学習塾

出典: Jinkawiki

児童・生徒に学習を教えるための私設の学校であり、主に小中学校の放課後に有料で学力の補強や学習の補助などをする施設のこと。一般的には、塾と呼ぶことが多い。また特に受験対策を行う塾を進学塾ともいう。 ほとんどの塾は主要5教科(国語・数学・理科・社会・英語)の学習に特化している。学校が総合的な人間形成を目指しているのに対して、学習塾は主要科目に関しての弱点補強や高度な学習などに力を入れている。保護者の要望に答え、通常の学習よりも中学入試・高校入試での合格を主な目的とする大手進学塾も多くその合格実績を競っている。


塾に通うことによる弊害

過度の学習塾通いやその低年齢化などによって、児童生徒の心身の健全な発達や学校における学習指導等の面で種々の弊害が生じており、また一部の学習塾の中にはいたずらに進学に関する保護者の不安を助長したり、あるいは学校教育批判を行って保護者の公教育に対する不信感を醸成している例も見られる。 また、学習塾通いに関連して、子どもの生活体験の不足の問題が懸念される。子どもは遊びや様々な生活体験を通じて心身ともに調和のとれた発達をしていくものであり、とりわけ児童期に十分に遊び等の体験を経ていない場合には、健全な発達をとげ、良好な対人関係を結ぶ上で問題となることが多いと指摘されている。ところが、限られた時間が学習塾通いなどによって費やされ、仲間との遊び等の機会がますます不足するようになっている。最近の児童生徒の問題行動について、仲間との遊びの不足による精神的な発達の未熟さがその大きな原因・背景となっているとの指摘もある。 さらに、学習塾における指導は、暗記や詰め込み中心となり、主体的な学習の仕方や問題解決能力が身に付きにくいことも指摘されている。 学習塾の実態は多様であり、児童生徒の学習塾通いに伴う弊害についても個々の学習塾、児童生徒等によって異なるが、過度の学習塾通いについては次のような弊害、問題が見られる。

(1)体の問題

子どもの身体的発達や健康の維持のためには、適切な時期に適切な運動をさせることや一定の生活リズムにしたがつて食事、睡眠等をとらせることが必要である。しかし、学習塾通いによって適切な運動の機会が不足するとともに、夜間の通塾により帰宅時間が遅くなることによって睡眠時間が不足する、食事時間が不規則になるなど生活リズムが乱れる、長時間に及ぶ通塾や土曜日・日曜日の通塾によって心身の疲労が蓄積するなどの大きな問題がある。また、このような生活リズムの乱れや心身の疲労によって、学校の授業中に集中力を欠くなど学習上の問題を生じている例も見られる。もとより、このような健康体力面への影響は、児童生徒の発達状況により異なるものであるが、特に児童期の場合には影響が大きいものと考えられる。

(2)遊びや生活体験の不足

子どもは仲間との遊びや自然とのふれあいなど様々な生活体験を通じて自分で主体的に考える力や対人関係を結ぶ能力、困難に立ち向かう意欲などを身に付けることができる。しかし、現在の社会的な状況の中でただでさえ不足しがちな仲間との遊びの時間や自然とのふれあい、家事の分担など様々な生活体験の機会が学習塾通いによって奪われ、精神的な発達が未熟で自我の弱い子どもを増やす要因の一つとなっている。

(3)心の問題

受験のための特別な学習に過度に集中している場合には、ともすれば競争心を駆り立て、他人のことより自分だけという自己中心的な考えになりがちであり、友情の大切さや集団の意義を忘れさせるなど、性格形成や情緒の面での問題が指摘されている。 また、一部の学習塾で見られるような猛烈な詰め込み指導や競争をあおり立てるような指導によって、精神的な圧迫を受け、ストレスが蓄積するなどの問題がある。現在の児童生徒が生活体験に乏しく、ストレス解消の手段に欠ける傾向にあることを考えると、このような精神的ストレスは児童生徒の生活や行動に大きな影響をもたらすものと考えられる。 もとより、このような精神的発達への影響は、児童生徒の発達状況により異なつているが、とりわけ児童期は性格形成の面でも、人間関係の形成の面でも大切な時期であって、この時期における心の教育に問題がある場合には、思春期以降に精神的な問題を生じるなど深刻な影響を及ぼすおそれがある。

