聴覚障害
出典: Jinkawiki
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聴覚障害
身の回りの音や話し言葉が聞こえにくかったり、ほとんど聞こえなかったりするために、コミュニケーションや日常生活に支障がある状態をさす。
聴覚障害のタイプ
障害を受けた部位により、タイプの異なる聴覚障害がおこり、外耳、中耳の障害による「伝音性障害」と、内耳から中枢にかけての障害による「感音性障害」に大きく分けられる。また伝音性と感音性の両方の障害の原因をもつものを「混合性障害」という。
「伝音性障害」は、気導での音の伝わり方に問題があるので、骨導での音の聞こえは正常である。医学的な治療が有効な場合も多く、骨導を利用した補聴器等の効果も大きいため、ことばの聞き分けや言語発達などへの影響が比較的少ないタイプの障害である。
「感音性障害」は内耳性と後迷路性に分けられる。内耳性障害は一般に、蝸牛の入り口に近い高音部に反応する部位の障害が重度である場合が多い。いったん壊れた有毛細胞は再生しないため医療的な効果に限界がある。補聴器等で単純に音を大きくしても、歪んだ音にしか聞こえないため、コミュニケーションや言語発達に障害がおこる。聾学校や難聴学級で特別な教育的配慮を必要とする聴覚障害児のほとんどが内耳性障害である。最近は失われた有毛細胞の代替として電極を蝸牛内に埋め込み、聴神経に直接電気信号を送る人工内耳の手術を受ける例も増えている。一方、後迷路性障害では、小さな音でも聞こえるが何の音であるかわからなかったり、話しことばの聞き分けが悪かったりすることが特徴である。内耳の機能には問題がなく、聴神経から聴覚中枢にいたる過程での障害であるため人工内耳の効果はない。
原因と要因
聴覚障害は、障害になった時期によって、その原因や言語使用におよぼす障害の影響の程度などが異なる。原因の観点からは、遺伝性、胎生期、周生期、後天性の4期に分かれる。先天性の高度聴覚障害児の出現率は、ほぼ1000人に一人程度である。最近は難聴に関連する遺伝子の研究が進み、遺伝子治療への期待も高まっている。胎生期では、母胎の感染、代謝異常、投薬などが、周生期では、仮死、低体重、黄疸などが原因になって聴覚障害が発生する。後天性の聴覚障害は、流行性耳下腺炎、麻疹、髄膜炎などのウィルス感染、ストレプトマイシンなどの薬物、騒音、頭部外傷などの原因でおこる。
感音性障害の聞こえの特徴
・話し言葉がはっきり聞き分けられない。特に母音に比べ子音の聞き取りが悪い。子音は時間的に短く、エネルギーも小さく、高周波数成分が多いからである。
・大きい音がガンガン響いてうるさい。感音性障害者はちょうどよい大きさで聞こえる範囲が健聴者より狭く、大きさの変化が急激になる。したがって、静寂な教室内でも、他児が椅子を動かしたり筆箱を落としたりする音により、聞き取りが妨害される影響が、健聴者の予想以上に大きい。
・騒音の中で話を聞きとることが困難である。音の方向性や、騒音の中で必要な音声のみを選択的に聞き取る場合には、両耳からの聞こえの情報が手掛かりとなる。静寂な環境下ではコミュニケーションにあまり不便のない片耳難聴者も、雑踏や電車内での会話は非常に困難である。 er
参考文献
特別支援教育の基礎知識 橋本創一 霜田浩信 林安紀子 池田一成 小林巌 大伴潔 菅野敦 明治図書 2006年
聴覚障害児の言語指導 ―実践のための基礎知識― 我妻敏博 田研出版 2003