社会福祉2

出典: Jinkawiki

目次

社会福祉

福祉という言葉が使われるとき、道路や公園の整備も含むこともあるが、社会福祉についても、同じような理解がなされているときがある。それは、教育、住宅、経済保障、医療、社会福祉サービスなど多くの公共サービスを含むものである。この考え方は、イギリスの「社会サービス(social services)」の概念を受けたもので、1950年以降、広く使われるようになった。また「社会サービス」の概念は、そのなかに社会保障の概念を取り入れるものとして理解される場合もある。社会保障は一般に、社会保険と公的扶助を含むものとされているが、広義の社会福祉の概念のなかに、社会福祉の機能として社会保障を含むこともある。従って、広義の社会福祉は、人々の社会生活上の安定のためのサービスと、経済保障のための金銭的なサービスをあわせた、きわめて包括的な、生活全体を視野に入れたサービスとして理解することができる。 社会福祉における対象、主体、援助の行為について、以下のようになる社会問題によりその生活が脅かされ、なんらかの生活の障害を抱えている人々が(対象)、社会生活を営む上で十分にその社会的な役割を行えなかったり、自立した生活を行うことができないときに、その自立心を損なわないように国をはじめとするさまざまな福祉援助の主体により(主体)、多くの対人的なサービスを提供して、生活上のさまざまな問題を除去・緩和することを行うことを援助の行為という。しかし、単にその生活問題を解決し、生活を維持するだけでは「権利としての社会福祉」としてのはたらきが、十分に作用しているとはいえない。なぜなら戦後、日本国憲法では、国が国民の社会福祉の増進に努めらければならないとされてきたが、今日にいたるまでにその実施のために、さまざまな理念がかかげられて、社会福祉は単なる最低限の生活舗装から、人々がよりよく生きるためのものとして発展して行くことになったからである。そのため、社会保障制度が制定されるようになった。

社会保障制度

日本の社会保障制度は大きく分けて社会保険・公的扶助・社会福祉・公衆衛生の4つからなる。最低生活の維持を目的として、国民所得の再分配機能を利用し、国家がすべての国民に最低水準を確保させる政策をいう。社会保障という言葉が公的に使われるようになったのは1935年米国で制定された社会保障法が初めとされる。日本では、1950年の社会保障制度審議会の〈社会保障制度に関する勧告〉に基づいて整備されてきている。社会保障は、疾病、負傷、出産、老齢、死亡、失業等に対しては社会保険・児童手当制度により、生活困窮者に対しては公的扶助によって生活保障を行うとともに、医療、保険事業と社会福祉を含むとされている。

社会保険

社会保険には、失業時の求職活動期間の生活を安定させる保険である雇用保険の疾病や負傷に対して医療が受けられる保険の医療保険・業務上及び通勤時の負傷・疾病に対する保険の労災保険・老齢や障害、死亡による所得を保障する保険の年金保険・高齢のために介護を必要とする場合に介護を受けることができる保険の介護保険の5つからなる。働ける時に保険料を検出しておき、必要な時に、年金・医療費・保険金などの給付を受けつけることを基本とした制度。このような困窮を救済するために、政府など公的部分が一定基準による給付を行うための保険である。したがって集団保険であること、公的保険であること、強制保険であること。強制保険とは、保険の分類の一つである。保険制度の設立、それへの加入、保険給付、事業主体の選択などについて、法令などによる強行規定を伴う保険をいうが、通常は一定の要件を備えた者に対して保険への加入が法的に強制されるものをいう。この保険においては保険契約者、被保険者に対する加入義務と保険者、保険会社に対する保険引受義務たる受託義務が法的に規定されている。

公的扶助

健康で文化的な最低限度の生活を維持しえない生活困窮者に対して、国家がその責任において行う扶助制度。その財源は税金その他国および地方公共団体の一般収入によってまかなわれ、受給権者に醵出義務はない。ただ法定の最低生活水準に達していないことが給付の要件とされているため、資産調査(ミーンズ・テスト)が行われる。日本の公的扶助に関する立法としては生活保護法が挙げられる。生活保護とは、生存権の理念(憲法25条)に基づいて、国が生活困窮者に対しその困窮度に応じ必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする法律である。

