心的外傷後ストレス障害 PTSD

出典: Jinkawiki

心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)は、突然の衝撃的出来事を経験することによって生じる、特徴的な精神障害である。このPTSDが持つ他の精神障害にない特色は、明らかな原因の存在が規定されているという点で、PTSDの診断のためには災害、戦闘体験、犯罪被害など、強い恐怖感を伴う体験があるということが、必要条件となる。

どのような衝撃的出来事がPTSDの原因となりうるのかについては、多くの議論があり、同じような出来事に遭遇したとしてもPTSDを発症する人とそうでない人がいること、性格傾向や精神障害の家族歴など様々な要因が発症に影響することなどが、多くの研究によって示されており、「衝撃的出来事の経験=PTSD発症」という単純な図式は描けないことは明らかだからである。この背景もあってアメリカ精神医学会の診断マニュアル(DSM)でも改訂されるごとに、原因の規定は変わっている。現在用いられている第4版(DSM-IV)では、原因の具体的な記述はなされておらず、むしろ出来事に対する直後の自覚的反応が「強い恐怖、無力感または戦慄」をともなうものという定義が採用されている。


PTSDの主な症状と診断

PTSDの主要症状は再体験(想起)、回避、過覚醒の3つである。


再体験(想起) 

フラッシュバックと悪夢がある。フラッシュバックとは、幻覚・幻聴を含む衝撃的な事件の再現視のことである。原因となった外傷的な体験が、意図しないのに繰り返し思い描いてしまう場合もある。また、あたかも事件を再現しているような行動をする場合もある。悪夢には、事件を生々しく再現してしまうものと、悪夢ではあったが、内容を覚えていない場合とがある。

回避 

体験を思い出すような状況や場面を、意識的あるいは無意識的に避け続けるという症状、および感情や感覚などの反応性の麻痺という症状を指している。記憶そのものを消す場合もある。回避の程度が高いと、一般的な物事への興味が喪失したり、将来への希望の喪失などが生じ、「自分はすぐに死んでしまうのだ」という感覚を持つようになってしまう。

過覚醒

覚醒状態とは、神経の興奮状態のことで、亢進し続けているため眠れない。眠りが中断しやすい、ぴりぴりしていてすぐに怒り出す、集中できない、過度の警戒心、ささいな物音に飛び上がるように驚くなどがある。


DSM-IVでは、再体験(B項目)が5項目中1つ以上、回避(C項目)が7項目中3つ以上、過覚醒(D項目)が5項目中2つ以上、それぞれ揃っていることが診断のために必要である。さらに、それらの症状が1ヶ月以上持続(E項目)、自覚的な苦悩か社会機能の低下が明らかな場合(F項目)に、医学的にPTSDと診断される。


ASDについて

PTSDの診断基準では症状の持続が1ヶ月以上とされている。しかし衝撃的な出来事に遭遇すると直後から重症の反応が生じることがある。PTSDの3大症状だけでなく、解離性症状と呼ばれる健忘や現実感の喪失、感覚や感情の麻痺などが、直後の1ヶ月以内に強く現れている場合は「急性ストレス障害 Acute Stress Disorder;ASD」と診断されPTSDとは区別されている。


参考文献

心の謎を探る会 精神分析が面白いほどわかる本 河出書房新社 2005

日本トラウマスティック・ストレス学会http://www.jstss.org/wptsd/


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