オルタナティブ・スクール

出典: Jinkawiki

(1)公立学校の伝統的な教育に不満をもつ人々によって設立・維持され、公立学校と比べてどちらかを選択できる新しい、独自性のある学校ないしその制度。

(2)公立学校として、ないしその中に設けられ、親や子どもによって自由に選択されたり、学校側が親や子どもに自校の代わりに行くことを勤めている学校。 この二つに大別される。{現代学校教育辞典}

(1)のタイプはフリースクールやオープンスクールなど、1960年代後半のアメリカを中心に数多く現れ、反体制的な急進派グループの支持によって展開された学校が含まれる。

(2)のタイプは行政や公立学校が主導権を握って進めてきたもので、(1)のタイプの学校よりやや遅れて、1970年代に入ってから現れた。その中には、英才児や問題児、障碍をもつ子ども、妊娠中の子どものための学校など、正規の学校を代替する学校が含まれ、さらに最近では、少数民族の子どもを対象にした学校も含めて考えられている。


特徴

アメリカ合衆国を拠点に25年以上にわたってオルタナティブ教育の推進に携わってきたロバート・バーとウィリアム・パレットはその特性として次のように諸点をあげている。

・小規模サイズ

・前向きなエートス

・多様な選択

・ビジョンの共有

・適切なカリキュラム

・刷新的プログラム

・子どもの積極的な参加

・自治

・適切な生徒評価

・教師によるケアと積極的支援

これらはいずれも生き生きとした学校生活を思い描かせてくれる特性であり、その裏返しが、彼らが問題視している伝統的な公教育のあり方である。そこには、大規模ゆえに管理的で活気のない公立学校が批判の対象となっている。


消極的な捉え方と積極的な捉え方

○消極的な捉え方○    現在のアメリカ合衆国の教育界では、オルタナティブ教育をメインストリームの教育の「補完的な役割」、もしくは「劣っているプログラム」としての見方が根強い。アメリカでは多くの「疑似オルタナティブ」校やプログラムのために、オルタナイティブスクールが「不適格者の避難所」や「メインストリームで上手くやれなかった生徒を安直に卒業させる場」としてみなされる傾向にあるという。また、「オルタナティブを装ったプログラム」が困窮する生徒を収容する「ソフトな拘置所」として機能しているという指摘もある。  アメリカ合衆国では、かつては異なったタイプの学校選択に価値を置いていたオルタナイティブ教育プログラムが21世紀を境に停学や退学処分を受けた「問題児」を主な対象とした最後の更生機会となり、「望ましくない」生徒の「溜まり場」として見なされる傾向にある。また、オルタナティブ教育の最近の動向をハンドブックとしてまとめたコンレイは、「オルタナティブ・スクール」はもともと問題行動や、または不登校問題をもつ生徒に手を差し伸べることを目的につくられた」と1990年代以降の情況をふりかえり、解説している。  近年、オルタナイティブな教育形態が台頭するアジア諸国においても、オルタナティブ・スクールはある種のセーフティーネット、つまりメインストリームの教育からドロップアウトした生徒の教育であると政府や行政から認識される場合がすくなくない。日本でも、フリースクールなどの民間施設は不登校の子どもたちの「受け皿」として認識される場合が少なくなく、メインストリームの補完としてオルタナイティブ教育をとらえる見方が依然強い。この見方はとくに行政サイドに強く、「学校復帰」を前提としたフリースクールなどの支援プログラムであるスクーリング・サポート・プログラムがその表れと言える。

○積極的な捉え方○     オルタナティブ教育を積極的に評価し、そこで受けた子どものほうが成績もよく、罪を犯す生徒数も少ないという見方もある。また、一般の公教育とは異なるオルタナティブ教育ならではの「学力」が培われているという指摘もある。一例ではあるが、オーストラリアのシュタイナー学校では、価値あるもの、楽しいものを努力ではなく、偶然に発見する能力、すなわちセレンディピティがはぐくまれているという。 さらに、オルタナティブ・スクールには、むしろ公教育では培われにくい新たな「公共性」を読み取ることができるという指摘もある。たとえば、イギリスで導入されたシチズンシップ教育との関連で、サマーヒルなどの生徒自治のある学校のほうが一般の公立校よりも市民性が育成されていることを示したデリー・ハナムによる調査報告は、オルタナティブ教育の優れた特性を示す証左の一つと言える。  1990年以降の日本においても、全国のフリースクールなどのオルタナティブ・スクールな実践に新たな「公共性」の萌芽を見いだすことができるとする指摘がみられるようになった。全国各地で独自の活動を展開する日本のフリースクールやフリースペースでは、地域に開かれた活動の中で、子どもも大人も元気になっている姿が統計的にも明らかにされている。  オルタナティブ教育が、公教育にポジティブな影響を与えているという成果報告もある。ミネソタ州の学校改革センターの報告書「実際に何が起きたかーミネソタ州教育プログラムの経験」がその一例である。ミネソタ州では、1991年に4000人であったオルタナティブの生徒数が2002年には10万人に膨れ上がった。これらの生徒は学校生活の満足度が高く、学業成績などの点においても伝統的学校よりも優れた成績をあげ、しかも公教育システム全体にも望ましい影響を与えたという調査結果が同大学センターから出されている。

*参考文献*

・「オルタナティブ教育」永田佳之著 新評論 2005


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