分国法

出典: Jinkawiki

内容

戦国大名が領域(分国)支配のために制定発布した法令。戦国家法(かほう)ともいう。戦国大名が随時必要に応じて発給した個別法に対し、家臣団および分国に対する法全体の基礎とする目的で、恒久的効力を付与し制定発布した集成法である。その性格は、御成敗式目(ごせいばいしきもく)以来の武家法の伝統を継承し、さらに一族や子孫を規制対象とした家訓や相互規制を目的とした一揆(いっき)契状等の在地慣習法を吸収して、分国内における独自の公権の確立を目ざしたものであった。さらに、分国法は以後の江戸幕府法や諸藩法などの近世武家法に大きな影響を及ぼしている。分国法のなかでは、大内家壁書(かべがき)や相良(さがら)氏法度(はっと)などがもっとも早い例であり、そのほか、今川(いまがわ)氏の今川仮名目録、伊達(だて)氏の塵芥集(じんかいしゅう)、武田氏の甲州法度之次第(しだい)(信玄(しんげん)家法)、結城(ゆうき)家法度、六角(ろっかく)氏式目、三好(みよし)氏の新加制式(しんかせいしき)、長宗我部元親(ちょうそがべもとちか)百箇条などが代表的なものである。また、集成法としての分国法をもたない戦国大名においても、後北条(ごほうじょう)氏の場合のように、「国法(こくほう)」とよばれる領国内における基本法規の存在したことが知られている。入試によく出題されるのは、朝倉影景条々、甲州法度之次第、今川仮名目録、塵芥集などである。

現在の分国法・条例

現在の日本の、各地方公共団体が制定する条例と分国法は似ている。分国法は、戦国大名独自の法律でその戦国大名の領域内でのみ通用する。条例は、各地方公共団体でのみ通用するので、内容が似ている。もちろん厳密には違いがあるが、条例は過去の法律を模倣したものであると言える。以下条例の説明である。 地方公共団体(都道府県・市町村など)がその権限に属する事務に関し、法令の範囲内で議会の議決を経て制定する自治立法をさす。ここでいう事務とは自治事務のことで、公共(固有)事務、(団体)委任事務、行政事務をすべて含む。地方公共団体の長がその事務について制定する規則とは異なる。明治憲法下でも、地方公共団体は条例を制定することができたが、中央集権制度の下にあって条例で規定すべき事項も少なく、刑罰を定めることも許されず、その重要性は小さかった。日本国憲法では、その第92条以下で地方自治、自治立法権が保障されたことに伴い、条例についても、その性質、規定事項、実効性の保障手段のすべての点で強化され、著しく重要性を増した。すなわち、条例は法令(法律だけでなく、政令・省令も含む)に違反することはできないが、地方公共団体の権限に属するすべての事務について規定できる(地方自治法14条以下)。いわゆる機関委任事務は地方公共団体の事務ではないので、条例の対象とはならない。そこで、地方公共団体の事務に関して規定されているか、国の法令に違反していないかが、しばしば重要な問題となる。たとえば、条例では取引関係に介入できないので、品質保証条例では保証の内容を義務づけるのでなく、保証された内容を表示するにとどめるなど、くふうを凝らしている。国の法律によっては条例制定を地方公共団体に委任したり(屋外広告物条例、日影規制条例など)、条例で制定できる範囲を示したり(大気汚染防止法、水質汚濁防止法など)するものがある。また、条例の実効性を確保するため、刑罰規定(2年以下の懲役・禁固、10万円以下の罰金、拘留・科料または没収)を置くこともできる。条例の例としては、たとえば、工場誘致条例、育英資金貸付条例、公害防止条例、公安条例、青少年保護条例、ぐれん隊防止条例、迷惑防止条例、琵琶(びわ)湖周辺での有リン合成洗剤の使用を禁止する滋賀県富栄養化防止条例、琵琶湖の景観を守る月景条例、犬害を防止する飼犬・野犬条例、消費者保護条例、情報公開条例、県土保全条例、環境影響評価条例、放置自転車対策条例など、日常生活に密接な関係のあるものも多い。住民は条例の制定改廃請求権(選挙権者の50分の1以上の連署による)を有する(地方自治法12条・74条以下)。最近では倫理条例や教育委員準公選条例の制定にあたり利用されているが、住民が条例の制定改廃を請求しても、現実には議会で否決されることが少なくない。


参考文献

1、日本史小辞典  山川出版社

2、詳説日本史   山川出版社

3、日本史の全貌  青春出版社


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