思考との首尾一貫した交換作用を通じて遂行される。



参考文献

『オランダの個別指導はなぜ成功したのか』  リヒテルズ直子  平凡社

『レポート 世界の学校』  伊藤 正則  三修社

http://www.forum3.com/event/holland/thread001/2004111306.htm


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