ガンジス川
出典: Jinkawiki
インドのガンジス川(ガンガー)は「聖なる川」なのだが、「聖」だからと言って美しいわけではない。むしろ、その逆に非常に汚染された汚れた川である。それは、インド中から多くの人たちがやってきて、この聖なる川で沐浴し、聖なる川に死体を流し、ゴミを捨て、サリーを洗い、灯籠を流し、排泄するからである。 まさに、ゴミだらけの川だ。どれくらい汚いのかというと、2007年には世界で最も汚染された川ワースト5に選ばれるくらいだと言えば理解できるかもしれない。 しかし、人々はそれを物ともせずやってきて、この川に浸り、感激に打ち震える。 この川は神話では天上を流れていた川だった。それをブラフマー神が地上を流れるようにしたという言い伝えがあって、人々は無邪気にそういった神話を好み、神話と一体化したいと願う。そして、ここで火葬して骨を流すことは、まさに自らが神話になることであり、そういった決断をする人々は敬意を表されるのである。
遺体が流れていてもニュースにすらならない
ガンジス川では遺体を燃やすにも費用がかかるのだが、中には費用がない貧困者もいる。 そういった人たちはどうするのかというと、そのまま遺体を燃やさないで川に流してしまうのだという。だから、ガンジス川ではしばしば腐乱した遺体が流れていたり、鳥がついばんでいたり、どこかの岸に辿り着いて野犬が死体を貪り食っていたりするのである。
インドやバングラデシュでは、ガンジス川でなくても、川に遺体を流す人があちこちにいて、遺体が流れていてもニュースにすらならない。水葬(川葬)はインドの文化であり、だからこそガンガーに死体が流れている。
しかし最近では、聖なる川を守るための司法判決が相次いでいる。
ガンジス川、汚染を阻止する司法判決
2011年10月、インド北部のウッタル・プラデーシュ州にあるイラーハーバード高等裁判所は、工業都市カーンプルで有害物質クロムを毎年大量にガンジス川へ垂れ流す100カ所以上の皮なめし工場に閉鎖を命じた。
最近、同様の言い渡しが次々と下されている。ガンジス川氾濫原での大規模建設プロジェクトの中止命令や、川岸沿いの都市に新しいゴミ処理場の建設を命じる判決などで、今回の決定もその流れの一つだ。
イラーハーバードは3つの聖なる川の合流地点だ。ガンジス川はヒマラヤ山脈の澄んだ支流から生じ、細い流れがインドとチベット自治区の国境付近で激流に変わる。同じくヒマラヤ山脈が起点のヤムナー川は、ガンジスの西に平行して流れ、北部のデリーやタージ・マハルを通過して曲がり、ガンジスに合流する。古代の神話に描かれるサラスヴァティー川は、地下を流れる想像の産物だ。
乾期のガンジス川は市街地をゆっくりと流れ、下水や産業廃棄物で黒く濁る。モンスーンの時期も汚染は深刻である。首都ニューデリーから毎日19億リットル排出される未処理下水を抱えるのがヤムナー川だ。
これらの汚染水がヒンズー教の聖地で合流する。イラーハーバード(ペルシャ語で「神の住む場所」)では12年に一度、世界最大の祭典とも言われる「クンブメーラ(Kumbh Mela)」が開かれる。3つの川の合流地点で罪を洗い流すために数千万人の巡礼者が集まるという。
合流場所の「トリベニ・サンガム(Triveni Sangam)」を最近訪れたところ、数百人の信者が炎暑の輝く太陽の下で沐浴し、家に持ち帰るためプラスチック容器に水を汲んでいた。
聖なる川の扱いに二重性
聖なる川に対するインドの姿勢には奇妙な二重性がある。ガンジス川は何千年も昔から宗教的慣習が行われ、紛れもない聖なる川だが、同時に“汚水処理タンク”としても扱われている。
バラナシ・ヒンズー大学環境科学技術センター教授B・D・トリパティ(Tripathi)氏は、「過去の改善策は、計画・実施・管理がちぐはぐで失敗した」と指摘する。100万平方キロのガンジス川流域全体を対象に新たな浄化計画が持ち上がっているが、世界銀行によると期間は数十年、予算は数百億ドル(数兆円)に上る。
その一方で、重要な変化が現実に起きている。例えば、イラーハーバード高等裁判所は次のような判決を出した。
- 氾濫原で計画されていた8車線、全長1000キロの高速道路と大規模住宅プロジェクトの中止。
- カーンプル、イラーハーバード、バラナシで12カ所以上のゴミ処理場の建設命令。
- ガンジス川上流の灌漑プロジェクトや都市への過度の分水の禁止。
- カーンプルの皮なめし工場の閉鎖命令(2011年10月)。
命令が適切に実施されれば、長年の習慣を変えることになり、開発業者や工場経営者には数百万ドルの費用がのしかかる。公共事業や汚染水排出企業から甘い汁を吸っていた官僚や政治家たちの抵抗にも遭うだろう。
参考資料 http://www.bllackz.net/blackasia/content/20130407T0256300900.html
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20111130001
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