プロジェクト・メソッド
出典: Jinkawiki
キルパトリック(Kilpatrick, W. H.1871-1965)
20世紀前半アメリカのキルパトリックがデューイの経験主義教育理論を具体化した方法。
1920年代のアメリカにおける進歩主義の代表的な方法論であり、日本にも影響を与えた。
子どもが自ら、学習の目標を立て、学習遂行のための具体的な計画を立て、実際に遂行し、結果を反省的に考察するというプロセスで展開される。
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定義
20世紀初頭のアメリカで、キルパトリックらによって開発された経験学習の方法原理。実際上の仕事(作業)を中心として、生徒たちが自ら計画構案し問題を解決する実践的な活動を重視する。(広辞苑より)
「プロジェクト・メソッド」
プロジェクト・メソッドは問題解決学習の典型的な様式の1つで、「構案法」「構案教授」と呼ばれることもあるが、「プロジェクト法」ないし「プロジェクト・メソッド」と呼ばれることが多い。「生徒が計画し現実の生活において達成される目的をもった活動」で、子どもたちに目的設定、計画、遂行、評価の活動を行わせ、生産や生活の向上を目指す教育方法である。
1918 年,キルパトリックは「プロジェクト・メソッド」という論文を発表し,そこでプロジェクトを「社会的環境の中で行われる全精神を打ち込んだ目的をもった活動」と定義した。
キルパトリックが強調したのは、教育的な意味でのプロジェクトは学習者自身の目的意識・課題意識を出発点とし、それに支えられた活動であるという点であった。それが学習活動に内発性を与え、学習過程での学習主体と課題や対象との相互交渉を豊かなものにし、学習の成就を確かなものに、また興味の発展や態度形成にまで及ぶ統合されたものにすると捉えた。
キルパトリックはプロジェクトの遂行過程を
①学習活動を始め(目的を設定し、また選択し)
②その活動を遂行する方法を計画し
③その計画を実施し ④活動中の進歩と最後の結果を評価する、としている。
「プロジェクト」
「プロジェクト」という言葉は, コロンビア大学教授のリチャーズ(Richards, I. A.) によって初めて教育の世界で用いられた。彼は手工教育において 広く生徒に各自の計画を立てさせ,その手順も自由に選択させることによって,生徒をよりよく問題に取り組ませるように仕組んだのである。そして,彼は,この子どもの自己表現としての手仕事(hand work)を「プロジェクト」と呼んだ。
その後,スティムソン(Stimson, R. W.)が,1908 年マサチューセッツ州の職業学校における農業科のカリキュラムの術語として,「ホームプロジェクト」という言葉を用いた。彼は,農業科の授業と関連した「家庭プロジェクト」(Home project)という実践を始めた。この「プロジェクト」とは,「生徒の興味を刺激し,その問題の実際的な解決を通して,計画的な能力を養うための実際的,具体的で手仕事的な大きな問題」と考えられていた。またそれは,「様々な自然の場で行われ,そして具体的な材料を活用し,特に構成的方法で材料を活用する問題解決的な活動」でもあった。この「ホーム・プロジェクト」は1910年代を通して全米に広がったといわれる。
このように、プロジェクトは職業学校や職業教育の実践場面における手工・技術教育の実習方法として生まれたが、キルパトリックによって教育一般の方法として捉えなおされ、単元学習の1つの方法理論として学校教育一般に普及した。
実験
1910 年代後半から20 年代前半にかけて行われた,都市でのコロンビア大学付属実験学校の実験と農村でのコリングズ(Collings, E. 1887-1970)の実験 は,キルパトリックが承認した実践の代表例。
まず,ニューヨーク市にあるコロンビア大学付属実験学校で,ホレース・マン・スクールの教師たちとキルパトリックを含むティーチャーズ・カレッジ大学の研究者たちによって,1916年~19 年に実験が行われた。ホレース・マン・スクールにおけるこの実験がキルパトリックの「プロジェクト・メソッド」の発案と定式化の基盤だということである。
実験によると,「プロジェクト・メソッド」では,「目的的活動」を通して,「付随学習」が可能となり,「自立心」(self-reliance),「協働」(Cooperation),「私心のなさ」( unselfishness), 「他者への配慮」(consideration of others)などの好ましい「社会的態度」(social attitudes)が子どもたちに形成されるとされていた。だが,ホレース・マン・スクールの実験についてはその評価が分かれている。
他方で,農村においても,1917 年~21 年の間にミズーリ州マクドナルド郡のベスページでコリングズが実験を行った。その実験の目的は,農村小学校においても,実際生活での子どもの目的からカリキュラムを構成することができるかどうかを検証することであった。すなわち,実験がどの程度まで,どのような状況で,そしてどのぐらいの効果があるのかを明らかにすることである。その実験は,農村公立学校の典型として評価されている。佐藤によれば,この実験によって,キルパトリックの実践基盤が,農村的性格の強い中国,日本にもあることが明らかにされたのである。また,キルパトリックは,その実験が,彼の理論の有効性を証明したと高く評価した。
日本における「プロジェクト・メソッド」
プロジェクト・メソッドは、大正期に日本に導入され、当時の新教育運動に影響を与えた。問題解決学習とともに日本の戦後教育に反映され、「生活教育論」などに取り入れられたほか、職業教育の分野においても、新制高校の発足にあたって農業科に「ホーム・プロジェクト」が取り入れられた。また、プロジェクト・メソッドは、夏休みの自由研究や家庭科のホームプロジェクト、総合的な学習にも生かされている。
参考文献
http://www.lit.osaka-cu.ac.jp/UCRC/2006/ja/issue/pdf/pdf_zasshi01/04chin.pdf
『教育課程シリーズ 教育の方法と技術』 編著:平沢茂 出版:図書文化
広辞苑第5版 出版:岩波書店