フィンランドの教育11
出典: Jinkawiki
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世界一の秘密
フィンランドでは生涯学習の原則と平等の原則、平等な教育機会を促進するという目標で30年上にわたる教育改革が動いている。教育目標が福祉的なものとして捉えられており、長期にわたって安定している。学校への責任委譲については、1980年代と1990年代に学力形成の分野で国家主導から地方自治体が管理する学校行政へと転換している。実質的には各学校が実践活動において自己決定を下すことができる。地方自治体は基礎教育に関しては地方の教育目標とシラバスを決定し、中等教育機関においてはこの役割が大きくなっている。また、学校制度の監視においては調査と評価は政策や国家カリキュラムが定めるガイドラインと諸決定が正しかったどうかを確かめることを目的とする。テストの結果は成績の悪い学校を見つけて支援するためであり、「学校改善を支援する道具」とみなされている。フィンランドでは子どもたちの発達の基準が国家によって画一的に定められ、それを強制することなく、発達の土台を誰もが公平に確保して、その先に多様な学びを保証しようとする。
学校教育
フィンランドの学校では競争やテストが無くても、子供たちがよく学んでいる。OECDの調査によると授業時間は世界でも最低レベルであり、校外・家庭での学習時間も同様である。学校の様子も一斉授業はほとんど行われず、子ども一人一人が自由に過ごしている。学ぼうが学ぶまいが個人の自由である。ここに見られるのは強制されて学ぶ都いう子どもたちの姿ではない。フィンランドでは、受験に必要な知識や暗記ということは通用しない。必要なのは、「社会構成主義的な学習概念」である。構成主義を教育に適用すると、学習とは知識の需要でなく、知識を探求する主体的な活動のことである。子どもたちは学び続けるように、教科書の知識は一つではないことを理解している。フィンランドでは、教科書が唯一正しい知識の集成ではなく、良質な資料であるという認識なのである。教科書を使って学ぶことはあっても、教科書を覚えようとする必要はない。それが「社会構成主義」なのである。学校では、教え合い、学び合いの中でより充実した知識を作りあげていく。クラスやグループで学ぶことでよく分かり、不十分な知識をより充実させ高めていく。またフィンランドの教師は、子どもたちに積極的に働きかけをするが、最後の判断は子どもたちに任せている。教師は授業を作り出してはいるが、管理者にはならず、子どもは学習内容を取捨選択し決定できる主体者となっている。社会の中で自分の将来を考えて、仲間と協同し、目標を持って学んでいることが、子どもたちの積極的に学ぼうとする態度を養っている。
教育背景
教師たちは同一の学校にほぼ定年まで勤める。そのため子どもたちの能力がいかにして身につくのかが年数とともにわかるようになる。よって子どもたちの学力形成や人格形成を長期的にじっくり取り組む姿勢ができる。「福祉としての教育」という考えに基づいて、高校まで給食が無料で提供される。食事の指導の立場でなく福祉の視点である。また、地域には福祉の専門家がいて、自治体の支援体制が組まれており、学校はそこと協力して問題に当たることになる。多くの場合、8歳までの子どもの昼間のケアは地方自治体の義務と捉えられている。 フィンランドでは、子どもの放課後の過ごし方が大きな問題となっているほか、社会生活に適応できない子どもが多いことも問題として挙げられている。そこで学校を生活の場とすることがその解決策として考えられており、学校を利用したクラブ活動などが展開されている。フィンランドでは、一人一人のニーズに対応した教育が展開されるため、障碍者に対しても平等にその制度が適用されている。
参考文献
福田誠治著「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」2006年発行 朝日新聞社