ウォルト・ロストウ

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ウォルト・ロストウ(Rostow , Walt Whitman) [生]1916.10.7 ニューヨーク [没]2003. 2.13 テキサス.オースティン


目次

概要

アメリカ合衆国の経済学者。 ニューヨーク市生まれ。エール大学を卒業後、オックスフォード大学に留学。第2次世界大戦中は、戦略事務局などの軍務に服し、戦後は、一時国務省勤務。オックスフォード、ケンブリッジ両大学でアメリカ史を講じたのち、1950年からマサチューセッツ工科大学経済史教授。近代史の展開を伝統的社会、離陸先行期、離陸(テイク・オフ)、成熟期、大衆消費時代の5段階に分ける経済発展段解説を展開した『経済成長の諸段階』The Stages of Economic Growth(1960)を公刊して学界、言論界の注目を集めた。1961年J.ケネディ大統領の国家安全保障問題担当の特別補佐官次席に起用され、同年11月~66年国務省政策企画班の議長。1966~69年L.ジョンソン大統領の特別補佐官としてベトナム戦争にも関与した。のち、テキサス大学経済・史学教授。著書は、このほかに“Essays on the British Economy of the Nineteenth Century”(1948)、『成長の政治と諸段階』The Process of Economic Growth(1952)などがある。


目的

第二次世界大戦後、多くの貧しい国々の経済開発が世界の課題となって現れた。既に、アダム・スミスの狩猟、牧畜、農業、商業、工業という段階論やマルクスの封建主義、ブルジョワ資本主義、社会主義、共産主義という段階論があったが、十分な理論的基礎となるものではなかった。歴史に見られる規則性から単線的発展観を唱えることは魅力的であり、こうした中で、スミスやマルクスに代わる、開発に関する成長に関するモデルが現れた。

特に、50年代、60年代の冷戦の中での政策のもとでは、独立国家郡の忠誠の競い合いとなり、アメリカの経済史家ロストウの「経済成長の諸段階」が最も影響力を持った。これは、全ての社会は、伝統的社会、自立成長への離陸の準備段階、離陸、成熟への過程、大量消費社会の5つのいずれかの段階にあるとし、マルクスの段階論に対峙し、「非共産党宣言」として発表されている。伝統的社会あるいは離陸準備段階にある途上国は、発展の一連のルールに従い順次離陸していけばよいとしている。

これは、具体的な開発手法を述べたものではないが、ここでの「離陸(Take-Off))」は、途上国から先進国への転換を意味する言葉として、一般に使われるものとなっている。


ロストウによる経済成長の5段階

第1段階:伝統的社会の階段 / 伝統的社会(the traditional society)

産業構造が在来産業のモノカルチュアで、労働生産性も低く、経済活動の大部分が食料確保のための農業生産に向けられている。


第2段階:条件整備の段階 / 離陸先行期(the precondition for take-off)

経済の成長局面・好循環局面に移る離陸のための必要条件が徐々に満たされていく期間である。経済の成長局面・好循環局面とは具体的には1人当たりのGNPが持続的に上昇していく期間である。


第3段階:離陸の段階 / 離陸(テイク・オフ)(the take-off)

離陸期になると貯蓄率と投資率が急速に高まり、1人当りGNPは持続的な上昇を開始する。ロストウは離陸期の特徴を3つあげている。

1.投資率が5%以下から10%以上に増加すること。

2.主導産業があらわれ他の産業部門の成長を誘発すること。

3.経済成長を持続するための政治的・社会的・制度的な枠組みが成立することである。


第4段階:成熟への推進 / 成熟期(the drive to maturity)

離陸期のあとにくる波動を伴う長い進歩の時期である。特徴として、近代的産業技術が全分野に広がり主導産業が重化学工業になる。また産業構造は第2次産業に特化する。


第5段階:大衆消費時代 / 高度大衆消費時代(the age of high mass consumption)

成熟化の時代を経て国民一般の所得水準が更に上昇すると消費需要の構造が変化し耐久消費財やサ-ビスに対する需要が爆発的に増大する。



参考文献

独学ノート[1]

開発経済論の系譜[2]

ブリタニカ国際大百科事典

広辞苑 第六版 


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