ホームドクター制度2
出典: Jinkawiki
ヨーロッパでは多くの国でホームドクター制度をとっている。オランダもその一つの国である。ホームドクター制度とは、いわゆる、かかりつけの医師の制度のことである。医者は、ホームドクターと専門医とに大別できる。大学生の段階から両者が明確に分かれ、ホームドクターはあらゆる病気の基本的なことと患者とのコミュニケーションなど、専門医はある特定の分野を集中して学ぶという別々の教育を受けるのである。このホームドクター制度が保険の支払いや専門医との関係においても完全に国の医療体制に組み込まれているところが、日本のかかりつけの医者とは異なる点である。
ホームドクターは地域に登録され、そのなかから自由に選んで登録ができる。オランダは登録が自由で複数登録や途中で変えることも自由である。皆保険のなかでオランダに住むすべての人々がホームドクター制度に属している。救急以外は入院するのも、専門医にかかるのも、医薬品を購入するのもすべて各自のホームドクターを通すというかたちをとる。ホームドクターは患者の病歴や治療薬暦を熟知し、さらに医療だけでなく、患者の精神的な事情なども踏まえた上で相談に乗り、治療にあたることとなる。医者としてはインフォームドコンセントが行いやすい。医者にかかりたいときは、必ず登録したホームドクターの診察を受けてホームドクターがより専門的な治療や検査が必要であると判断した場合は、紹介状を書いてもらい患者は専門医のところへ行くのである。どの専門医かは患者が特に指定しない限り、ホームドクターの判断で決まる。
オランダではホームドクター制度をもつことを義務付けられているが、その選択は患者に任されていて、長年の信頼関係で結ばれている。患者の要請が治療ではなく、尊厳のある形で死ぬことであるならばその相談に乗り、どのような可能性があるのかを説明するのもホームドクターの責任である。こうしたことが安楽死のような行為を容認している要因の一つである。
参考文献:宮野彬著「オランダの安楽死政策―カナダとの比較―」成分堂 p243~247 1997年出版