核兵器
出典: Jinkawiki
高度に成熟した社会が両大戦から教訓を学び、単に戦争をしなくなったと分析する者もいれば、20世紀後半の「長い平和」は、超大国の拡張主義的な目標が限定的であったためだと考える者もいると言われている。さらに、(2つの同盟ではなく)2つの国家が優位を占める純然たる2極構造が安定性を内在しているとして、そこに理由を生み出す者もいるとされている。しかし、多くの学者にとって、核兵器と核抑止が持つ特殊な性質こそが解答の大部分を占めているのである。 核兵器の巨大な破壊力は、ほとんど理解を超えたものである。1メガトン級の核爆発は摂氏1億度もの高熱を生み出す—太陽の中心部分の4倍から5倍の温度である。1945年に広島に投下された原子爆弾は比較的小型で、TNT火薬の1万5000トンに相当する。現代のミサイルは、その100倍以上の破壊力のあるものを搭載することが出来る。実は、第二次世界大戦で使われた爆発物は3メガトンの爆弾1つに匹敵するが、それが巨大な1発の大陸間ミサイルの弾頭に搭載可能なのである。1980年代には、米ソは合わせて5万以上の核兵器を保有するようになっていた。 核兵器は、時に「恐怖の均衡」(balance of terror)と呼ばれる特殊な形態のバランス・オブ・パワーを生み出した。力の基準は、物理的なものよりも心理的なものであった。双方とも相手が優勢に立つことで防ぐ方針であったが、結果はそれまでのシステムとは違っていた。5大国間で同盟が推移した19世紀型のバランス・オブ・パワー・システムとは違い、冷戦期の均衡は、瞬時に互いを破壊することが可能な両大国の間で生まれた。 大量破壊兵器は、拡散を引き起こす深刻な危険と、破壊を生み出す大きな可能性をともなう。これらの兵器の存在は、紛争の力学を変化させる。核または非通常兵器を保有する弱体な国家は、強国を威嚇することが出来るようになる。もっとも強国がこれらの兵器を保有していれば、さらに効果的に敵国を威嚇することが可能でもある。同時に、危機が制御不能になれば、アメリカと北朝鮮間やインドとパキスタン間、あるいはイスラエルとイラン間などで緊張のレベルを高める。そして、テロリストが核兵器を用いるかもしれないという恐れは、抑止が十分な対応にはならないという震撼的事態を生んでいる。冷戦は終結したかもしれないが、核兵器、大量破壊兵器と共存する時代はまだ終わっていないのである。
NGS