中高一貫教育

出典: Jinkawiki

目次

導入の趣旨

従来の中学校・高等学校の制度に加えて,生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会をも選択できるようにすることにより,中等教育の一層の多様化を推進し,生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとして、中央教育審議会第二次答申(平成9年6月)の提言を受けて、「学校教育法等の一部を改正する法律」が平成10年6月に成立し、平成11年4月より、中高一貫教育を選択的に導入することが可能となった。


中高一貫教育の実施形態

中高一貫教育については、生徒や保護者のニーズ等に応じて、設置者が適切に対応できるよう、次の3つの実施形態がある。

・中等教育学校:一つの学校において一体的に中高一貫教育を行うもの

・併設型の中学校・高等学校:高等学校入学者選抜を行わずに、同一の設置者による中学校と高等学校を接続するもの

・連携型の中学校・高等学校:既存の市町村立中学校と都道府県立高等学校が,教育課程の編成や教員・生徒間交流等の面で連携を深める形で中高一貫教育を実施するもの


制度の概要

・中等教育学校

ア)学校教育法を改正し、中高一貫教育の実施を目的とする新しい学校種として、中等教育学校を設け、その目的、目標、修業年限、前期課程と後期課程の区分等について規定している。

イ)中等教育学校の教育課程の基準は、基本的には、前期課程は中学校の学習指導要領が、後期課程は高等学校の学習指導要領がそれぞれ準用されるが、中高一貫教育として特色ある教育課程を編成することができるよう、中学校の段階で選択教科をより幅広く導入することができること、前期課程と後期課程の指導内容の一部を入れ替えて指導することができることなどを内容とする教育課程の基準の特例を設けている。

ウ)中等教育学校への入学については、設置者の定めるところにより校長がこれを許可する。この場合、公立の中等教育学校においては、受験競争の低年齢化を招くことがないよう学力検査を行わないこととしている。


・併設型中学校・併設型高等学校

ア)学校教育法を改正し、中等教育学校に準じて、同一の設置者が設置する中学校及び高等学校において中高一貫教育を行うことができることを規定している。

イ)併設型中学校及び併設型高等学校の教育課程の基準は、中学校の学習指導要領及び高等学校の学習指導要領がそれぞれ適用されるが、中等教育学校と同様の教育課程の基準の特例が設けられている。

ウ)併設型中学校への入学については、設置者の定めるところにより、校長がこれを許可する。この場合、公立の併設型中学校においては、中等教育学校と同様に、学力検査を行わない。また、併設型高等学校においては、当該高等学校に係る併設型中学校の生徒については入学者選抜を行わないこととされている。


・連携型中学校・連携型高等学校

ア)学校教育法施行規則を改正し、中学校及び高等学校においては、高等学校又は中学校における教育との一貫性に配慮した教育を施すため、当該学校の設置者が設置者間の協議に基づき定めるところにより、教育課程を編成することができるとともに、当該中学校及び高等学校は、両者が連携してそれぞれの教育課程を実施することを規定している。また、中高一貫教育として特色ある教育課程を編成することができるよう、中学校の段階で選択教科をより幅広く導入することができることなどを内容とする教育課程の基準の特例を設けている。

イ)連携型高等学校における入学者選抜は、設置者間の協議に基づき編成する教育課程に係る連携型中学校の生徒については、調査書及び学力検査の成績以外の資料により行うことができる。



今後の整備目標

平成11年1月に閣議決定された「生活空間倍増戦略プラン」及び平成13年1月に策定された文部科学省の「21世紀教育新生プラン」において、「当面、高等学校の通学範囲(全国で500程度)に少なくとも1校整備されること」との整備目標が示されている。この目標は、生徒や保護者にとって、実質的に中高一貫教育を選択することを可能とするため、当面必要な数を示したものであり、その早急な実現が求められている。


中高一貫教育のメリット

・受験競争のストレスから解放されることに伴う多くの利点を期待できる


・解放されたそのこと自体ではなくて、解放されたことに伴ってどのような教育を工夫し展開していくかという点が重要である


・全般的に見れば6年間を見通した教育課程の編成や学習の展開が可能になる


・高等学校入試の圧力がないことによって、ゆとりをもって、教科外の活動、部活動、ボランティア活動に取り組むことができる


・高学年生徒の指導にあたっては、低学年段階の学習(既習)状況をきめ細かに点検することができるし、低学年生徒の指導にあたっては、高学年生徒のつまずきの状況から反省や新たな工夫のための契機(きっかけ、実例)を直接に得ることができる


・6歳の年齢幅での異年齢交流を有効に活用することで、リーダーシップや仲間づくりを学ぶことができる


・受験や進学といった視点からは学力差という一本化された尺度が有効であり、その尺度による学校間格差は深刻である。また、一方高等学校の内部にあっては生徒たちの考え方や進路は多様になっている。その生徒の多様化に対応して中学、高等学校の教育を多様化していく必要があるので、中高一貫教育は学校間格差への対応というより生徒の多様化への対応として有効な意味を持つと思われる


中高一貫教育のデメリット

・中学校段階及び高等学校段階における地域間の多様性や格差、普通高校と職業高校の間における多様な格差が存在していること、しかもそれらが長年指摘され是正の努力が続けられながらも十分に克服されていないことが中高一貫教育によって達成しようとする目標を阻害することになる可能性がある


・6年間を見通したゆとりのある、個性的な教育という点については私立学校において長年経験されてきているが、入学者の厳しい選抜、大学受験への有効な準備、個性的な特徴ある校風といったことがその支えになっている。(緩やかな入学者の決定を行うこと、受験校とはしないことを前提とした)公立学校での中高一貫教育においては、私立と異なるような特色や魅力を生み出せるのか(公立中学校・高等学校における一貫教育において何をセールス・ポイントとして生徒や保護者を引きつけられるのか)


・中高一貫教育の魅力の一つは高等学校進学の際のハードルを低くすることであるが、このことは当該の高等学校へ多様な学力や興味を持った生徒が進学してくることを導くことになる。このような状況の下では、

(a) 6年間の学校生活における「中だるみ」を生むことにならないか。

(b) 6年間の間に生徒間の学力を始めとした多様な「格差」が大きくなってい く。

(c) 特色ある学校を作るとしても、多様なカリキュラムに対応したり、進学や 就職における生徒たちの多様な要望を支援したりといった新たな課題が浮か び上がってくる。

(d) 教員数や施設・設備の充実に十分な配慮が必要となる。

また、このような困難に対処するためには、例えば6年間を「基礎・充実・発展」といった新たな段階区分を工夫するとか、習熟度別の学級編成とか、6年間にわたってのきめ細かな生徒観察・生徒理解の体制を作るとかについては、学校や教師が既設校の例などを参考にしながら、新たな研究開発を進めることが必須となる


・小学校を終えた時点で中高一貫教育の学校を選択することになるが、将来の進路を確定することが難しい時期にあると考えられることから、生徒自身はもとより保護者も「特色ある一貫教育」を選択することはきわめて困難である。そのため、入学後に大きくなる生徒の個性、興味及び進路の広がりに対応するために幅広い教育を用意しておかなければならず、したがって「特色ある一貫教育」があいまいになるおそれがある


・中高一貫教育では中学校と高等学校の連携が強く求められるが、中学校は義務教育であるがゆえに高等学校との連携や一体化が困難である事項をどのように区分し整理していくかという課題がある



参考文献

・公立中高一貫教育における利点および課題   http://www.edu.pref.ibaraki.jp/board/gyousei/tyuukou/riten.htm

・中高一貫教育:文部科学省  http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ikkan/main5_a2.htm


(投稿者:TR)


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