適正手続
出典: Jinkawiki
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デュー・プロセス・オブ・ロー(due process of low)に同じ。法の適正手続。誰しも法の適正な手続きによらなければ生命・自由または財産を奪われることはないという原則。日本国憲法第三十一条はこの趣旨の規定と解されている。デュー・プロセス・オブ・ローとは、アメリカ合衆国憲法(修正五条・十四条)中の、国や州が市民の生命・自由・財産を奪う時に守らなければいけない手続で、略語として、デュー・プロセス(due process)ともいう。
アメリカ合衆国の場合
合衆国憲法中のデュー・プロセス条項は、マグナ・カルタ(39条)に由来し、当初はもっぱら手続にかかわる規定と受け止められていた。1880年代以降は、手続が単に法律に従えばよいのではなく、それが実体的に正義にかなっていなければならないと解され、経済保守主義の立場を補強し、ニューディール政策に代表される社会化立法の推進を妨げた。その結果、1937年、合衆国最高裁判所が判例を変更して、公権力による経済規制を認めるに至っている。現在では、社会権規定を持たぬ合衆国憲法にあって、人権保障の最後のよりどころであると重視されている。
日本の場合
日本国憲法(31条)は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪はれ、またはその他の刑罰を科せられない」と、右のデュー・プロセス条項に似た規定を持つために、両国憲法間の異同をめぐる議論がある。確かに日本国憲法の規定は財産権に言及していないし、法文に「適正な」の文言を欠くなど重要な相違があり、両者の同一視に反対する見解も見られるが、通説は日本国憲法第31条を人身の自由の総則規定と解したうえで、科刑手続と実体は適正な内容の法律によって定められなければならないばかりか、同条が罪刑法定主義の採用まで推測させると説く。しかも、少年法上の保護処分、精神衛生法上の強制入院など、身体的拘束を伴う行政的措置に本条が適用される余地まで認めるように、その今日的意義は極めて大きいといえる。
引用文献
新村出(編) 2008 広辞苑第六版 岩波書店 p1915、p1933
渡邊靜夫 1994 日本大百科全書16 小学館 p220~221