エゴグラム
出典: Jinkawiki
←前の版 | 次の版→
エゴグラム(TEG)とは、エリック・バーンの交流分析をもとに弟子のジョン.M.デュセイが考案した分析法である。現在、日本では東大式エゴグラム(TEG)が有名かつ、主流で交流分析などの心理療法で用いられている。
目次 |
設立までの流れ
エゴグラムはアメリカの精神科医のジョン.M.デュセイが、彼の師であり、同僚でもあるエリック・バーンの『交流分析理論』を基に考案した。
日本に渡った後、石川中を中心として、東大心療内科教室のメンバーなどの協力を得て、デュセイの考案した5つの尺度を棒グラフで表し、日本語に対応した自己分析用質問紙『TEG』が1984年に発刊される。その後も幾度かの改定を繰り返し2000年に現在の主流となっている『新版TEG』が成立し、現在に至る。
エゴグラム(TEG)の特徴
TEGⅡの特徴は「はい」「いいえ」「どちらでもない」で答えることができる、単純さ、容易さと、自我状態を定める5つの尺度を持つことにある。TEGⅡで用いられる5つの尺度は、バーンの交流分析での親らしさのP(Parent)、大人らしさのA(Adult)、子供らしさのC(Child)の3要素を基にデュセイによって考案されたもので、後述するCP,NP,A,FC,ACの5つの自我状態で分けられる。
5つの自我状態
CP(Critical Parent)
- 信念に従って行動しようとする父親のような心とされ、自分の価値観や考え方を譲らず、批判的な自我状態を表す。
CPの値が高い場合、秩序や法を順守し、義理や権利を守る「No」と言えるリーダータイプとされるが、過度に高い場合は、権威的、排他的、頑固とみられ他者からの反感を買いやすい。逆にこの値が低い場合、自他ともに高い欲求をせず、友好的であるとされる。一方で倫理観や義務感にかけるため、指導やリーダーなどは向かない。
NP(Nurturing Parent)
- 思いやりをもって他者のために世話をする母親のような心とされ、優しく、受容的な自我状態を表す。
この値が高い場合、温厚で融和的、他者を受容し、親しみやすく、世話好きな人間となるが、反面で、新設の押し売りとなったり、相手の依存を誘発させることになる。また、受け取るよりも与える方が多い一面があるため、心の不均衡が生じやすく、過食や飲みすぎなどを起こしやすい。逆にNPが低い場合、配慮に欠け、閉鎖的で、対人関係に乏しいとされる。
A(Adult)
- 事実に基づいて検討・判断する大人の心であるとされ、冷静で客観的な自我状態を表す。
Aが高い人は、理性的で、感情に惑わされず、合理的な判断を下せる人とされる。自己を卑下したり、他者を強く批判したりもせず、能率性、生産性が高く、中立的で、多角的に物事を判断し、公平な判断を下すことができる。しかし、冷たい。ユーモアがない。といった印象を与えやすく、打算的だとみられることもある。一方、この値が低い場合、合理的判断が困難で、感情が先行しやすく、混乱しやすい。そのため現実認識が歪むことがある。
FC(Free Child)
- 自分の欲求・感情に従って行動する自由な子供のような心であるとされ、明るく、無邪気な自我状態を表す。
FCが高い場合自由かつ直観的であり、行動的であるとされる。のびのびとしており、感情表現が率直で、好奇心や創造性に富む。しかし、自分勝手な面があり、行動の制御ができず、他人に対する配慮が欠けることがある。逆にFCが低い場合は、感情の抑制傾向が強く、率直な表現ができないため、物事を楽しめない。消極的で気分が暗く、沈みがちとなる。
AC(Adapted Child)
- 自分の感情を抑えて他人に良く思われようとする従順な子供の心であるとされ、自己否定の構えを表している。
ACが高い場合、従順で、他人に依存し、感化しやすい。そのため、周囲に合わせ過ぎようとする面があり、他人に左右されやすく主体性に欠ける。他人の評価が常に気になり、不当なことを言われても黙っていることが多い。感情表現が苦手で、自己を卑下しやすく、その結果、「すねる」「ひねくれる」といった、偽りの反抗を示すことがある。マイナスイメージがつきやすいが、忍耐強く、協調性があるという一面も持っている。一方この値が低い場合、非協調的で、融通がきかず、人の話に耳を傾けない。
テストの信用性
TEGでは自我状態を測定する5つの尺度とは別に、テストの妥当性を計る2つの尺度、妥当性尺度:Lと疑問尺度:Qをもっている。Lは文字通りテストの妥当性を計る尺度で、健常者ならば、非常に高い確率で回答が一致する問題(過去に風邪をひいたことがある。等)を設け、被験者と一般の回答の一致度を調べる。回答が著しく一致しない場合は、被験者の応答態度は信頼性が低いとなり、テストの信頼性が乏しいと考えられ、判定には注意が必要となる。Qは回答の「どちらでもない」の数を測定する尺度であり、被験者の態度の防衛的な態度を測定している。「どちらでもない」が35点以上の場合、被験者の防衛的な感情が阿多らいていると考慮し、判断を保留すべきである。
テストの利用方法
TEGは個々人の人格を知ることに特化しているため、企業や教育現場での活用が期待される。企業であれば、まず、自身の特性を知ることで、ストレスを感じる場面や場所を知り、対策を講じることができ、メンタルヘルスに役立つ。また、プロジェクト開始の際には、誰にどのような役割を任せるかの参考となる。教育現場では、生徒にテストを行わせることによって、クラスの構成や、教員全体での個々の生徒に対する認識の共有が可能となる。それに加え、生徒の特性を知ることで保護者等との面談の際にも役立つ。人間の持つ性格や特性、人格を知ることができるテストなため、人がかかわる場所ならば、上記したもの以外の場所でも活用が期待できる。