徴用工問題2

出典: Jinkawiki

徴用工問題

目次

概要

 徴用工問題(または徴用工訴訟問題)とは、第二次世界大戦時中に大日本帝国、また日本企業より戦時における労働力不足を補うためにの徴用されたとされる朝鮮人の元労働者やその遺族らによる日本、日本企業に対する賠償訴訟をめぐる日韓関係における問題のひとつである。

徴用工とは

 第二次世界大戦中、日本統治時代の朝鮮において日本企業により「徴用」されたとする朝鮮人の労働者である。公式な記録はなく正確な数字については不明であるがおよそ70から80万人ほどがいたと調査によると明らかになっている。この徴用工についてが訴訟問題となる背景として徴用工の待遇の問題が挙げられる。しかしながらこれについての見解は立場や有識者ごとに異なり、朝鮮人労働者は奴隷のような待遇であり報酬もほとんど与えられておらず狭い住居での生活を余儀なくされたというような見解があるが、同時に朝鮮人労働者は比較的良い待遇を受けておりある程度自由で健康な生活をしていたという見解もある。国民や有識者の間で徴用工に対する歴史的な認識の違いがあり、このことも徴用工についての問題を複雑化させている原因のひとつである。

徴用工訴訟問題

 戦争終結後14年間の交渉の後1965年に日韓請求協定が締結され、日本は韓国に対して賠償を行った。韓国はこの賠償金を元に元徴用工の死亡者に対して30万ウォンの支払いを行った。この協定には日韓の賠償請求に関する問題は完全で最終的に解決したという旨の合意が含まれた。しかしながらその後も、民間レベルで賠償を求める声は見られたが、現在の徴用工訴訟問題の発端となるひとつは2005年当時の韓国大統領であった盧武鉉大統領およびその政権から、1965年に結ばれた日韓請求協定は一部の朝鮮人を賠償の対象外としており不十分であるという旨の主張がなされたことによる。しかしながら日本側は1965年の日韓請求協定において賠償問題については解決しているとの立場であった。その後は、2005年に国家として謝罪を求める動きが起こるも2009年にはソウル行政裁判所より韓国側の元徴用工による個人請求は無効であるとの表明がなされた。その後韓国政府はこの表明の通り請求は無効との立場をとってきたが2012年韓国大法院は日本企業は元徴用工に対して賠償責任があると認めた。国家的な問題とは別で日本企業に対する元徴用工やその遺族ら個人による訴訟も相次いで起こっており、また2017年には韓国大統領の文在寅大統領が個人の請求権については残っており韓国政府はその歴史認識の元に問題に挑むという旨の発言をするなど、問題は混迷を極めて終息する気配を見せない状況が続いている。

2019年の判決

 2019年10月30日、韓国の最高裁判所は元徴用工に対しての新日鉄住金の賠償責任を認める判決を下した。これについて日本政府および日本国内メディアの多くは1965年の日韓請求協定により問題は解決しているとの立場から判決を批判した。韓国政府はコメントを差し控えているが、韓国メディアの多くはこの判決を支持し日本の主張について批判をしている。

日韓関係と日韓の相違

 徴用工問題や慰安婦問題のような日韓における問題は、日本と朝鮮の歴史の相違、及び歴史認識の相違が大きな影響を及ぼしていると考えられる。歴史的に朝鮮は大陸と陸続きであることなどから多くの国からの侵略や朝貢的な外交を求められてきた、そのために外交問題を強く重視するが、日本は大陸から離れた島国であるために他国からの侵略の歴史はごくわずかでありそれ以上に自国内の自然災害などといった問題に目を向けてきた。こういった国家の性質の違いが問題を解決できずすれ違いのような状況が続く原因のひとつとなっていると考えられる。また双方の歴史認識の違いというのも大きな問題点のひとつである、1965年の日韓請求協定に関する認識もそのひとつと言えるが、徴用工や慰安婦といった問題について韓国側は強制連行され搾取された被害者でありその責任問題はまだ解決していないとの認識が強くあり、日本として賠償や謝罪により責任はすでに果たしているという立場や、また有識者による韓国側で主張されるほどの不当な搾取ではなかったというような主張から歴史認識の相違が見られる。このようなことが日韓関係の悪化や、この訴訟問題の泥沼化に繋がっているとも考えられる。

今後の課題

 日本政府は2019年、これらの問題に際し韓国に対して2国間協議を要求した。しかしながら韓国政府はこれを拒否、同年の5月20日に日韓請求協定に基づく第三国を加えた仲裁委員会の開催を要求したがこれについても韓国政府は拒否をした。またその後同年の6月19日に第三国に仲裁委員の選択をまかせる形での仲裁委員会の開催を要請したが、仲裁委員会選定の期日である同年7月18日においても韓国側はこの要求に応じずであった。韓国側としては韓国国内の判決から、個人による賠償請求は日韓請求協定に含まれないため日韓請求協定に基づいた2国間協議には応じる必要はないとの立場であり、日本側としては個人によるものも含めすべての賠償責任は日韓請求協定により終了しているとの立場で主張が平行線をたどっている状況である。認識の違いなどからこのような状況であるが、今後の問題解決の手段としてはお互いに単なる歴史認識やお互いの立場でなくエビデンスに基づく主張のもとの協議は求められるのではないだろうか。


【参考文献】

太田和敬 『2019年国際社会論授業資料「第一回日韓関係を考える」』 2019年

産経新聞(2010年3月15日)

西岡 力 『正論9月号』2015年 産経新聞社

山口 公一 『大東亜共栄圏の中の植民地朝鮮』 2003年 梨の木舎 p300-311

【参考サイト】

NHK解説委員室 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/277929.html

HN[S.K.]


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成