フレネ教育10

出典: Jinkawiki

フレネ教育の誕生

セレスタン・フレネによって1920年代に誕生する。このころは新教育運動が広まり、教育は主観的で直観的に行われるものだと考えられるようになっていた。フレネは第一次世界大戦勃発時、地元フランスの師範学校に在籍していて、代用教員として戦地に赴くことになった。しかし、赴任先の戦地で毒ガスが使われた影響で喉と肺を痛めてしまう。フレネは大声が出せなくなるというハンデを負いつつも教師になり、その後赴任した学校で教科書の説明だけを行う教師と、反復練習のみの授業にすっかり学習意欲をなくした子供たちを見て、教育の改革を試みるようになる。子供たちを散歩に連れ出して、外の世界で見たことや触れてきたことを話してもらい、自由に表現させるという教育方法を生みだすことになる。そして、表現された言葉を子供たちで推敲して授業を展開した。当時は活版印刷の技術を用いて、子供たち自身の表現した作文を載せるなどして教科書を手作りして行ったことからこれは「自由テクスト」と言われている。また、子供たちが自分たちで教科書づくりをしていくためには参考資料が必要になったため、資料カードや小冊子もいくつか作られるようになり、学級文庫まで整えられた。1935年にフレネ学校には子供たちの討論のための大きな机や学習机、印刷室が設置され、現在はフランス語圏を中心に西ヨーロッパ・アメリカ・アフリカなどで支持されている教育方法である。また、オランダでは公立学校も含めてフレネ教育を実践している学校が多く、イエナプラン教育にも子供たちの生活体験を学習教材としている点や子供たちに作文を書かせるという共通点が見られることからフレネ教育がイエナプラン教育に影響を与えたと考えられている。


自由作文の取り入れ方

フランス・ヴァンスのフレネ学校では、毎日自由作文を書くことが原則となっている。一般的な作文はテーマが決められ、文法の基本に従って書くことが求められるが、フレネ学校では子供たちは3歳でまだ文法を覚えていない年齢であっても書きたいと思ったことを書き、自らの生活を文章化するという活動を行っている。徐々に書いたことを発表していくことで子供たちは他の人に読まれる嬉しさを知り、意欲的に表現していくことになる。また、それは日本独特の生活綴り方の教育方法と似ていて、書くことをじっくりと考えることで記憶に長期的に残ると考えられ、日本でも比較的取り入れやすい教育である。


フレネ教育の指導方法

・フレネ教育には専門的な資格をもった教師がいるわけではない

しかし、教師はそれぞれの子供の表現を尊重して、子供が発表することを恐れないようにする指導力が必要である。子供たちの聞いてもらえるという気持ちが活発な意見交換にも繋がるのである。

・異年齢の集団での生活をする

子供たちも年齢で分けられているのではなく、約60人の子供が3~5、6~7、8~11歳までの3クラスに分かれているだけである。異年齢で一緒に交流するため、年長の子供は年下の子供の面倒をみる姿も見られる。

・意見交換が盛んである

子供たちは作文を書いたり読んだりするだけでなくお互いの意見を交流する時間を頻繁に取っている。「朝の会」や「帰りの会」、「コンフェランス」などの時間で子供たち自身が進行を務め、教師も参加しながら考えたことを話し合うようにしている。

・子供たちの作品を学級全体の文化的な遺産と考える

一般的に子供たちは授業で作った作品を家に持ち帰ってしまうが、フレネ学校では作品は一つの遺産として他の子供たちと評価し合う対象であり、作品は学級に保存され新たに入ってきた子供たちがその作品を見て教室に安心感を持ち学級に馴染むために必要な材料となる。


(投稿者HNF) 参考資料 安彦忠彦・児島邦宏・藤井千春・田中博之編著『よくわかる教育学原論』(2013) フレネ教育  [http://www.jfreinet.com/education/main2.htm ]フレネ教育論 [http://www.fureai.or.jp/~katsumi/paper/html/Part1-chap3.htm ]イエナプラン教育とは [http://study.japanjenaplan.org/?eid=4 ]古沢常雄  『新教育運動の現代的意義:フランスを中心に』(2000) C.フレネ 石川慶子・若狭蔵之助訳  『フランスの現代学校』(1979)


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