(4)自発的な学習意欲、論理的な思考力等の不足

受験指導を目的とする学習塾の中には、試験のための効率的な学習を重視し、回り道を許さないものがある。そのような場合には自らの興味・関心によって自発的に学習する意欲や能力の形成が妨げられるおそれがある。また、学習塾における学習は解答のみを求めて暗記や知識の詰め込み中心であったり、問題の類別と解法の選択により一定時間内により多くの問題を解答する能力が重視されることが少なくなく、問題探求的な学習態度や論理的な思考力などが育たないことが懸念される。

(5)学校における学習指導上の問題

学習塾通いは、学校における学習活動等にも様々な影響を及ぼしている。例えば、学習塾での学習進度が学校のそれより早い場合には、授業中に教師の説明をよく聞かない、授業とは関係のない内容の学習を行う、あるいは実験・実習等の体験的学習や基礎的な内容の学習に無関心となったりするなどの例が見られる。また、学校の授業の予習、復習等を十分にしないなどの問題も指摘されている。さらに、学習塾が独自に進路に関する指導を行う結果、学校における進路指導に好ましくない影響を与えている場合もある。

(6)学校教育活動への不参加

学習塾に通うため、放課後の学級活動や部活動、清掃等の作業などを軽視し、これらに参加しないなどの問題が生じている。また一部には学校の授業を欠席する例さえも見られる。 さらに、このような学校の教育活動への不参加を保護者が容認している例などは、児童生徒の学校に対する信頼、規範を遵守する意識の形成の上でも見逃せない問題である。

(7)生活、行動上の問題

学習塾通いによる夜間外出に伴い、喫煙、飲酒等の問題行動が行われたり、他校の生徒とのトラブルを生じるなど生活、行動上の問題を生じている例が見られる。 また、保護者が子どもの夜間外出等に慣れ、その生活や行動に対する注意がややもすると不十分なものとなりがちであるとの指摘もある。

(8)保護者の経済的負担

最近における保護者の教育費の増加の中で、学習塾のための負担は学年が進むにしたがつて大きくなつており、学習塾の中には極端に多額の経費を要するものも見られる。

(9)誇大広告、契約をめぐるトラブル

学習塾の中には、中・高等学校の合格者数を水増しして示すなど、いわゆる誇大広告を行うものがある。また契約解除の際の月謝の返還問題など契約をめぐるトラブルが生じているものもある。

学習塾通いに伴う種々の弊害を是正するためには、学校や教育委員会が真剣に取り組む必要があるが、同時に親が子どもの調和のとれた成長、発達のため努力を傾けることが大切である。子どもの心身ともに健全な発達が、家庭教育の力に負うところが大きいことはいうまでもない。しかし、近年、家庭をめぐる社会状況の変化等に伴って、家庭の教育力が低下しているといわれる。それが家庭の経済力の向上とも相まって、保護者が子どもの養育を容易に外部の専門家に委ねてしまうという傾向となって表れている。このことが学習塾通いの増加と無関係とは考えられない。 また、現在の学歴偏重の社会的風潮の中で、子どもの教育に対する関心は知的な教育に偏りがちとなり、子どもに対して学力に偏した過重な期待をかけるなどのことが見られる。そのような親の意識を反映して、子どもの意識においても学校におけるペーパーテストの点数に極めて重い価値を置く風潮が見られる。これも学習塾通いの大きな要因として指摘されている。 少年期や青年期の教育においては、自分で考える力や自ら学ぶ意欲を育て、生涯にわたって学習していくための基礎を培うことが大切である。特に、高齢化が進み、変化が一段と激しくなると予想される今後の社会において、自立的な社会人として生き、変化に対応していくためには、このような資質能力を育成することが一層重要となる。

参考HP:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19870131001/t19870131001.html

    http://chugaku.ukaru.info/2006/01/post_217.html


(投稿者 SHI)


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