神風特攻隊

出典: Jinkawiki

目次

概要

太平洋戦争の末期、日本陸海軍は爆弾を積んだ飛行機を人間に操縦させて、本土へ押し寄せる連合軍艦隊に体当たりするという、もはや戦法とも言えぬ戦法を編み出して組織的に実行た。飛行機ばかりでなく、人間が操縦する魚雷やモーターボートによる体当たり、さらに陸上では兵士自らが爆雷を抱いて戦車に体当たりする戦法も行なわれていき、多くの兵士たちが若い生命を散らしていった。

特攻は、米軍に多大な損害を与えたが、同時に精神的にもすさまじい恐怖感を与えていた。それはどんなに迎撃戦闘機を飛ばしても、虫一匹入れないような対空砲火を繰り出しても必ず1機か2機はそれを突破して大きな損害を与えていたという事実にあった。特攻機が命中すれば必ず数名から数百名の死傷者が出るのだから、これに米軍は頭を悩ませた。

命中の衝撃に揺さぶられたり、至近弾となった特攻機が爆発し、パイロットの肉片がバラバラに飛び散って海に降り注ぐのを見てノイローゼになる将兵が何人もいた。中には戦場恐怖症を患い本国に帰還した者さえいた。昭和19年10月の最初の特攻以来、米軍の特攻戦法への対策は日を追って強化されてはいったが、特攻の脅威は決して消えることはなかった。その脅威は、沖縄菊水作戦において米軍を退却寸前に追い込んだほどだった。しかし日本軍は最初の頃こそ零戦や天山、彗星、流星などの新鋭機を投入したが沖縄戦の末期にもなると本土決戦のため飛行機を温存しようとして99艦爆や97艦攻などの旧型機を投入。性能は当然劣るため命中率は徐々に低下していった。さらに旧型機すら減少すると、練習機まで投入した。それはもはや戦闘ではなく明らかに時間稼ぎ。集団自殺の強要でしかなかった。250kg爆弾すら装備できず、60kg爆弾で出撃した機もあり、なんとか250kg爆弾を装備しても滑走路ギリギリで離陸するありさま。しかも沖縄まで無補給で飛べないため、途中で燃料を補給してから再度離陸したものもあった。鈍足な練習機に重い爆弾を装備させたものだから、速度は150kmほどに低下。もはや地上を走る自動車なみの速度であった。当然そのような状態で出撃しても戦果など込めず、敵戦闘機のエジキになるだけであった。実戦機ですら突入の難しい戦闘区域へ練習機を投入したところで、もはや敵機動部隊へ接近することでさえ困難であった。


特攻パイロットの心情

特攻パイロットの召集は表向きは志願制だったが、実際は拒否のできない命令に近く志願拒否をするパイロットなどいなかった。当時の戦況や仲間が次々と志願していく状況では、そうせざるを得ないのが実情であった。米軍が間近に迫っている状況で、自分が救わなければ愛する家族や恋人が殺されてしまうという思いがあり、国民も特攻パイロットもひたすら必勝を信じていた。 皇国教育は国のために命を捧げることを徹底して教えていたから、戦争へおもむく兵士は生きて帰れることなど考えていなかった。特攻パイロットの中には帰郷が許された者もいたが軍からは特攻の任務については極秘にせよと言われていたし、家族を悲しませたくないという思いも当の本人にあったので、大半の特攻パイロットは家族には特攻のことは語らず死んでいったようだ。


特攻隊生還者

特攻隊員に指名されるも生還したという例も多い(沖縄戦時の帰投例は全出撃の半数にも上る)。機材故障、体調不良、天候不良、理由を付け出撃を回避、突入直前に撃墜され捕虜となる、出撃日を指定されるもその直前に終戦、等々理由は様々である。戦中の場合、再度特攻の任を受け出撃するケース、特攻の任に耐えずと判断され休養に出されたケース、部隊から排除されたケースもあった。 戦後、特攻隊員の大多数は一様に心に傷を負いながらも戦後復興・経済発展の為に日本を支え、戦死者の慰霊顕彰にも尽力している。しかし一部の者は社会や価値観の変貌に付いていけず、また彼らを「特攻くずれ」と称して蔑む風潮もあり、敗残兵として冷遇を受け、そのため自暴自棄になり反社会的な行為に走る者も出現した。また特攻と無関係の者が自らを元特攻隊員と偽り、犯罪を行うこともあった。


参考文献

北影雄幸『特攻の本 これだけは読んでおきたい』 光人社

保阪正康『「特攻」と日本人』 講談社現代新書 講談社


原 勝洋『真相・カミカゼ特攻 必死必中の300日』 KKベストセラーズ


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