文民統制
出典: Jinkawiki
文民統制(civilian control) 非軍人である文民が軍隊(自衛隊)の指揮・統制権を持つこと。我が国では、自衛隊の最高指揮権は内閣総理大臣がもち(自衛隊法第7条)または、文民である防衛大臣が隊務を統括し、政府や議会の民主的統制により自衛隊の独走を防ごうとしている。
文民統制の成立経緯
文民統制とは一般に議会に責任を負う文民によって軍事権をコントロールし、軍の暴走を抑止するという原則である。大日本帝国憲法下においては、群にお関する事項はすべて天皇に統帥権に属し、内閣の統制が全く及ばないところに置かれていた。それどころか、「軍部大臣現役武官制」によって、組閣さえ軍部の意思によって左右されており、シビリアンコントロールは一切行われていなかった。これに反して日本国憲法では66条【内閣の組織
、国会に対する連帯責任】2項で内閣総理大臣と国務大臣の要件として、「文民」であることが要求されている。ちなみに、「文民」という言葉はもともと日本語には存在せず、「civilian」の訳として作られた造語である。また66条2項は憲法制定過程で極東委員会の指令を受けた総司令部からの要請で加えられた事項であると言われている。この「文民」という語をどうとらえるかで説が分かれている。
第一説は、現在軍人でない者をさす説である。この説は制定過程において「武官の職歴を有しないもの」という政府案をあえて否定して上のような過程を経て新しく造られた言葉であるという点を重視する。これに対して、この解釈によると憲法制定の時点で旧日本軍はすべて解体されており、すべての国民は「文民」であるということになるから、本項の存在価値がないという批判の意見がある。そこで出てくるのが「文民」過去において軍隊の経歴をもたないもの、と捉える第二の立場である。この場合は旧憲法時代の帝国陸海軍の軍人を内閣の構成員から排除するというのが66条2項の趣旨である。と解釈するものである。事実、鳩山内閣及び石橋内閣の成立の際、元海軍大将の経歴をもつ野村吉三郎の入閣が問題になった。しかし、この第二説はしばしば、「文民」の範囲が広汎過ぎることに問題があると思われる。
≪参考文献≫
政治・経済用語集 山川出版 よくわかる憲法 編:工藤達郎 ミネルヴァ書房