単一欧州議定書
出典: Jinkawiki
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概要
1986年、EC加盟国が市場統合を完成させて国境なきヨーロッパを実現しようとして調印した文章。これにより、1993年、EC]は市場統合を発足させた。
経緯
ローマ条約が出そろったEEC(欧州経済共同体)、ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)、EURATOMの3機関は当初、それぞれ個別の総会や閣僚理事会、司法機関を持ち、本部はECSCがルクセンブルク、EECとEURATOMはブリュッセルと別だった。このため、相互調整の必要性が高まってきた。 そこで、1967年7月、3機関を欧州調導体(EC)として再編成する併合条約が発効した。ローマ条約は発足から最初の12年を、単一の共同市場と形成する過渡期間としていた。その過渡期間が経過した1969年、オランダのハーグで開かれた欧州理事会は、新段階に向かうECの目標として「完成」「強化」「拡大」「政治協力」の4つを掲げた。
域内市場統合白書
1985年6月にジャック・ドロール率いる欧州委員会が「域内市場統合白書」を発表した。白書はEEC条約の12年計画は、関税同盟の成立などで一応の成果を収めたとしつつも、共同市場の「完成」は達成されず、加盟国間では自国市場保護のための障壁がかえって増したと批判した。 危機を克服するため、白書は欧州域内市場統合を1992年末に完成させる目標年度の設定と、統合を進めるための保護策の提案、各提案を採択するタイムスケジュールなどを決めた。 こうして再び欧州連合の火が掲げられたのである。障壁を取り除くべき対象として、①物理的障壁撤廃 ②技術的障壁撤廃 ③財政的(税制)障壁撤廃 の3分野で合計約300項目(最終270項目)の法令を採択するよう加盟国に提案した。
手続き
白書が提起した膨大な法改正作業を円滑に進めるため、1987年7月にローマ条約を併合条約以来20年ぶりに改正する単一欧州議定書を発効させた。議定書は単一市場の実現を法的に推進する機能を発揮した。それは手続きの弾力化だった。 ①ローマ条約では原則、全会一致の決定方式だったが、議定書では、分野を選んで特定多数決方式を積極的に取り入れた。 ②欧州委員会の政策立案に対して、助言役でしかなかった欧州議会の権限を強めた。 ③理事会主導の政治的調整を弱め、実務ベースでの市場統合を側面から支えた。 ④議定書が共通外交・安全保障政策へつながる欧州政治協力(EPC)を条約に明文化した。
参考
EU情報辞典
(tetsuo)