社会福祉制度

 生活困窮者、障害者、児童、老人などの社会的に援護を要する者の自立と社会参加をうながす事業とされている。また、身体障害、知的障害、老齢、母子家庭など生活を営むうえでの生活的なハンディキャップを要保険事故としてとらえ、それに対し厚生あるいは育成の施寮、施設への収容、居宅看護など、主に非金銭的な給付サービスを与えることより、そのハンディキャップを軽減することを目的とする制度ともいわれている。1951年に制定された社会福祉事業経営者の基本理念が定められ、地域における総合的計画的な事業経営と保険医療等との連携、地域住民の理解と協力の必要等が規定されている。日本国憲法25条2項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定している。

公衆衛生

 今日広く認められているウィンズローの定義によれば、「公衆衛生とは、組織された社会的努力を通じて、疾病を予防し、生命を延長し、身体的および精神的健康と能率を向上させようとする化学であり技術」であるとした。19世紀になって、L.パスツール,R.コッホらによって伝染病の原因が発見され、ワクチン、結成等による免疫学的な予防、治療法が見出され、公衆衛生は初めて科学的、実験的に取り組めるものとなった。主要対象は時代と共に変遷してきたが、現在の日本における公衆衛生の具体的内容として主に三つある。一つ目は環境衛生である。環境衛生は、上下水道、汚物処理、食品薬物等の取り締まり、住宅衛生、)公害対策、都市計画等がある。二つ目は対人衛生である。対人衛生は、伝染病の予防、成人病予防、母子衛生、精神衛生、栄養改善、一般体力の増進等がある。三つ目は、公衆衛生の基本的活動である。公衆衛生の基本的活動には保健所運営、保健婦活動、衛生教育、医療社会事業、衛生統計、試験検査等がある。


生存権

生存権とは、人間が人間らしく生きる権利のことである。日本国憲法25条第1項では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められている。また、日本国憲法25条2項では「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規定している。生存権とはどのようなものかをもう一度考えされられた裁判として、朝日訴訟があげられる。

朝日訴訟

『最新解説図解現社』の朝日訴訟の事件について引用すると、国立岡山療養所に肺結核で入院中の朝日茂さんは、長年の重患と無収入のため、医療と生活保護の扶助(月600円)を受けていた。〈ちなみに、この時代の大学卒の初任給は、1956(昭和31)年の大学卒の初任給は1万660円であり、2004(平成16)年の大学卒の初任給は19万5000円である。〉  1956(昭和31)年に実兄の所在がわかり、仕送り(月1500円)がされるようになると、津山社会福祉事務所長の命令で扶助を打ち切られ、仕送りのうち、日用品費600円を残し、900円を医療費として負担することになった。  実兄の苦しい生計からの送金の大半は召し上げられ、仕送り前と同じ結果となったため、岡山県知事、続いて厚生大臣に「不服を申し立て」たが却下された。  朝日さんは57年8月東京地裁に「国家として余りにも人権を無視した冷酷な処分であり、生活保護法の基準に違反し、憲法25条に違反する」として、厚生労働省の制裁を取り消すよう行政訴訟を起こした。 なお、上告後に上告人(朝日さん)が死亡したため、その相続人が訴訟を継承できるかどうかが新たに論争となった。  最高裁の判決では、「本件訴訟は、上告人の死亡と同時に終了し、同人の相続人……においてこれを継承し得る余地はない」とした上で「(憲法第25条第1項)の規定は、すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するべきことを国の債務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない」という同条項がプログラム規定であるとの立場を明確にした。このことから、朝日訴訟によって我が国の社会保障制度を発展させるのに大きく貢献した裁判であるといえる。


参考文献・引用文献

『社会福祉学概論・第3版』編著:山本隆・小山隆 2006年ミネルヴァ書房

『社会福祉の基礎知識第7版』編:社会福祉専門職問題研究会 2003年 誠信書房

『最新解説図解現社』 編集者:浜松書店編集部 浜松書店

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