フィンランドの教育制度
出典: Jinkawiki
世界一の学力とフィンランド式教育改革
フィンランドは、今日でこそ教育水準の高い国として知られているが、これは近年の教育改革の成功によるものである。フィンランドの教育改革の数値は、1970年代には世界平均に遠く及ばなかった。それが、70年代以降は一貫して改善傾向にあり、1990年代の終わりごろに世界平均に追いつき、2000年以降にはそれを大きく超えながら漸次向上した。この飛躍的な成果が、他のOECD諸国と比べて相対的に短い授業時数と平均的な予算で達成されたのである。OECDの調査によれば、7歳から14歳の総標準授業時数はOECD加盟国の中で最短であり、また、公財政に占める教育支出の割合は加盟国のおおむね平均であった。この成功は「フィンランド式教育改革」と呼ばれる。それは、他のOECD加盟国の多くがとってきた、競争、選択の自由、外部審査、標準テスト、学校のガバナンス(チャータースクールなど)に重点を置いておらず、専門家としての教員の育成、学校や教員への信頼の形成、個に応じた指導のあり方、創造性や体験などを重視したものであるところに特徴がある。
学校制度の概要
幼児教育は、自治体保育サービス、民間保育サービスなどで行われる。就学前教育は、6歳児を対象に週日4時間、おもに自治体保育所において無料で提供される。義務教育は、おおむね7歳から始まるが、発達に応じて1年早めたり遅らせたりといった措置が取られることもある。 初等教育と前期中等教育は、基礎学校で行われる。1998年の基礎学校法改正(1999年施行)により、初等教育(第1~6学年)と前期中等教育(第7~9学年)の区分が外され、9年一貫制となった。新設校は、小中併設の9年一貫校として設立されているが、小中校独立型、中高併設型、小中校併設型などもまだ残っている。 後期中等教育は、普通教育を行う上級中等校(ルキオ)と職業教育を行う職業学校(アンマッティコウル)がある。職業教育では、天然資源、科学技術と運輸、ビジネスと旅行、観光・ケータリング・家政学、保健・社会サービス、文化、余暇・体育教育の7つのセクターの教育が提供されており、52種の職業資格が取得できるようになっている。高等教育に進学する場合は、大学入学資格試験を受験する。 高等教育は、大学と専門大学(AMK)である。大学はすべて国立で、総合大学10校、工科大学3校、経済大学3校、芸術系大学4校となっている。AMKは、1990年代に多様な中等教育機関を再編統合してできた高等教育機関で、その設立を契機に高等教育進学率が飛躍的に伸びることになった。AMKは職業を志向するもので、地方自治体や法人によって運営されている。
参考文献
松尾知明(2015)『21世紀型スキルとは何か―コンピテンシーに基づく教育改革の国際比較』明石書店 福田誠治(2011)『こうすれば日本も学力世界一 フィンランドから本物の教育を考える』朝日新聞出版