カレン・ミラー
出典: Jinkawiki
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アメリカの幼児教育者。ヘッドスタートの教師として、また四ヵ所の保育園の園長を歴任してきた人物である。また、二ヵ所の特別保育園連盟で保育者と園長への教育及びカリキュラムの内容を全面的に統一した。『一、二歳児に対してなすべきこと』など多くの著書があり、幼児教育カリキュラムについての共著者もある。また幼児の保育に興味のある人々や乳幼児の保母のための新聞を発行している。
言葉の話せない外国人の子どものためのガイドライン
カレン・ミラーは、園への適応と意志の疎通を促進するためとして、言葉の話せない外国人の子どものためのガイドラインを13の項目で設定した。以下にそれを記す。
(1) 子どもとの間に信頼感の絆を結ぶ
子どもは保育者を必要としている。子どもにとって保育者はまさに安全地帯なのである。実際に、出来る限り子どもたちの特別の支えになるようにしてあげることが必要である。子どもは保育者の言葉を理解できないかもしれないが、触ったり、アイコンタクトや微笑みで、またスキンシップで分かるだろう。子どもは心の安心があると、思い切って外に向かって働きかけるようになる。保育者は間違いなくその契機になるのである。
(2) キーワードを学ぶ
子どもの言葉でのキーワード(大切な言葉)やフレーズ(慣用句)を学ぶ。子どもがトイレに行くとき、疲れたとき、お腹がすいたとき、あるいは他に何か必要なときに、子どもが普段何と言うかを母親にあらかじめ聞いておくとよい。
(3) 良い言葉を使う見本になる
普通の声の調子でゆっくりと、また、はっきりと話す。完全な文章で話すようにする。子どもが単語で話した場合には文章にしてあげる。例えば、子どもが単に「靴」と言った場合に、「そう、今日は新しい靴を履いているんだね」と言うなどがある。
(4) 感覚的に言語を受容できるような言葉(receptive language)を使う
子どもは言葉を話したり、言葉で自分を表現する随分以前から保育者が言っていることを感覚的に理解することができている。これをreceptive言語、あるいはreceptive理解という。保育者がしていることや子どもがしていることを言葉で表現しなさい。子どもが分かるように話しかけるのである。そして、保育者が話していることが分かるように手助けするのである。
(5) 言葉を発したときにはうんと褒めてあげる
小さな子どもの頭脳は言葉を呼吸するようにプログラムされているのである。英語を非常に早く捉える。子どもが大きな声で最初に発する言葉は「こんにちは」「おはよう」あるいは、「はい」「いいえ」など社交上の言葉である。このような言葉を積極的に言わせることが必要である。驚くべきことに子どもたちはこのような言葉を非常にすばやく得意げに話せるようになるのである。
(6) 言葉を使わない会話を理解してあげる
子どもの言葉を使わない会話を読み取り、それに言葉を与えてあげる。保育者は子どもの通訳の役割を果たす必要がある。そして、必要な言葉を感情と結び付けてあげるのである。
(7) 間に入って励ます
子どもが保育者に信頼感を持つようになってきたら、その子どもが他の子どもたちとも仲良くするように援助する。このことは、その子どもを他の子どもに中に適応させるのを助けるだけでなく、より多く英語を聞き、また練習する機会を与えることになるのである。
(8) 本を一緒に読む
何度も何度も子どもが好む本を読んであげる。言葉のない絵本もためになるし、次がどうなるかが分かったり、同じパターンの繰り返しのある話がよい。
(9) 音楽を聴いたり、ダンスを踊ったりする
音楽はあらゆる人が理解できるように迫ってくる。保育者が静かに歌うと、悲しんでいる子どもでも心安らかになるのである。フレーズの繰り返すような歌がよい。歌うのは話すよりもっと簡単である。歌の言葉は普通の話し言葉よりゆっくりであるし、分かりやすいからである。言葉を発する良い練習となるのである。
(10) 筋書きのない遊びをする
他の子どもたちと同様に、英語を話さない子どもたちに自信を持たせるためには、何かが上手くいったという経験が必要である。たくさんの筋書きのない創造的な経験を子どもにさせるように努力する。また、子どもがついてくるものなら何でも良い。水遊び、お絵かき、ごっこ遊びなどが理想的な筋書きのないあそびである。言葉の形成に格好の機会を与えるからである。
(11) 的確なしつけの方法を学ぶ
子どもの文化や言語がどのようなものであろうと必要なしつけ方は共通である。子どもにとっては特にしっかりとした、心優しい指導が必要で、理解には限界がある。時に子どもたちは実際には理解していてもずっと理解できないように振舞うことがある。しつけをする時には、言葉を使わないメッセージでもいつでも子どもは理解できるということを記憶しておく必要がある。そのため、言葉で話すときのような声の調子とか表情をするのである。
(12) 子どもを先生にする
外国の子どもに、保育者や友達に自分の国の言葉を教えるように勇気付けてあげる。また、子どもの新しい言葉を使った本を作ったり、子どもの言語や文化を使ったおままごとコーナーを新たに作ったりしたら良い。そのほかには、親を招いて子どもの言葉で分かりやすい本を読んでもらったり、色々なスタイルの洋服を着せてもらったりする。
(13) 写真の交換をする
親に家族の写真を持ってくるように頼む。つまり、家族のお祝い事や、昔の家、あるいは他の家族の状態の写真をコーナーに飾るのである。保育者の写真や子どもの写っている園の写真を家に送る。そのような写真が、その子どもの家族の人々に、自分たちもその一員であるとの意識を育むのである。
参考文献
ボニー・ノイゲバウエル著 谷口正子/斉藤法子訳 『幼児のための多文化理解教育』 明石書店 1997年